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番外編1
ルアンナ・アズラー4
サリーへの王太子妃教育の始まった母は教育のことばかり考えているようになった。前は勉強を教えてくれていたが、家庭教師がやって来るようになって、教えてくれなくなったわけではないが、時間は格段に減った。
母は親子なのに祖父母のように褒めることはなかった、それが王太子妃教育が始まってから、さらに褒められることはなくなった。きっとサリーと比べているのだろうと思った、どれだけ出来がいいのだろうか。
「ペルガメント侯爵令嬢は賢いのですか」
「ええ、そうね。あの年で婚約者に選ばれた方ですからね」
「何が賢いの?」
「記憶力がいいですね」
「ふーん」
母は多くは語らなかったが、母に認められているのは確かだった。記憶力って、全てが憶えられるわけではないだろうになどと思っていたが、学園で一緒になってから、常人ではない記憶力を持っていることが分かり、でもそれは努力したものではなく、持って生まれたただの幸運だろうと思った。
私も勉強もマナーも所作も頑張って習得した。言語だけはノワンナ語は何とかなっても、アペラ語とカベリ語は読み書きはおろか、発音が難しく、なかなか憶えられなかった。でもまだ時間ある、これから憶えていけばいいと思っていた。
学園に入る前に真剣な顔をした両親に呼びされて、三人きりとなった。
「まだ王太子妃になりたいなどと思っていないな?」
「…はい」
「王太子妃教育の担当として、ハッキリ言っておきます。絶対にサリー・ペルガメント侯爵令嬢には敵わない、王太子妃は絶対に無理だと肝に銘じなさい」
「でも!」
「でもではありません、超えることは一生掛かっても絶対に無理です」
その言葉はルアンナを酷く傷付けた。そしてサリーへの暴言と暴力に繋がる。
ルアンナの周りは格下の令嬢だったこともあるが、皆が真面目で成績の良いルアンナを褒めた。特に友人のステファー嬢、ミンア嬢、カトレア嬢は、サリーよりも私の方が王太子妃に相応しいといつも言ってくれていた。
弟のルトアスだけはサリーと比べる私を馬鹿にしていた、何も知らないから、そんなことが言えるのだ取り合わなかった。ルトアスはサリーの訳した『コルボリット』のファンだからだ。私は読もうとも思えない、一行だって読んだこともない、褒める者にはこう言っていた。
「訳しただけでサリーが書いたわけでもないのに、何が凄いのよ」
友人たちはそうよ、そうよと言ってくれた。私は間違ってない。サリーはただ文字を訳しただけ、記憶力がいいだけじゃないか。
領地での軟禁は続き、一度こっそり抜け出そうとしたことがあったが、スーミラ伯母様に見付かった。
「逃げて生きていけるのですか」
「でもこんなところで、ずっと」
「食事もお風呂も、服もあるのに?」
「私が望むものがないわ」
「何を望むの?」
「家族に友人に、娘にも会いたいの…私が慈しんで、死に物狂いで産んだのよ」
私を輝かせる綺麗なドレスも、美しい化粧も、美味しい王都のお料理やお菓子などとは、怒られるから敢えて言わない。
「でも本来なかったものよね?」
「えっ」
「だって、妃殿下がもし不貞を訴えていたら、あなたは婚約解消に、慰謝料、そして不貞を犯した女となった。結婚はおろか、子どもなんて持てなかったでしょう?」
「でもルイなら」
「あなたハッキリ言われたでしょう?知っていたら結婚していないと!」
「…でも」
「アズラー侯爵家はペルガメント侯爵家にむしり取られて、没落したかもしれない。そうなれば、帰る家もなくなっていたかもしれない」
スーミラはペルガメント侯爵夫妻を汚いやり口を知っている。悪評と娘を悲劇のヒロインにして、貶めて、締め上げるようにむしり取っただろう。
「家族も許さなかっただろうし、友人も変わらずにいてくれたかしら?居場所を知っても、誰も訪ねても来ないけど」
「手紙も来ていないの?」
