文字の大きさ
大
中
小
56 / 203
陳謝
リール殿下はルイソード・クリジアンに謝罪に伺いたいと文を送ったが、こちらが出向きますとと、訪問を受けることになった。
元々、父親であるクリジアン公爵と会うことはあっても、ルイソードとは一年間は学園で一緒ではあったが、話すことはなく、さすがの殿下も不貞の相手の夫、当時は婚約者に会うことは初めてであった。
これから先、クリジアン公爵から、ルイソードから、協力を得られることはないかもしれないが、受け入れるつもりである。
「私が出向かなければいかないところ、申し訳ない」
「いえ、殿下にも妃殿下にも一度は話をしなければと思っておりましたから」
「ああ、聞いている」
ルイソードは本日、サリーへの訪問許可も取っていると、クリコットから報告を受けている。被害者同士、気が合うだろうと思うと気が重いが、仕方ない。
「何を言われても、不敬としないことを約束する。そして、当時婚約者であったルアンナ・アズラーとの不貞行為を認め、謝罪する。申し訳なかった。慰謝料を請求してもらって構わない」
「いえ、笑って許せるということはありませんが、既に離縁しましたし、慰謝料も結構です。不貞については、時間のおかげか…正直、そこまで怒りはないんです。当時知っていたら、こうはならなかったかもしれませんが」
「許す許さないではなく、お金の問題ではないことも分かっているが、事実は事実として、慰謝料は受け取って欲しい」
受け取らないのではないかとは思っており、既に慰謝料は用意してあった。母上からも慰謝料として使いなさいと私財からお金を渡され、十分な額であるはずだ。
「承知しました」
「本当にすまなかった」
殿下は座ったままではあるが、しっかりと頭を下げ、ルイソードもこれが最大限の謝罪だろうと、止めることなく、見届けた。
「一つ、伺ってもよろしいでしょうか」
「ああ、何でも嘘偽りなく答える」
「ルアンナをお好きだったのでしょうか」
「正直に答えるが、好きだったわけではない。私は相手は控えるが、他にも不貞を犯しているのだ。だが、皆、婚約者がいない者だった。サリーと婚約していたのにと言われれば、何も言えないのだが、愚かであった。だからアズラー侯爵令嬢に言い寄られたが、君がいることは分かっていたたので、拒絶したのだが…」
殿下は少しでも不快な思いをさせないために、どう伝えるべきか、悩んでいた。離縁しても、娘の母親、その不貞相手から、言われて気分がいいはずがない。
「ありのまま話してくださって結構です」
「では、事実を話す。当時、アズラー侯爵令嬢は真面目で、礼儀正しい令嬢だと思っていたのもあり、何度か断ったのだが、サリーがいる限り、正妃になるのは叶わない。だから思い出が欲しいと、それで記憶にある限り、三回不貞行為を犯した…」
「そうでしたか、ルアンナが誘ったというのは事実のようですね」
ルアンナの発言は嘘だとは思っていたが、否定できる材料がなかった。だが、ここまで来て殿下が嘘を付く必要はない。若気の至りだと言われればそれまでだが、押しと欲望に弱いのかもしれない。
「だが、私も拒絶し切れなかった責任がある」
「殿下を憎むことはしません。冷静になって考えてみると、不貞よりも妃殿下への暴言と暴力の方が許せませんでした。おそらく不貞もその延長だったのでしょう。身体を使おうなどと、令嬢のすることではありません。そのような人間が妻であること、母親であることの方が耐えらなかったのです」
確かに不貞にも驚きはした、アズラー侯爵家の者が不貞を犯すはずがないとどこかで思っていたからだ。だが、より許せなかったのは、妃殿下への暴言と暴力の方であった。陰湿に執拗に何度も浴びせ掛け、暴力を振い、さらに不貞まで犯し、優越感に浸っていたような人間を、私は許すことが出来ない。
「それは私も遺憾である。だが、私にも責任がある。サリーに償い続けるつもりだ」
償えるかは分からないが、殿下にはもうその道しか残されていない。
ルイソードは殿下を声を荒げることも、非難することもなく、至って冷静に殿下と話をして、早々に退席した。二歳でも年上の風格なのか、殿下の緊張は当然だが、控えていたクリコットも掌は汗で濡れていた。
元々、父親であるクリジアン公爵と会うことはあっても、ルイソードとは一年間は学園で一緒ではあったが、話すことはなく、さすがの殿下も不貞の相手の夫、当時は婚約者に会うことは初めてであった。
これから先、クリジアン公爵から、ルイソードから、協力を得られることはないかもしれないが、受け入れるつもりである。
「私が出向かなければいかないところ、申し訳ない」
「いえ、殿下にも妃殿下にも一度は話をしなければと思っておりましたから」
「ああ、聞いている」
ルイソードは本日、サリーへの訪問許可も取っていると、クリコットから報告を受けている。被害者同士、気が合うだろうと思うと気が重いが、仕方ない。
