【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ

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適正

 クリコットの手腕でサリーの元へ行く前に、ティファナ・アズラーを呼び出すことに成功した。

「代理のことは聞いているか」
「はい、娘から伺いました。なぜ娘なんでしょうか。エモンド公爵令嬢も、なぜ彼女だったのでしょうか」

 代理の理由は誰でも知れるものではない、担当者と王族と、代理の関係者くらいだろう。ゆえにミアローズが代理であることも、なぜだという疑問だけが残る。

 理由を見せると、いつも冷静なアズラー夫人が目を見開き、口をパクパクさせており、今まで見たことのない表情であった。

「ルアンナが、娘がこのようなことをサリー様に…大変申し訳ございません、何とお詫びをすればいいのか」
「夫人は知らなかったのか」
「はい、知っていたら止めておりました」
「サリーからも何も言われていないということだな?」
「はい、サリー様は何もおっしゃっていません。どんな思いで、私の授業を受けていたのでしょうか、何てことを…」

 娘に暴言を吐かれながら、その母親の授業を受ける。二人で追い込むことも出来たであろうが、そうはしていなかったということか。

「娘の独断か?」
「…はい、サリー様が婚約者に決まってから、勝手にライバルのように思っていることは知っておりましたが、まさかこのようなことを言うなどとは」
「煽ったりなどはしていないのか、王太子妃になれるなどと」
「私が王太子妃教育の担当に選ばれたこともあり、娘もサリー様には及びませんが、出来は良い方でしたので、なれたのではないかと周りは言っておりました。ですが、そんなに簡単なものではないと伝えておりました」

 サリーとルアンナは、同じ年で同じ侯爵家。ルアンナはその言葉を真に受けて、上には上がいることを知らずに、サリーに当たったのだろう。

「無理だとハッキリと言ったことはあるか?」
「はい、ございます。子どもの頃は、向上心を奪うのではないかと、ハッキリ伝えるのも可哀想だと思っておりましたが、学園に入る前頃でしょうか、絶対に無理だとしっかり伝えたことがあります」
「なるほどな、それでサリーに食って掛かったのかもしれない」
「あっ、ああ、申し訳ございません!」

 日付を見れば、学園に入ってすぐ辺りとなっている。あまり関わることのなかったサリーを見付けて、発言をしたのだろう。

「例えば、サリーがいなければなどと思うような娘か?」
「これを読んだ後では、思考は持っていると考えていいと思います」
「さすが、王太子妃教育の担当だな」
「恐れ入ります…」
「ルイソード殿もこのことを知れば、気分が悪いだろう。正直、穏便に済ませたいが、サリーは代理をして欲しいのであって、謝罪は受け入れない」

 殿下がサリーの様子を見る限り、代理をさせることが目的で、自ずと罰を受けることにはなっているが、罰して欲しいわけではないのだと分かった。

「はい…娘はどうして私なのか本当に分からないと、私には申しておりましたが、分かっていたのでしょう。ルイソード様にもまだ話していないと申しておりました。問いただして、許されなくとも謝罪させます。勿論、私も共に罰を受けます」
「いや、おそらくそうではない。夫人が辞することも、罰されることも望んでいない。相応しいと言った責任の問題なのだ」
「娘に責任を取らせるということでしょうか」
「ああ、まさにそうだ。発言の責任、それがサリーの要求なのだよ。娘は代理をすることは可能か?」

 サリーが謝罪で取り下げるとは思えない、グリズナー夫人は仮病と、出れないということで下げることになったが、ミアローズになっただけであった。そして、今回はミアローズではなく、ルアンナになっている。同様の発言をした者、全てに代理をさせることがやはり目的なのだろうか。

「分かりません、調べてみるから落ち着きなさいと話をしただけでございます。語学もノワンナ語は出来ますが、アペラ語とカベリ語は読み書きは多少出来ますが、話すのは挨拶程度でございます」
「そうか、どうしたものか。私はあまりルイソード殿と親しくはないのだが、どのような方だ?」
「真面目な方です、許すことは出来ないかもしれません」
「離縁などになるのは、私も本意ではない。本人を連れて行くべきか」
「ルアンナを連れて、責任を取らせます」
「分かった」

 アズラー夫人の全てを信じることは出来ないが、ミアローズと違って、謝罪をしないという選択肢はないだろう。

「あと、これは単に興味なのだが、アズラー夫人は王妃になる気があったのか?」
「いいえ、滅相もございません。確かに正妃の試験は受けました、私だけではなく、数名受けております。その上で、王妃様が選ばれたのです」
「だが、側妃の打診があったのではないか」
「それはございましたが、お受けしませんでした」
「そうか。母上が妨害したのではないかと、一度、聞いてみたかったのだ」
「王妃様から、そのようなことはございません」

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