【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
237 / 344

【テイラー】釈放3

しおりを挟む
「確か、アイルーン様も子どもを産ませて、ローズミーの子どもにして、ディオエル様から離して、殺す気だったのですよね?」
「っ」
「ローズミーはいませんが、テイラー嬢もそうするつもりだったのですよね?まるで道具のように扱うつもりだった。だから、あなたは足を引っ掛けるようなことができるのですよ」

 イオリクは何を言っているのだと、唖然とした。

 誰がそんなことを言ったのか。そこまでは妻にしか話していないことで、彼女が話したのか?どうして、そんなことを話したのだ?何か意味があるのか?

「こうは言いたくありませんが、いくら苛立っても、皇帝陛下の番を転ばせようなどとは思わないのですよ」
「それは、あの、彼女が話を聞かないものだから」
「はあ……もしも、彼女が例えば、私の娘だったらどうですか?テイラー嬢と同じことができましたか?」

 アンデュースもイオリクの番への思考もあるが、ミリオン王国の侯爵令嬢であったアイルーンでも辛く当たり、テイラーは元貴族の平民であることも関係しているのだろうと考えた。

「いえ、そのようなことは……」
「まあ、そう思っていたとしても、父親を目の前にしてできますとは言えませんね。質問を間違えましたね」

 他人を勝手に例えるのは良くないだろうと、自分で例えてみたが失敗であった。竜帝国の公爵家よりも上となると、他国の王女と言っても微妙なためでもあった。

 言い例えがなかったとも言える。

「あなたがいくら番に批判的な立場であっても、竜帝国の多くの者は皇帝陛下の大事な番を殺したと解釈します。まあ、外に出れば嫌でも分かることでしょう」
「それは誤解です!」
「あなたには悪意ある些細な行動だったとしても、それによってテイラー嬢は頭を打ち、最期は脳内で出血を起こし、亡くなられました。未来ある17歳でした」

 正しいか分からないが、アイルーンの19歳、テイラーの17歳、足しても長く生きたなんて言えない年である。

「悪意など」
「あなたに自覚がなくとも、こちらは自白剤を使っているのですよ!」

 理解はしているだろうが、敢えて記憶のないイオリクには最初には言わなかった。

「それは、私は許可していないことで……」
「番を殺されたディオエル皇帝陛下の判断です!それ以上の理由が必要ですか!」
「っっっ」

 さすがにイオリクもディオエルの指示だと言われれば、何も言い返せなかった。

「怪我の状況も、死亡確認も皇帝陛下が自身の目で行っております。テイラー嬢は、頭だけでなく、体も打ちつけており、満身創痍の状態だったそうです」

 イオリクはあの光景を思い出し、さすがに目を逸らした。打ちつけた瞬間を見たのは、イオリクだけである。

「あなたにも、番が満身創痍くらい分かりますね?」
「……はい」
「当然ですが、すべて発表をしております」
「っな!」
「あなたは何をしたのか受け止めるといい。手続きをして帰りなさい」

 イオリクはディオエルに会おうと思っていたが、騎士を付けられて、近付くことも許されなかった。

「ディオエル様と話をしたいんだ」
「できません」
「私は側近を外されても、公爵家の人間だ」
「だから何ですか?でしたら、きちんと手続きを取るべきです」

 結局、許されることはなく、皆に怪訝な目で見られる中、イオリクはオイワード公爵邸に帰された。

 邸に着くと、仕事は終わったとばかりに、騎士たちはさっさと帰って行った。

 久し振りに戻ったオイワード公爵邸に、ホッともしたが、いつもよりも鬱蒼としていた。イオリクは、手入れを怠っているのかなと思ったくらいであった。

「ただいま、戻りました」
「おかえりなさいませ」

 邸の扉を開けると、待っていたのは執事であった。それはいつもと変わらないはずだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

殿下、もう何もかも手遅れです

魚谷
恋愛
偉大なる国王が崩御した。 葬儀の場で、王太子アドルフォスは、父王が病床にいるのを良いことに国を思うがままにしようとする、婚約者である公爵令嬢ロザリンデと、その父である宰相を断罪しようと決意する。 全ては自分が次の王に相応しいことを、その場にいる全ての貴族たちに示すため。 アドルフォスは自分の勝利を信じて疑わなかった。 自分には、麗しい子爵令嬢で、数百年に一度生まれる聖女の力に覚醒したエレインという心強い味方がいるのだから。 勝利は揺るぎないはずだった……そう、アドルフォスの頭の中では。 これはひとつの国の終わりの物語。 ★他のサイトにも掲載しております ★13000字程度でサクッとお読み頂けます

婚約破棄されたので、戻らない選択をしました

ふわふわ
恋愛
王太子アルトゥールの婚約者として生きてきた 貴族令嬢ミディア・バイエルン。 だが、偽りの聖女シエナに心を奪われた王太子から、 彼女は一方的に婚約を破棄される。 「戻る場所は、もうありませんわ」 そう告げて向かった先は、 王都から遠く離れたアルツハイム辺境伯領。 権力も、評価も、比較もない土地で、 ミディアは“誰かに選ばれる人生”を静かに手放していく。 指示しない。 介入しない。 評価しない。 それでも、人は動き、街は回り、 日常は確かに続いていく。 一方、王都では―― 彼女を失った王太子と王政が、 少しずつ立ち行かなくなっていき……? 派手な復讐も、涙の和解もない。 あるのは、「戻らない」という選択と、 終わらせない日常だけ。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

【完結】最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります  

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

処理中です...