106 / 203
番外編1
カリー・カイサック9
「ああ、正妃よりはレベルは下がるだろうけど、側妃も一通り話せないとならない。君の母国でやらかしがあっただろう」
「側妃見習いですか」
「そうそう、うちでも過去にあったからね。正妃は無理でも側妃なら入り込めると思った愚か者がね。そんな簡単になれる立場ではないのに、王太子を篭絡すれば、自ずとなれると思っていた者が現れるんだよ」
王太子妃になれるなんて本気で思っていたわけではないが、一度関係を持たことで、もしかしたらとは思ったことはある。
「言葉だからね、誤魔化しようがない。君も話せないのに、話せる振りは出来ないだろう?」
「…はい」
時を経て、ようやく妃殿下の言った意味が分かった。お前は三ヶ国語が話せるのかという意味だったのだろう。それを男女の話などと、さぞ滑稽に見えただろう。
それから、カリーはノワンナ語を積極的に学んだ。それでも発音はまだ顔を顰められるレベルだ。
娼婦を続けながら、お金も余裕が出来たので、五年振りに母国に帰ることにした。鬘と化粧も薄く、変装をして向かった。
一番気になっていたのは、カックスの商家だった。同じ場所に同じように存在しており、ホッとした。コーエンが言ったことは嘘だったのか、大袈裟だったのか、でもカックスは戻って来るなと言い、コーエンも面倒を看てはくれなかった。どちらにせよ、居場所はなかった。
実家を見に行くと、あるにはあったが、知らない人ばかりで、あなたと呼ぶ声の女性も知らない人だった。売ったのかもしれない。落ちぶれたのかもしれないが、ざまあみろという気持ちにはなれなかった、慰謝料で傾いた可能性もある。
子爵家には怖くて近づけなかった。結婚して子どもがいる姿を見たくないのではなく、軽蔑の眼差しが怖かったからだ。
あれから何があったか知りたいと思い、小さな図書館に行った。フアラ王国では、ノワンナ語で書かれているため、全く読めなかったのだ。
貴族名鑑にカイサックの名前も、ロイル子爵も変わらずあり、再びホッとした。一年ずつをまとめた新聞には、ルアンナ、ミンアが離縁したことが書かれていた。カリーのことも小さく書かれていた。そして、キイスの再婚も書かれており、思い出さないようにしていたが胸が痛んだ、知らない令嬢だった。
そして、カックスの商家はコーエンの言った通り、何度も廃業かと書かれていたが、持ち直したようだった。二度と合わせる顔がない。
カリーは責任を感じ、自身が身を寄せたせいではあったのだが、カックスはカリーを追い出した時、そこまで深刻だとは思っていなかった。だが、どんどん売り上げが落ちて行き、ようやくカリーの恨むことになった。公に文句を言うことはないが、親しい者には愚痴を言っていたので、会わなくて正解だっただろう。
そして、どの年の新聞にも妃殿下のことは書かれている。絵本が賞を貰ったことから、コルボリットの翻訳国がまた増えたこと、おかげで貿易が拡大したこと、国際会議出の様子、そして犬を飼い始めたことですら、大きく載っている。敬われ愛される存在、それがサリー王太子妃殿下であると、感じずにはいられなかった。
清さなど要らない、求められる女性こそが魅力的だと思っていた。でも結婚を考えた時、そうではないことが分かった。愛人志望だったら良かったのだろう。その一瞬輝けば幸せならば、ここにはいなかった。でもどちらが良かったかは分からない。
いや、周りからどう見えるか利用せず、生きていれば違っただろう。
カイサック男爵は存在していたが、カリーを追い出した後で、男爵は王家に謝罪と爵位を返上したいと申し出ていた。カリーのことならば、籍を外せば無関係だろうと、咎められることはなかった。どこに行ったのかも分からず、カックスがやって来て、損害賠償を求められたが、娘はいないと追い返した。
淡々とした男爵だったが、娘を自由にさせ過ぎた責任はあるが、慰謝料もしっかり払い、夫妻で謝罪をし、自分たちなりに責任を負って来た。だからこそ、爵位を返上まで決めたのだが、動かしていたのは王太子殿下であったからだ。
「側妃見習いですか」
「そうそう、うちでも過去にあったからね。正妃は無理でも側妃なら入り込めると思った愚か者がね。そんな簡単になれる立場ではないのに、王太子を篭絡すれば、自ずとなれると思っていた者が現れるんだよ」
王太子妃になれるなんて本気で思っていたわけではないが、一度関係を持たことで、もしかしたらとは思ったことはある。
「言葉だからね、誤魔化しようがない。君も話せないのに、話せる振りは出来ないだろう?」
「…はい」
時を経て、ようやく妃殿下の言った意味が分かった。お前は三ヶ国語が話せるのかという意味だったのだろう。それを男女の話などと、さぞ滑稽に見えただろう。
それから、カリーはノワンナ語を積極的に学んだ。それでも発音はまだ顔を顰められるレベルだ。
