【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】最期1

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 貴族たちは葬儀に参列したが、シュアリアとエレサーレの配慮によって、亡くなってすぐ、ルーベンスとベルサートとナナリーはギリシスとの亡骸に対面させた。

「相応のことをしたのだから、罵っても、引っ叩いても構わないわ」
「母上……」

 いくら恨んでいても、ルーベンスたちがそのようなことをするはずがない。

 三人の顔を見ると、ルーベンスはギリシスの顔をじっと見つめていたが、ベルサートとナナリーは困ったような顔を浮かべていた。

「痩せましたね……」
「ええ」
「私は亡くなっても許しませんよ」
「当然よ」
「エイク前子爵夫妻には?」
「考えたのだけど、領地にいらっしゃるし、もう貴族ではないから遠慮されるのではないかと思って、それでも早馬は出したわ」

 ソラードとフアナも、シュアリアの予想通りに辞退した。

 貴族ではないというのが大きな理由であったが、亡くなった姿を見て、許す気持ちもなるのも嫌であった。

「そうですか、彼なりに反省をしたと思いましょう」

 亡骸に鞭を打つほど、ルーベンスも若くなかった。それでも、ルーベンスはアイルーンの分も生きなくてはと、健康には気を付けて、83歳で亡くなった。

「母上とアイルーンに会えたかな?」
「ええ、きっと深く頭を下げているわ」
「許しては貰えないだろうな」
「それでも、しっかり説明をして、理解をいただくしかないわね」

 ベルサートとナナリーは、最期は覚悟をしていた。

 そして、誰よりも覚悟をしていたのはルーベンスであった。カイラーとアイルーンにまずは謝らないとならないと、穏やかに笑っていた。

 ルーベンスはあまり起きていられなくなってから、孫夫婦や曾孫たちがお見舞いに来てくれることで、嬉しそうにはしていたが、悲しそうにもしていた。

「アイルーンは一人で、子どもを守ろうとして亡くなったのに、私は幸せ過ぎるな」

 その言葉を聞いたベルサートは、自分もルーベンスだったら、同じように思うだろうと考えて、何も言えなかった。

 ルーベンスはお墓はテイラーの横がいいと言っており、カイラーと自分で、アイルーンとテイラーを守りたいと言い、その言葉通りの場所にした。

 カイラー、アイルーン、テイラー、ルーベンスの並ぶ墓は、幸せそうな家族の姿に見えた―――。

 テイラーとディオエルが亡くなってから、二十年が経った。

「そういえば……ふと思い出したのですが、即位式でディオエル様の魂が、今度は大切な人と結ばれるようにと、番とは言わなかったのはわざとですね?」
「今さらだな」

 アンデュースは随分前のことを言い出すライシードに、どうしたんだと驚いた。

「昨日、姉の孫が婚約者を連れて来て、二人の初々しさを見て思い出したのです」
「そうか。次は番などない世界かもしれない。ディオエルだって、アイルーン嬢とテイラー嬢だって、番には関係なく、恋もするかもしれない」
「そうですね」

 アイルーンとテイラーが同じ魂などは関係なく、番も関係なく、ただ生まれて、三人には好きに生きていって欲しい。

「だがな、何も知らない二人が出会って、結婚したらいいな」
「はい。何のしがらみもなく、出会って、小さな家でも、お金に困っても、そんな生活でも、二人が一緒にいてくれたら、嬉しいですね」
「お金がなくても?」
「そんな生活でも笑っていられるのならいいなと……」
「ライシードはロマンチストだったのだな」

 ライシードは初めて言われたことに、少し恥ずかしい気持ちよりも、驚く気持ちの方が強かった。


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お読みいただきありがとうございます。

明日、最終日も1日2話、投稿させていただきます。
ただ、最終話はとても短いです。

最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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