【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ

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快適

 代理の指名をしなくなってから、三年の月日が流れていた。サリーとリール殿下の関係は変わらないが、ミーラ王子はサリーの宮に移り、殿下はミーラに会いに来る名目で宮を訪れるようになっていた。

 顔立ちのそっくりな二人の仲の良い姿は宮の癒しとなっている。

 変わったことと言えば、サリーの兄・レオが侯爵邸とは別の邸に、妻子と暮らし始めた。おかげで、サリーはミーラを連れて、レオの邸に遊びに行くようになり、殿下も時折、兄が訪ねて来たことは知っていたので、兄妹の仲が悪いとは思ってなかったが、ただ単に両親に会いたくなかっただけだったと気付いた。

 両親によって離れ離れにされたが、互いに大事に思っていた。殿下は何度かレオと話をしようと試みたが、けんもほろろに断られてしまい、密偵はレオの手の物ではないかと思うようになったが、確信は得られていない。

 サリーとレオの妻・ジェシカは接点がないように思っていたが、三年前から親しさを隠さなくなった。ジェシカはノーラ公爵家の次女で、サリーがノーラ公爵夫妻とも非常に仲が良いことを知らなかった。差し入れを貰ったり、ドレスを作って貰ったり、まるで本当の娘のように扱っている姿に皆は驚いた。

 ジェシカの姉・ポーラはノワンナ語を母国語とする、フアラ王国の公爵家に嫁いでおり、隣国なので度々帰って来ては、ポーラ、ジェシカ、サリーがまるで三姉妹のように話している。サリーに暴言を吐いた者は社交界からいなくなり、冷遇していた者たちには入り込む隙はない。

 面白くないのはペルガメント侯爵夫妻である。訪問は却下されるため、夜会やパーティーではサリーに接触しようと必死で、ついにやらかしたこともあった。夫妻の後ろには謎の三人の男女が控えていた。

「「王太子殿下、王太子妃殿下、ごきげんよう」」
「ああ」

 殿下もまた来たのかと、うんざりした。サリーが駄目ならと、殿下に訪問して、あの子は勘違いをしている、話せばわかる、取り持って欲しいと何度も言われているが、殿下にそんな力はない。

「サリー、今日こそは私たちの話を聞いて頂戴。沢山、話したいこともあるの」
『あなた方となぜ話をしなければならないのですか?通訳を介さないとお話が出来ないなんて、誇り高きペルガメント侯爵夫妻のなさることではないのではないですか(ビアロ語)』
「ノワンナ語ではありません」
「アペラ語でもありません」
「カベリ語でもございません」
「っな!サリー!」

 殿下はビアロ語は分からないため、なぜだと思ったが、サリーは瞬時に後ろの三人が通訳だと判断したようだ。ほとんどは相手にしなかったが、しつこい時はノワンナ語、アペラ語、カベリ語のどれかで返答していた。

『誇り高きペルガメント侯爵夫妻ですもの、私がどのような言語で話そうと自由でしょう?それともまだ不自由を押し付けるの?(ビアロ語)』
「サリー、別の言語で話しなさい」
『まあ、図々しいわね。私の両親だと言うのなら、三ヶ国語に加え、ビアロ語くらいは分からないの?(ノール語)』
「ノワンナ語ではありません」
「アペラ語でもありません」
「カベリ語でもございません、おそらくノール語かと思います」
「サリー、いい加減にしなさい」
『まあ、このくらいで誇り高きペルガメント侯爵夫妻は怒るの?随分、狭量なのね。恥ずかしくてたまらないわ(プラ語)』

 もはやサリー以外に誰も分からないため、サリーにしか何を言っているか分からないが、サリーはそれで満足であった。聞く耳を持たない者には、聞いて分からなくても問題ないと思っている。全て今さら、自業自得である。

「ペルガメント侯爵、下品ですよ。周りを見てください」

 ようやくトワイ語を話したが、周りにはサリーが放つ言葉に呆気に取られて、驚いて目を見開いている者、素晴らしいと見つめる者、そして大部分はペルガメント侯爵夫妻への軽蔑のまなざし。

 プライドだけは人一番高い夫妻は、居たたまれず、去って行った。周りは娘に嫌われているのは知っているのに、本人たちだけが未だに認められないのである。

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