【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
54 / 344

【テイラー】寵妃1

しおりを挟む
 次と言えば、ローズミーしかいない。

 現在のローズミーの状況をテイラーが知っているはずもなく、説明をしなければならないと思った。

「実はローズミーは、病を患っているんだ」
「いつ頃からですか?」
「15年前くらいからだ。出産をしてから、まともな状態ではないんだ」
「出産は、したのですね?」

 その言葉にアイルーンは出来なかったのに、ローズミーはしたのかという意味を感じ、ディオエルは言葉に詰まった。

「っ、ああ、死産であった」
「そうですか」
「それから、精神的にも肉体的にもおかしくなっている。自白剤を打つことは可能だが、きちんと話せるかは分からない」

 ローズミーに関しては罪を犯していれば自白剤に相当はするが、どうなるか分からないというのが医師の見解であった。

「とりあえず呼んでください、見てみたいです」

 まるで見学するかのような声色で、答えた。

 そして、テイラーの冷静な態度に、引っ張られるようにルーベンスは、ようやくあることに気付いた。

「テイラー嬢、質問してもいいだろうか」
「もしかして、気付きましたか?気付いたなら、まだ言わないでください」
「あ、ああ、そうか」
「ええ」

 テイラーとルーベンスは、頷き合っていたが、ディオエルを含めた周りは何だろうかとは思ったが、聞いても答えて貰ないことは分かっていたので、問うことはしなかった。

「ローズミーを、呼んでくれ」

 ディオエルはローズミーはどうするかと思っていたが、見て貰えば、テイラーもデリア侯爵も分かるだろうと、ローズミーを呼ぶことにした。

 連れて来られたローズミーは、デリア侯爵とテイラー以外には、見慣れた相変わらずの状態であった。

 51歳とすら思えない風貌で、今日もピンクを着ているが、老婆がピンクのドレスを着ているようにしか見えない。

 デリア侯爵は初めてだろうが、テイラーは変わりように誰か分からないのではないか、どちらにしろ、二人とも驚くだろうと思っていた。

 だが、二人は冷たい視線でローズミーを見つめていた。

 ローズミーは沢山の人がいるのに、ディオエルしか目に入っていないように、側に行こうとしたが、いつものごとく足が縺れて、しゃがみ込んでしまった。

「ディオ、エルゥ」
「座らせろ」

 護衛によってローズミーは座らされたが、背中は丸まっている。

「何なのぉ」
「ペジリーとラオイ医師が、アイルーン・デリアの血を抜き、死に至らしめたことを自白した」
「えぇ?」

 ローズミーは呆けたような表情をして、首を傾けている。

「ローズミーも、関わっていると聞いている」
「私は関係ないわ~」

 ディオエルはローズミーが、どういった思考なのか分からないので、あっさりと認めることも期待していたが、ローズミーは否定した。

「アイルーンの血を抜いていたことも、知らないのか?」
「知らないわ、血って何かしら」

 ローズミーは首を左右に傾けながら、答えている。

「ペジリーは、お前のためにやったと言っていたぞ?」
「嘘なんじゃないかしら?」
「輸血されたこともないのか?」
「ないわ、どうして私がそんなことをしなくてはならないの?」

 ローズミーは不思議そうな顔をして、口を尖らせており、老婆の姿とあまりにもミスマッチであった。

「疑似番になるためだろう?」
「疑似番?そんなことをしなくても、私はディオエルに愛されているもの」
「疑似番は知っているんだな?」
「えっ」

 初めてローズミーはその言葉に、視線を下げた。

「関係はしていないが、疑似番は知っているんだな?」
「どうしたの、ディオエルゥ。そんなこと、どうでもいいじゃない!」

 その言葉にディオエルもカッとなったが、それ以上に怒りを持ったのはルーベンスであった。立ち上がって、ローズミーを凄まじい形相で睨み付けていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

処理中です...