娼婦を続けながら、お金も余裕が出来たので、五年振りに母国に帰ることにした。鬘と化粧も薄く、変装をして向かった。
一番気になっていたのは、カックスの商家だった。同じ場所に同じように存在しており、ホッとした。コーエンが言ったことは嘘だったのか、大袈裟だったのか、でもカックスは戻って来るなと言い、コーエンも面倒を看てはくれなかった。どちらにせよ、居場所はなかった。
実家を見に行くと、あるにはあったが、知らない人ばかりで、あなたと呼ぶ声の女性も知らない人だった。売ったのかもしれない。落ちぶれたのかもしれないが、ざまあみろという気持ちにはなれなかった、慰謝料で傾いた可能性もある。
子爵家には怖くて近づけなかった。結婚して子どもがいる姿を見たくないのではなく、軽蔑の眼差しが怖かったからだ。
あれから何があったか知りたいと思い、小さな図書館に行った。フアラ王国では、ノワンナ語で書かれているため、全く読めなかったのだ。
貴族名鑑にカイサックの名前も、ロイル子爵も変わらずあり、再びホッとした。一年ずつをまとめた新聞には、ルアンナ、ミンアが離縁したことが書かれていた。カリーのことも小さく書かれていた。そして、キイスの再婚も書かれており、思い出さないようにしていたが胸が痛んだ、知らない令嬢だった。
そして、カックスの商家はコーエンの言った通り、何度も廃業かと書かれていたが、持ち直したようだった。二度と合わせる顔がない。
カリーは責任を感じ、自身が身を寄せたせいではあったのだが、カックスはカリーを追い出した時、そこまで深刻だとは思っていなかった。だが、どんどん売り上げが落ちて行き、ようやくカリーの恨むことになった。公に文句を言うことはないが、親しい者には愚痴を言っていたので、会わなくて正解だっただろう。
そして、どの年の新聞にも妃殿下のことは書かれている。絵本が賞を貰ったことから、コルボリットの翻訳国がまた増えたこと、おかげで貿易が拡大したこと、国際会議出の様子、そして犬を飼い始めたことですら、大きく載っている。敬われ愛される存在、それがサリー王太子妃殿下であると、感じずにはいられなかった。
清さなど要らない、求められる女性こそが魅力的だと思っていた。でも結婚を考えた時、そうではないことが分かった。愛人志望だったら良かったのだろう。その一瞬輝けば幸せならば、ここにはいなかった。でもどちらが良かったかは分からない。
いや、周りからどう見えるか利用せず、生きていれば違っただろう。
カイサック男爵は存在していたが、カリーを追い出した後で、男爵は王家に謝罪と爵位を返上したいと申し出ていた。カリーのことならば、籍を外せば無関係だろうと、咎められることはなかった。どこに行ったのかも分からず、カックスがやって来て、損害賠償を求められたが、娘はいないと追い返した。
淡々とした男爵だったが、娘を自由にさせ過ぎた責任はあるが、慰謝料もしっかり払い、夫妻で謝罪をし、自分たちなりに責任を負って来た。だからこそ、爵位を返上まで決めたのだが、動かしていたのは王太子殿下であったからだ。
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
妹に奪われた婚約者は、私を壊す災厄でした
あう
恋愛
伯爵家の長女セレナは、侯爵令息の婚約者として家を支え、妹のわがままにも耐え続けてきた。
しかし妹ミレイユは、“可哀想な妹”を演じて姉の婚約者を奪い、ついに婚約破棄へ持ち込んでしまう。
すべてを奪われた――そう思われたセレナだったが、伯爵家を離れたことで見えてきたのは、自分を縛っていた歪な家族と婚約の真実だった。
そして、奪ったはずの妹のほうもまた、望んだ未来とは違う現実へ追い詰められていく。
奪い返さない。縋らない。
静かに手放した令嬢が、自分の人生を取り戻していくざまぁ恋愛譚。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました
伊久留りさ
恋愛
北辺の国境を守る小さな領地、ヴァルドリア。その城館の一室で、若き領主の妻アリシアは、夫レオンハルトの言葉に静かに耳を傾けていた。
「アリシア、君にはもう少し、この城から離れてもらいたい」
レオンハルトの声は、いつものように低く、落ち着いていた。しかし、その言葉の意味は、アリシアにとってあまりにも唐突で、あまりにも冷たいものだった。
「……離れる、とはどういう意味でございますか」
「つまり、この城にいないでほしい、ということだ。しばらくの間、君には別の場所で暮らしてもらいたい」
アリシアは、ゆっくりと目を閉じた。指先がわずかに震えるのを、彼女は必死に抑えていた。この男の前で、自分が動揺している姿を見せたくなかったからだ。
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・