「来てないわ、一通もね。あなたと関わっていたと分かれば、自分の身まで危ないと判断したんじゃないかしら」
「そんな…」
「あなたが野垂れ死ねばいいとまでは皆、思っていない。だからここで面倒を看ているのよ。反省することがあなたの人生よ」
母は親子なのに祖父母のように褒めることはなかった、それが王太子妃教育が始まってから、さらに褒められることはなくなった。きっとサリーと比べているのだろうと思った、どれだけ出来がいいのだろうか。
「ペルガメント侯爵令嬢は賢いのですか」
「ええ、そうね。あの年で婚約者に選ばれた方ですからね」
「何が賢いの?」
「記憶力がいいですね」
「ふーん」
母は多くは語らなかったが、母に認められているのは確かだった。記憶力って、全てが憶えられるわけではないだろうになどと思っていたが、学園で一緒になってから、常人ではない記憶力を持っていることが分かり、でもそれは努力したものではなく、持って生まれたただの幸運だろうと思った。
私も勉強もマナーも所作も頑張って習得した。言語だけはノワンナ語は何とかなっても、アペラ語とカベリ語は読み書きはおろか、発音が難しく、なかなか憶えられなかった。でもまだ時間ある、これから憶えていけばいいと思っていた。
学園に入る前に真剣な顔をした両親に呼びされて、三人きりとなった。
「まだ王太子妃になりたいなどと思っていないな?」
「…はい」
「王太子妃教育の担当として、ハッキリ言っておきます。絶対にサリー・ペルガメント侯爵令嬢には敵わない、王太子妃は絶対に無理だと肝に銘じなさい」
「でも!」
「でもではありません、超えることは一生掛かっても絶対に無理です」
その言葉はルアンナを酷く傷付けた。そしてサリーへの暴言と暴力に繋がる。
ルアンナの周りは格下の令嬢だったこともあるが、皆が真面目で成績の良いルアンナを褒めた。特に友人のステファー嬢、ミンア嬢、カトレア嬢は、サリーよりも私の方が王太子妃に相応しいといつも言ってくれていた。
弟のルトアスだけはサリーと比べる私を馬鹿にしていた、何も知らないから、そんなことが言えるのだ取り合わなかった。ルトアスはサリーの訳した『コルボリット』のファンだからだ。私は読もうとも思えない、一行だって読んだこともない、褒める者にはこう言っていた。
「訳しただけでサリーが書いたわけでもないのに、何が凄いのよ」
友人たちはそうよ、そうよと言ってくれた。私は間違ってない。サリーはただ文字を訳しただけ、記憶力がいいだけじゃないか。
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「逃げて生きていけるのですか」
「でもこんなところで、ずっと」
「食事もお風呂も、服もあるのに?」
「私が望むものがないわ」
「何を望むの?」
「家族に友人に、娘にも会いたいの…私が慈しんで、死に物狂いで産んだのよ」
私を輝かせる綺麗なドレスも、美しい化粧も、美味しい王都のお料理やお菓子などとは、怒られるから敢えて言わない。
「でも本来なかったものよね?」
「えっ」
「だって、妃殿下がもし不貞を訴えていたら、あなたは婚約解消に、慰謝料、そして不貞を犯した女となった。結婚はおろか、子どもなんて持てなかったでしょう?」
「でもルイなら」
「あなたハッキリ言われたでしょう?知っていたら結婚していないと!」
「…でも」
「アズラー侯爵家はペルガメント侯爵家にむしり取られて、没落したかもしれない。そうなれば、帰る家もなくなっていたかもしれない」
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「手紙も来ていないの?」
「来てないわ、一通もね。あなたと関わっていたと分かれば、自分の身まで危ないと判断したんじゃないかしら」
「そんな…」
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