10 / 203
不正
「バラマス・コアール。不正をしたな?」
「っ、いえ、あの」
「試験を見て分かっただろう?酷すぎて吐き気がする!」
「もっ、申し訳ございません。ウィンダム伯爵に、頼まれて、仕方なく」
「っな」
「陛下、一つよろしいでしょうか」
「ああ、アズラー夫人」
「そもそもバラマス夫人はノワンナ語が何となく分かる程度でございます。先程、採点をしておりましたが、分かってらっしゃいませんでした」
バラマス夫人はますます真っ青である。アズラー夫人は、バラマス夫人は貴族令嬢のマナー講師としては優秀であったのだろうが、王太子妃教育は質が違い過ぎる。脅されたのかもしれないが、いずれ分かるようなことに加担するなど、情けないとしか言いようがない。
「主導は誰だ?ウィンダム伯爵、そしてレベッカか、それとも夫人か、全員か」
「学園の成績は優秀だったのです、本当です。ここはどうか、王女殿下も御生まれになっておりますので、通訳を付けてはいただけませんか」
ウィンダム伯爵は試験結果は変わらないため、王女で縋ることにした。
レベッカは学園では学力は二十位以内に入っていた。確かに側妃の条件の目安にはなるが、自分は優秀だと思い込んでいたのだ。
「そうです!私は通訳が付くと思っておりました」
「何を勝手に思ってらっしゃるのかしら?バラマス夫人が説明していなかったとしても、教本をお渡ししたでしょう?読んでいないの?あり得ないわ」
ずっと扇子をギリギリと握りしめていた王妃が流石に声を上げた。側妃の教本には、三ヶ国語こと、他国との会話について書き記してある。レベッカはもう側妃になったのだからと、全てを読んではいなかった。
「語学が出来ないのに、よくも側妃試験を受けたものよ!恥ずかしくないの?」
「全ては学びはしました!本当です」
「そなたは学んだが、身に付かなかったから、考慮しろというのか?そんなに甘いものではないわ!」
王妃も三ヶ国語を操るのに苦労したのだ、それを不正で入り込むなど到底許すことは出来ない。
「君は翻訳が出来ないために、持ち帰って誰かにやらせようと思っていたのだろう?王太子夫妻がいらした時、キョロキョロしていたのは、通訳を探していたんだな」
「で、でも誰がやろうと同じではないですか!」
「じゃあ、君は要らないということになるけど」
「そ、それは」
持ち帰りたいと言い出した時に、そうだろうとは思っていたが、誰がやっても同じ。確かに翻訳の部分はそうだろうが、頭に入れるためにも、自身で翻訳をするとはどうして思えないのだろうか。
「お待ちください!王女殿下のためにもここはひとつどうか、穏便に収めては貰えませんか」
ウィンダム伯爵はなおも食い下がり、この親にしてこの娘ありということだ。
「いや、王女のためにもレベッカには外交はもうさせることはない」
「なぜですの!」
この場で陛下に向かって酷いという顔がよく出来るものだ。学園で成績が優秀だったのは虚偽ではないだろうが、側妃だけでも学問とは違う勉強も必要になる。
「王女が可哀想だと思わぬのか?母親は語学も出来ぬのに、側妃になったとこのままでは一生言われるのだぞ?」
「あっ…これから、勉強しますから」
「ウィンダム伯爵家とバラマス夫人に責任を取って貰おう。レベッカは側妃見習いとする。王女にとっては母親だ、これ以上粗相がなければ、住まうことは許可するが、外交費はなし、生活費はウィンダム伯爵で持ちなさい」
側妃が外交費を削られるということは、社交の費用が一切出ないことを示す。ゆえに最低限の生活する費用のみとなる。
「そして、レベッカの教育費用も王家から一切出すことはない。自分たちで責任を持って、三ヶ国語を学ばせなさい。その後に、我々とアズラー夫人が認めれば、側妃と認めよう」
「…そんな」
「当たり前ではないか、さらに恥をかかせるつもりなのか」
「それは…」
「陛下、私も支持いたします。そして、レベッカ妃は自業自得ですが、王女殿下の教育費はクリンピア公爵家で持たせてください。母の責任を取らせてください」
「あい、分かった」
既に王女を産んでいることからここが落としどころだろう。クリンピア公爵が頭を下げた以上、これ以上ウィンダム伯爵、コアール伯爵は何も言うことは出来ない。
「よくもサリーに優秀などと言えたものだな」
「妃殿下は話せるのですか」
「当たり前だろう!学園に入る前に三ヶ国語、全て習得している」
アズラー夫人はその通りですと言わんばかりに、深く頷いている。
「あっ、そんな…」
レベッカは勤勉ではない。試験前に詰め込むだけだった。翻訳は別の者にやらせて、自分がやったことにすることは可能だろうが、会話、そして理解しているかという点は誤魔化すことが出来ない。
ほぼ毎日、伯爵家の雇った教師が来て、勉強をするだけの生活となった。
「っ、いえ、あの」
「試験を見て分かっただろう?酷すぎて吐き気がする!」
「もっ、申し訳ございません。ウィンダム伯爵に、頼まれて、仕方なく」
「っな」
「陛下、一つよろしいでしょうか」
「ああ、アズラー夫人」
「そもそもバラマス夫人はノワンナ語が何となく分かる程度でございます。先程、採点をしておりましたが、分かってらっしゃいませんでした」
バラマス夫人はますます真っ青である。アズラー夫人は、バラマス夫人は貴族令嬢のマナー講師としては優秀であったのだろうが、王太子妃教育は質が違い過ぎる。脅されたのかもしれないが、いずれ分かるようなことに加担するなど、情けないとしか言いようがない。
「主導は誰だ?ウィンダム伯爵、そしてレベッカか、それとも夫人か、全員か」
