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【テイラー】シュアリア王妃陛下1
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「アイルーンの記憶としては、お久しぶりでございます」
「ええ、本当に…」
まるであの頃のいつも落ち着いていたアイルーンが、挨拶しているかのようで、シュアリアは胸に詰まるものを感じた。
「王妃として、あなたの辛い環境に気付けなかったことを謝罪いたします」
シュアリアは小さくではあるが、頭を下げた。
「いいえ、王妃陛下が謝ることはございません」
「ミリオン王国としても、同じ女性としても、あってはならないことです」
「ミリオン王国が関与したわけではありません。そして、境遇には不満はありませんでした」
「そう…なの?」
いくら自国ではないとはいえ、侯爵家では至れり尽くせりだった令嬢であったアイルーンには、辛いことだったのだろうと思っていた。
「はい。監視されているのはとても嫌でしたが、それ以外は許容が出来るものでした。ひっそりと暮らしたいと願ったのは、アイルーン自身でしたから」
「危険はなかったの?」
侍女も護衛も付けず、他国に嫁ぐことはどれだけ心細かったかと考えていた。
「正直、アイルーンは殺されるとは思っていなかったのです」
「それはそうよね」
「皇帝の番だから、大丈夫だろうと思っていたのです」
「そう、なのね…」
その言葉は皇帝に価値があるからで、アイルーンには価値など一切ないような思いに、再び胸に詰まるものを感じた。
きっとだからこそ境遇にも、多くを求めなかったのだろう。
そして、殺されるようなことはないということだけが、アイルーンの安心だったのかもしれない。だが、それがあったことで、ビクビク怯えながら暮らすことがなかったのなら、良かったのかもしれない。
だが、最後に殺されてしまったのならば、何の意味もなさない。
「でも…殺された記憶があるのよね?」
「はい」
テイラーはまっすぐにシュアリアを見つめて、しっかりと頷いた。
シュアリアも聞いてはいたはずが、同じ瞳の色のテイラーに直接言われると、思いわず息をのんでいた。
「…安心して、詳しく聞く気はありませんから」
「ありがとうございます」
「その記憶は、テイラー嬢だけのものだもの」
「相手の立場を考えることの出来る王太子殿下は、王妃陛下に似られたのですね」
「そうかしら?」
「はい、そう思います」
アイルーンとしても、テイラーとしても、シュアリアには悪い印象は一切持っていなかった。
だが、息子であるエレサーレは関わったこともなかったために、どのような人物か分からなかった。
あの時に接しただけであったが、その場の状況を読み、自分の立場をちゃんと理解して、自分ではない立場になって考える姿に、ギリシスではなくシュアリアに似たのだと実感していた。
「では、もしもテイラー嬢が誰かに話したくなった時は、私に話をしに来て頂戴」
「ですが」
「お願いよ、抱えきれなくなった時でも、辛くて苦しい時でも、王子や王女の母親でもあるけど、ミリオン王国の母であると思ってもいるの」
「ありがとうございます、承知いたしました」
シュアリアはアイルーンには悪い印象を持たれるほど、接していなかったために、嫌われていることはないだろうけどとは思いながら、緊張もあった。
「それで、正直な気持ちを答えて欲しいのだけど…」
「はい」
「竜帝国から、疑わしい者は見付かりはしたけど、証拠がないために自白剤を使う際に、立ち会って貰えないかということなんだけど…」
「自白剤、そうですか…」
テイラーも今でも証拠が運良く残っている、犯人が大事に持っているとは思ってはいなかった。
自白剤も皇帝だから、出来ることではあるだろう。
竜帝国には二度と行きたくはなかったが、犯人がどのような言い訳をするのか、犯人から正直な殺害動機を聞いてみたいとは思っていた。
「ええ、本当に…」
まるであの頃のいつも落ち着いていたアイルーンが、挨拶しているかのようで、シュアリアは胸に詰まるものを感じた。
「王妃として、あなたの辛い環境に気付けなかったことを謝罪いたします」
シュアリアは小さくではあるが、頭を下げた。
「いいえ、王妃陛下が謝ることはございません」
「ミリオン王国としても、同じ女性としても、あってはならないことです」
「ミリオン王国が関与したわけではありません。そして、境遇には不満はありませんでした」
「そう…なの?」
いくら自国ではないとはいえ、侯爵家では至れり尽くせりだった令嬢であったアイルーンには、辛いことだったのだろうと思っていた。
「はい。監視されているのはとても嫌でしたが、それ以外は許容が出来るものでした。ひっそりと暮らしたいと願ったのは、アイルーン自身でしたから」
「危険はなかったの?」
侍女も護衛も付けず、他国に嫁ぐことはどれだけ心細かったかと考えていた。
「正直、アイルーンは殺されるとは思っていなかったのです」
「それはそうよね」
「皇帝の番だから、大丈夫だろうと思っていたのです」
「そう、なのね…」
その言葉は皇帝に価値があるからで、アイルーンには価値など一切ないような思いに、再び胸に詰まるものを感じた。
きっとだからこそ境遇にも、多くを求めなかったのだろう。
そして、殺されるようなことはないということだけが、アイルーンの安心だったのかもしれない。だが、それがあったことで、ビクビク怯えながら暮らすことがなかったのなら、良かったのかもしれない。
だが、最後に殺されてしまったのならば、何の意味もなさない。
「でも…殺された記憶があるのよね?」
「はい」
テイラーはまっすぐにシュアリアを見つめて、しっかりと頷いた。
シュアリアも聞いてはいたはずが、同じ瞳の色のテイラーに直接言われると、思いわず息をのんでいた。
「…安心して、詳しく聞く気はありませんから」
「ありがとうございます」
「その記憶は、テイラー嬢だけのものだもの」
「相手の立場を考えることの出来る王太子殿下は、王妃陛下に似られたのですね」
「そうかしら?」
「はい、そう思います」
アイルーンとしても、テイラーとしても、シュアリアには悪い印象は一切持っていなかった。
だが、息子であるエレサーレは関わったこともなかったために、どのような人物か分からなかった。
あの時に接しただけであったが、その場の状況を読み、自分の立場をちゃんと理解して、自分ではない立場になって考える姿に、ギリシスではなくシュアリアに似たのだと実感していた。
「では、もしもテイラー嬢が誰かに話したくなった時は、私に話をしに来て頂戴」
「ですが」
「お願いよ、抱えきれなくなった時でも、辛くて苦しい時でも、王子や王女の母親でもあるけど、ミリオン王国の母であると思ってもいるの」
「ありがとうございます、承知いたしました」
シュアリアはアイルーンには悪い印象を持たれるほど、接していなかったために、嫌われていることはないだろうけどとは思いながら、緊張もあった。
「それで、正直な気持ちを答えて欲しいのだけど…」
「はい」
「竜帝国から、疑わしい者は見付かりはしたけど、証拠がないために自白剤を使う際に、立ち会って貰えないかということなんだけど…」
「自白剤、そうですか…」
テイラーも今でも証拠が運良く残っている、犯人が大事に持っているとは思ってはいなかった。
自白剤も皇帝だから、出来ることではあるだろう。
竜帝国には二度と行きたくはなかったが、犯人がどのような言い訳をするのか、犯人から正直な殺害動機を聞いてみたいとは思っていた。
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