さよならの代わりは

野村にれ

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反省4

 ジュージはブルーベルと挨拶をしたこともないために、ララスから話を聞くしかない。もしも演技だったとしても、関わるのが面倒だった。ララスに害がないと示すためにそう振舞っていただけかもしれない。

 もしそうだったとしたら、ジュージは申し訳ない気持ちになった。

「そんなことないわ!あの女はおかしかったの!」

 おかしいのはお前だと思いながらも、ジュージもそろそろ声を張り上げる力もなくなっていた。

「確かリュメリー王国に行かれていたんだろう?あちらでお具合がよくなったのかもしれないじゃないか」
「そんなはず……」
「そもそもお前は会話ができないと言っていたのに、どうやってブルーベル様に頼むつもりだったんだ?」
「それは……」

 ブルーベルがそう言ったというつもりだったとしても、誰が不正をしたような者の言葉を信じるのか。もう誰にも信じてもらないことが分かっていない。

 短慮、ジュージはララスをそう評していた。

「まあいい、お前が王太子妃になることは二度とない。ゼアンラーク侯爵家に戻ることもない」
「どうしてよ……」
「着いた、下りなさい」

 話をしている内に隔離施設に到着していた。王都の外れにあるために、何日もかかるほど遠くはないが、ララスは着ている物だけで、お金などの持ち物もなく、王宮までは歩いて行ける距離ではない。

 ララスは小高い場所にある、初めて見る城のような建物を見つめていた。古い建物だが、丁寧に手入れされている様子も伺える。

「何よここ……」

 王家の管轄ではないために、ララスが知らなくても無理はないが、知っていてもおかしくはないが、知らないようであった。

「療養する施設だ、ここで自分のしたことを反省しなさい。両親ももう面倒見切れない。私たちもゼアンラーク侯爵家の立て直しでお前に割く時間はない」
「酷い!いい思いもしたでしょう?」
「そうだったとしても、今それ以上に苦労している」

 確かにララスが王太子妃になったことで、ゼアンラーク侯爵家の価値は上がった。だが、それ以上に今、下がっている。

「王家からの罰はなかったが、こちらに入ることで許していただけたと考えなさい」
「そんな!反省文を書いたわ」
「その程度で許されるはずがないだろう?」
「でも」
「だったら、お前が王太子妃のままで、ブルーベル様が廃妃にされたとして、恨んだ彼女が不法侵入して暴力を振るって、反省文だけで済むと思うか?頭がいいのなら、考えれば分かるだろう?」

 さすがに置き換えることはできたララスは何も言えなかった。言い合いをしていると、常に微笑んでいるような表情の妙齢の男性が出て来て、挨拶を行った。

「ようこそ、おいでくださいました」
「ジュージ・ゼアンラークです。こちらが入所するララスです。どうかよろしくお願いいたします」
「はい、伺っております」

 ジュージは両親から届いたお金で、既に契約も支払いを済ませており、二人も責任を感じて、費用は持つと申し出ていた。

「ではララス様、参りましょう」
「ちょっと待って」
「しっかり反省してくれ」

 ジュージはそう言って振り返ることなく馬車に乗り込んだ。これがララスに会う最後だったとしても、後悔はなかった。

 振り返らなかったが、ララスはさらにやって来た腕っぷしの強い慣れた職員によって、無理やり連れて行かれていた。

 入所者も問題を起こしたり、くるってしまったり、薬物依存など様々だが、加えて一番の理由は団体行動ができない者が入ることに適した施設である。

 ララスには不満だろうが、それでも働かなくとも衣食住は保証されており、生かしてもらえる。

 隔離施設は見た目は古い城だが、元は人には言えない特殊なプレイを行う者たちの宿泊施設だったようで、中は名残が残った変わった作りになっているらしい……だが、入所者以外知ることはない。

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