「学園の成績は優秀だったのです、本当です。ここはどうか、王女殿下も御生まれになっておりますので、通訳を付けてはいただけませんか」
ウィンダム伯爵は試験結果は変わらないため、王女で縋ることにした。
レベッカは学園では学力は二十位以内に入っていた。確かに側妃の条件の目安にはなるが、自分は優秀だと思い込んでいたのだ。
「そうです!私は通訳が付くと思っておりました」
「何を勝手に思ってらっしゃるのかしら?バラマス夫人が説明していなかったとしても、教本をお渡ししたでしょう?読んでいないの?あり得ないわ」
ずっと扇子をギリギリと握りしめていた王妃が流石に声を上げた。側妃の教本には、三ヶ国語こと、他国との会話について書き記してある。レベッカはもう側妃になったのだからと、全てを読んではいなかった。
「語学が出来ないのに、よくも側妃試験を受けたものよ!恥ずかしくないの?」
「全ては学びはしました!本当です」
「そなたは学んだが、身に付かなかったから、考慮しろというのか?そんなに甘いものではないわ!」
王妃も三ヶ国語を操るのに苦労したのだ、それを不正で入り込むなど到底許すことは出来ない。
「君は翻訳が出来ないために、持ち帰って誰かにやらせようと思っていたのだろう?王太子夫妻がいらした時、キョロキョロしていたのは、通訳を探していたんだな」
「で、でも誰がやろうと同じではないですか!」
「じゃあ、君は要らないということになるけど」
「そ、それは」
持ち帰りたいと言い出した時に、そうだろうとは思っていたが、誰がやっても同じ。確かに翻訳の部分はそうだろうが、頭に入れるためにも、自身で翻訳をするとはどうして思えないのだろうか。
「お待ちください!王女殿下のためにもここはひとつどうか、穏便に収めては貰えませんか」
ウィンダム伯爵はなおも食い下がり、この親にしてこの娘ありということだ。
「いや、王女のためにもレベッカには外交はもうさせることはない」
「なぜですの!」
この場で陛下に向かって酷いという顔がよく出来るものだ。学園で成績が優秀だったのは虚偽ではないだろうが、側妃だけでも学問とは違う勉強も必要になる。
「王女が可哀想だと思わぬのか?母親は語学も出来ぬのに、側妃になったとこのままでは一生言われるのだぞ?」
「あっ…これから、勉強しますから」
「ウィンダム伯爵家とバラマス夫人に責任を取って貰おう。レベッカは側妃見習いとする。王女にとっては母親だ、これ以上粗相がなければ、住まうことは許可するが、外交費はなし、生活費はウィンダム伯爵で持ちなさい」
側妃が外交費を削られるということは、社交の費用が一切出ないことを示す。ゆえに最低限の生活する費用のみとなる。
「そして、レベッカの教育費用も王家から一切出すことはない。自分たちで責任を持って、三ヶ国語を学ばせなさい。その後に、我々とアズラー夫人が認めれば、側妃と認めよう」
「…そんな」
「当たり前ではないか、さらに恥をかかせるつもりなのか」
「それは…」
「陛下、私も支持いたします。そして、レベッカ妃は自業自得ですが、王女殿下の教育費はクリンピア公爵家で持たせてください。母の責任を取らせてください」
「あい、分かった」
既に王女を産んでいることからここが落としどころだろう。クリンピア公爵が頭を下げた以上、これ以上ウィンダム伯爵、コアール伯爵は何も言うことは出来ない。
「よくもサリーに優秀などと言えたものだな」
「妃殿下は話せるのですか」
「当たり前だろう!学園に入る前に三ヶ国語、全て習得している」
アズラー夫人はその通りですと言わんばかりに、深く頷いている。
「あっ、そんな…」
レベッカは勤勉ではない。試験前に詰め込むだけだった。翻訳は別の者にやらせて、自分がやったことにすることは可能だろうが、会話、そして理解しているかという点は誤魔化すことが出来ない。
ほぼ毎日、伯爵家の雇った教師が来て、勉強をするだけの生活となった。
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
妹に奪われた婚約者は、私を壊す災厄でした
あう
恋愛
伯爵家の長女セレナは、侯爵令息の婚約者として家を支え、妹のわがままにも耐え続けてきた。
しかし妹ミレイユは、“可哀想な妹”を演じて姉の婚約者を奪い、ついに婚約破棄へ持ち込んでしまう。
すべてを奪われた――そう思われたセレナだったが、伯爵家を離れたことで見えてきたのは、自分を縛っていた歪な家族と婚約の真実だった。
そして、奪ったはずの妹のほうもまた、望んだ未来とは違う現実へ追い詰められていく。
奪い返さない。縋らない。
静かに手放した令嬢が、自分の人生を取り戻していくざまぁ恋愛譚。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました
伊久留りさ
恋愛
北辺の国境を守る小さな領地、ヴァルドリア。その城館の一室で、若き領主の妻アリシアは、夫レオンハルトの言葉に静かに耳を傾けていた。
「アリシア、君にはもう少し、この城から離れてもらいたい」
レオンハルトの声は、いつものように低く、落ち着いていた。しかし、その言葉の意味は、アリシアにとってあまりにも唐突で、あまりにも冷たいものだった。
「……離れる、とはどういう意味でございますか」
「つまり、この城にいないでほしい、ということだ。しばらくの間、君には別の場所で暮らしてもらいたい」
アリシアは、ゆっくりと目を閉じた。指先がわずかに震えるのを、彼女は必死に抑えていた。この男の前で、自分が動揺している姿を見せたくなかったからだ。
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・