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番外編1
ミアローズ・エモンド6
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「皇帝陛下の姉君に喧嘩を売って、愚か者が!」
「あれは知らなかったの!後から聞いたんだもの」
「知らなかった?それこそ、下級貴族なら知らない者もいるかもしれないが、公爵令嬢が知らないというのはあり得ない、それがお前の言っている公爵令嬢というものだ、分からないのか?」
「本人が言ってくれればいいじゃない」
「本気で言っているのか?私は皇帝陛下の姉なんですけどって?わざわざ?みんな知っているのに?逆におかしいと思われるだろう」
「それは…」
「お前は頭が悪い、憶えられないもんな」
エディンは両親は認めたくないようであったが、妹を頭が悪いと分かっていた。メイドに自身が命令したのに、翌日にはそんなことは言っていないと言い出すことも多かった。だが、これまで面倒な妹にわざわざ頭が悪いとは言ったことはなかった。
「そんなことないわ!」
「さすがに誰が言わなかったのか?お前は明らかに頭が悪い。学園も何とか卒業させてもらったじゃないか」
「苦手な科目があっただけよ」
「本当に分かっていないのか?みんな、言わなかったのか?それとも、気付いていると思って、言わなかったのか…点数を見れば分かるだろう」
「だからそれはたまたま」
「毎回、三分の一も正解出来ないのに、たまたま?」
ミアローズは自身が一度も頭が悪いと思ったことはなかった。試験は難易度が高すぎて、たまたま出来なかったと思っていた。そして周りも自身が平均点で、同じ程度だと思い込んでいる。
「今さら出来が悪いことを言っても仕方がない。行き遅れの癖に、不貞で離縁された色狂いで、名ばかりの公爵令嬢。それがお前だよ、受け止めなさい」
「何よそれ、ふざけないで」
「ふざけていない、お前の相手をしたという者もいる」
あれだけ色事をしていたら、相手だって全員が言わないということはない。これだけ噂が広がり、エモンド公爵の力がなくなったとされれば、話し出す男だっている。
「不貞は認めていないわ」
「認めなくても、色狂いなんだから、不貞だったのだと思われて当然だろう。折角、結婚してくれるという人がいたというのに、愚かだな。とりあえず、領地の両親のところに送り届ける。そこで考えなさい」
「縁談は?」
「お前に縁談なんてあるわけないだろう?誰が縁談などと言った?」
何を言っているんだ?最後だと思って話に付き合っているが、縁談などあるはずないだろう。確かに両親は探してはいたようだが、まともな縁談があるはずがない。
「私は公爵令嬢なのよ、縁談がないはずないわ」
「もう正確には公爵令嬢ではない、公爵の妹だ」
「何なのよ、もう!」
「そんなに結婚したかったのなら、なぜ縁談がある頃にしなかったのだ?公爵家は難しくとも、侯爵家もあっただろう?」
「私は魅力的なんだから、上に行かないといけないのよ!」
「はあ…皆がお姫様などと甘やかしたのが、大人になってまでも影響を受けているのはお前だけだろう、その年で、まだ自分がお姫様だと思っているのか?恥ずかしくないのか?お前にはそれしかないのか?」
「そんな酷い言い方しなくてもいいじゃない!」
捨ててしまいところだが、そんなことをすれば、面倒ごとを起こすに決まっている。ミアローズを可愛いと思えたのは生まれたての頃だけだっただろう。
「頭が悪い癖に高望みして、行き遅れて、色狂いになって、離縁されて、お前は何がしたかったんだ?」
「何を…」
「私には分からない、貴族として何もしない、公爵家のためにも何もしない、自分のためにも何もしない。その日が楽しければいいというのなら、貴族を辞めて、好きなように生きればよかっただろう」
「それは…」
ミアローズは深く考えて生きて来ていない。思い付きで行動し、その場限りが楽しければいい、それがまかり通っていたのは地位だけであった。
「あれは知らなかったの!後から聞いたんだもの」
「知らなかった?それこそ、下級貴族なら知らない者もいるかもしれないが、公爵令嬢が知らないというのはあり得ない、それがお前の言っている公爵令嬢というものだ、分からないのか?」
「本人が言ってくれればいいじゃない」
「本気で言っているのか?私は皇帝陛下の姉なんですけどって?わざわざ?みんな知っているのに?逆におかしいと思われるだろう」
「それは…」
「お前は頭が悪い、憶えられないもんな」
エディンは両親は認めたくないようであったが、妹を頭が悪いと分かっていた。メイドに自身が命令したのに、翌日にはそんなことは言っていないと言い出すことも多かった。だが、これまで面倒な妹にわざわざ頭が悪いとは言ったことはなかった。
「そんなことないわ!」
「さすがに誰が言わなかったのか?お前は明らかに頭が悪い。学園も何とか卒業させてもらったじゃないか」
「苦手な科目があっただけよ」
「本当に分かっていないのか?みんな、言わなかったのか?それとも、気付いていると思って、言わなかったのか…点数を見れば分かるだろう」
「だからそれはたまたま」
「毎回、三分の一も正解出来ないのに、たまたま?」
ミアローズは自身が一度も頭が悪いと思ったことはなかった。試験は難易度が高すぎて、たまたま出来なかったと思っていた。そして周りも自身が平均点で、同じ程度だと思い込んでいる。
「今さら出来が悪いことを言っても仕方がない。行き遅れの癖に、不貞で離縁された色狂いで、名ばかりの公爵令嬢。それがお前だよ、受け止めなさい」
「何よそれ、ふざけないで」
「ふざけていない、お前の相手をしたという者もいる」
あれだけ色事をしていたら、相手だって全員が言わないということはない。これだけ噂が広がり、エモンド公爵の力がなくなったとされれば、話し出す男だっている。
「不貞は認めていないわ」
「認めなくても、色狂いなんだから、不貞だったのだと思われて当然だろう。折角、結婚してくれるという人がいたというのに、愚かだな。とりあえず、領地の両親のところに送り届ける。そこで考えなさい」
「縁談は?」
「お前に縁談なんてあるわけないだろう?誰が縁談などと言った?」
何を言っているんだ?最後だと思って話に付き合っているが、縁談などあるはずないだろう。確かに両親は探してはいたようだが、まともな縁談があるはずがない。
「私は公爵令嬢なのよ、縁談がないはずないわ」
「もう正確には公爵令嬢ではない、公爵の妹だ」
「何なのよ、もう!」
「そんなに結婚したかったのなら、なぜ縁談がある頃にしなかったのだ?公爵家は難しくとも、侯爵家もあっただろう?」
「私は魅力的なんだから、上に行かないといけないのよ!」
「はあ…皆がお姫様などと甘やかしたのが、大人になってまでも影響を受けているのはお前だけだろう、その年で、まだ自分がお姫様だと思っているのか?恥ずかしくないのか?お前にはそれしかないのか?」
「そんな酷い言い方しなくてもいいじゃない!」
捨ててしまいところだが、そんなことをすれば、面倒ごとを起こすに決まっている。ミアローズを可愛いと思えたのは生まれたての頃だけだっただろう。
「頭が悪い癖に高望みして、行き遅れて、色狂いになって、離縁されて、お前は何がしたかったんだ?」
「何を…」
「私には分からない、貴族として何もしない、公爵家のためにも何もしない、自分のためにも何もしない。その日が楽しければいいというのなら、貴族を辞めて、好きなように生きればよかっただろう」
「それは…」
ミアローズは深く考えて生きて来ていない。思い付きで行動し、その場限りが楽しければいい、それがまかり通っていたのは地位だけであった。
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