【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】オイワード公爵家1

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「旦那様と奥様がお待ちです」
「ああ、分かった」

 両親と妻や子どもたちは話をすれば分かってくれるはずだから、イオリクも早く話をしなくてはならないと思っていた。

 待っている部屋に案内をされると、ハイスとキューラが薄暗い部屋で待っていた。

「この度はご迷惑をお掛けしました」
「……ああ」
「座りなさい」
「はい」

 そう言って、イオリクが二人の前に座ると、疲れた様子に心配になった。

「心労を掛けたと思いますが、大丈夫ですか」
「ああ……私はお前に何を言えばいいかすら、もう分からない」
「え?」
「私たちは皇帝陛下にあなたの報告書を見せていただいたの。だから、何もかも知っているの」
「ですが、誤解なのです。私は皇帝陛下のためにと思ったことで、怪我をさせたのはもうしなかったと思いますが……」

 イオリクが説明をしても、ハイスとキューラの表情は変わらなかった。いつもなら、しっかりと理由を聞いてくれるのに、溜息すら吐いている。

「亡くなったことは聞きました、残念なことだったとは思っています……」
「お前にはどうでもいいことだものな、私たちもこんなに過激な考えを持っていたとは思わなかった。せめて、皇帝陛下のそばにいるべきではなかったことは確かだな」
「そうね、その通りだわ」
「何を言っているんですか!ディオエル様に私は必要な存在です!いつも私を評価してくれていたのですよ!」
「危険な思想を持っているとまでは分からないからな」

 ハイスとキューラもイオリクが側近になったことは嬉しかった。尊敬し、敬っていることも良く知っていたからである。

「危険な思想ではありません」
「私は女性を、子どもを産ませる道具だと教えた覚えはありませんよ」

 キューラは怒るではなく、酷く悲しそうな目をしながらイオリクに話した。

「それは……」
「そんな風に思っていたなんてショックでした」
「それは番だからで、女性に思っていたわけではありません」
「番でも何でも、女性は女性です。どうして差別するのですか」
「差別なんて、区別です。妃になった者たちもディオエル様のお子を産みたいと思っているのに、産めなかったのですよ!それなのに、番だからと言ってあっさり妊娠することが許せなかったのです」
「それでも、同じ女性です。私と同じ女性なのですよ?」

 皇帝家は純血種を守るために、番が見付かればいいが、見付からなければ番を探しながら、念のために他の妃を娶らなければならない。

 オイワード公爵家のように、早々に守ることをしなかった家には、分からないほどの苦労があっただろう。

 キューラに分かるのは嫁いで来たという点だけにはなるが、嫁ぐ方も大変だったことくらいは分かる。

 それをお腹を痛めて産んだ子が、自分の思想を押し付け、貶めるような考えを持ち、接していたなんて情けなくて堪らない。

「母上とは違います……」
「前の番を殺したのも、お前が勧めたローズミーのせいではないか。あれがいなければ、既に次代がお生まれになっていたはずだろう?」
「そうですわね、あのように頭のおかしい人たちだったとは思わなかったわ。親ならば止めるべきだったでしょう。いえ、それは私たちにも言えることですわね」
「そうだな」

 イオリクの乳母だったのだから、ハイスとキューラもローズミーのことは良く知らないが、ペジリーのことは知っている。

「ローズミーはディオエル様を想っていたのです!ペジリーは娘の願いを叶えたかっただけで、私と同じで殺す気なんてなかったのです」
「竜帝国史上最悪の殺人犯の親子を庇うのか?」
「竜帝国史上最悪の殺人犯の親子……」

 イオリクは、初めて聞く言葉に驚いた。

「知らなかったのか?竜帝国では二人の名前を呼ぶことも、竜帝国でタブーとされているくらいだ」
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