「何を言われても、不敬としないことを約束する。そして、当時婚約者であったルアンナ・アズラーとの不貞行為を認め、謝罪する。申し訳なかった。慰謝料を請求してもらって構わない」
「いえ、笑って許せるということはありませんが、既に離縁しましたし、慰謝料も結構です。不貞については、時間のおかげか…正直、そこまで怒りはないんです。当時知っていたら、こうはならなかったかもしれませんが」
「許す許さないではなく、お金の問題ではないことも分かっているが、事実は事実として、慰謝料は受け取って欲しい」
受け取らないのではないかとは思っており、既に慰謝料は用意してあった。母上からも慰謝料として使いなさいと私財からお金を渡され、十分な額であるはずだ。
「承知しました」
「本当にすまなかった」
殿下は座ったままではあるが、しっかりと頭を下げ、ルイソードもこれが最大限の謝罪だろうと、止めることなく、見届けた。
「一つ、伺ってもよろしいでしょうか」
「ああ、何でも嘘偽りなく答える」
「ルアンナをお好きだったのでしょうか」
「正直に答えるが、好きだったわけではない。私は相手は控えるが、他にも不貞を犯しているのだ。だが、皆、婚約者がいない者だった。サリーと婚約していたのにと言われれば、何も言えないのだが、愚かであった。だからアズラー侯爵令嬢に言い寄られたが、君がいることは分かっていたたので、拒絶したのだが…」
殿下は少しでも不快な思いをさせないために、どう伝えるべきか、悩んでいた。離縁しても、娘の母親、その不貞相手から、言われて気分がいいはずがない。
「ありのまま話してくださって結構です」
「では、事実を話す。当時、アズラー侯爵令嬢は真面目で、礼儀正しい令嬢だと思っていたのもあり、何度か断ったのだが、サリーがいる限り、正妃になるのは叶わない。だから思い出が欲しいと、それで記憶にある限り、三回不貞行為を犯した…」
「そうでしたか、ルアンナが誘ったというのは事実のようですね」
ルアンナの発言は嘘だとは思っていたが、否定できる材料がなかった。だが、ここまで来て殿下が嘘を付く必要はない。若気の至りだと言われればそれまでだが、押しと欲望に弱いのかもしれない。
「だが、私も拒絶し切れなかった責任がある」
「殿下を憎むことはしません。冷静になって考えてみると、不貞よりも妃殿下への暴言と暴力の方が許せませんでした。おそらく不貞もその延長だったのでしょう。身体を使おうなどと、令嬢のすることではありません。そのような人間が妻であること、母親であることの方が耐えらなかったのです」
確かに不貞にも驚きはした、アズラー侯爵家の者が不貞を犯すはずがないとどこかで思っていたからだ。だが、より許せなかったのは、妃殿下への暴言と暴力の方であった。陰湿に執拗に何度も浴びせ掛け、暴力を振い、さらに不貞まで犯し、優越感に浸っていたような人間を、私は許すことが出来ない。
「それは私も遺憾である。だが、私にも責任がある。サリーに償い続けるつもりだ」
償えるかは分からないが、殿下にはもうその道しか残されていない。
ルイソードは殿下を声を荒げることも、非難することもなく、至って冷静に殿下と話をして、早々に退席した。二歳でも年上の風格なのか、殿下の緊張は当然だが、控えていたクリコットも掌は汗で濡れていた。
感想
あなたにおすすめの小説
私が使うはずだった部屋に病弱令嬢を寝かせた婚約者とは、白紙に戻します
さんけい王家の意向で進められた婚約。
リーゼロッテ・エーレンフェルトは、婚約者ヒューバート・ラドクリフの屋敷を訪れた日、婚礼後に自分が使うはずだった部屋で、病弱な男爵令嬢アネットが眠っているのを見る。
「君なら分かってくれると思った」
ヒューバートはそう言った。
けれどリーゼロッテが問いたいのは、アネットが可哀想かどうかではない。
弱い方を助けるために、なぜ私の部屋を使ったのですか。
なぜ私の席を、あなたの優しさのために差し出したのですか。
部屋、席、茶会、呼び名。
少しずつずらされた扱いを、リーゼロッテは一つずつ確認していく。
善意を理由に他人の場所を使う婚約者とは、白紙に戻します。
※初日以外は6時・17時の更新といたします。
私のことはお気になさらず
みおな 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
どうぞお好きになさってください
みおな学園に入学して一ヶ月。
婚約者の第一王子殿下は言った。
「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕はひとりの男として自由に過ごしたい」
公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「好きになさればよろしいわ」
彼女の離縁とその波紋
豆狸夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。