【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
53 / 344

【テイラー】自白剤5

しおりを挟む
 ローズミーの妊娠は国内にも発表しておらず、ミリオン王国にいるテイラーには知ることの出来ないことであった。

「そうですか、ありがとうございます」

 テイラーは満足そうに頷き、再び同じ姿勢に戻った。

 ルーベンスも、子どものことは知らなかったが、アイルーンの血で妊娠が出来たということになるのだろうと、腹を立てていた。

「陛下、医師の方でもいいのですが、先程の疑似番?というのは事実なのですか?」
「カーズ、答えてくれるか?」
「はい。200年は前の話になると思いますが、番ではない相手と子どもが欲しいと望んでいた方たちが、番の成分を取り込めばいいのではないかと考えたそうです。それで、輸血が行われました」
「血液型などは関係ないのか?」

 ディオエルは、二人共の血液型を知らなかったが、ふと疑問に思った。

「いえ、関係しています。ですので、番から輸血が出来る血液型の方のみとしていたそうです」

 いくら子どもが欲しくとも、輸血が禁止されている血液型の相手の血を輸血すれば、自分の身が危ない。

「なるほど、では…二人は同じだったのか…?」

 ディオエルはテイラーを見たが、テイラーはディオエルの方を見ておらず、話にも興味が無さそうであった。

「ローズミーという方は何型ですか?」

 質問をしたのは、ルーベンスだった。

「B型でございます」
「アイルーンはO型です、可能ですか?」
「はい…B型への輸血は可能です」

 カーズは血液型が違っていれば、起こり得なかったと思い、悲痛な思いであった。

 だが、逆にローズミー妃、ペジリー夫人、ラオイは輸血が出来ることを、幸運だと感じたのだろうと思うと、怒りが湧いた。

「そうですか」
「はい…当初は妊婦ではなく、番の血を輸血していたそうです。ゼロかは分かりませんが、妊娠することはなかったようです。そして、今度は妊婦の番の血を輸血すると、妊娠する者が出て来るようになりました。ですが、先程も言いましたように、妊娠した者はいたようですが、妊娠が継続されなかったり、死産だったそうです」
「ひとりもいないのか?」
「文献にはそう書いてありました」

 当時のことであり、今では間違った歴史であるために、隠された事実もあるのかもしれないが、カーズが読んだ文献にはそう書いてあった。

「そうか、それを実践したのか…」
「同じ医師として恥ずかしいことですが、そういうことだと思います。今となっては神の領域、番の領域を犯してはならないというくらいの話です」

 試そうなどと思う者がこれまでもいなかったとは言えないが、王宮の医師が、皇帝の子を妊娠している番に行おうと考えるようなことではなく、ラオイは異常だと判断していた。

「デリア侯爵、何か質問はあるだろうか?」
「アイルーンの貧血は、血を抜かれていたせいだということですね」
「詳しくはカルテがあるようなので、確認してからにはなりますが、話を聞く限り、そう考えて差し支えないと思います」
「そう、ですか」

 ルーベンスは言葉に詰まりながら、唇を噛み締めて、下を向いた。

 ディオエルはデリア侯爵の姿に、己の様々な判断を後悔しているのだろうと、強く感じていた。

 ペジリーもラオイも殺す気はなかったなどと言っていたが、殺す可能性のある行為をしていたことには間違いなく、間違っても事故などではない。

 テイラーの言った、『アイルーン・デリアは腹の子と共に殺されている』が、全てである。

「テイラー嬢、ペジリーとラオイのことは分かっていたのだろうか?」

 ディオエルは意を決して、驚く様子を感じなかったテイラーに確認をしようと、質問をすることにした。

「まだ途中ではありませんか?私は、事実を知りたいのです。ですから、まだ何も話すつもりはありません」
「そ、うか」
「次は誰ですか?」
「次…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

ハッピーホワイトデー!
バレンタインにお読みいただいた、無理矢理のお返しということで、
本日は、1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。

そして、同時刻より新しいお話「永遠の愛にはイロドリを」を投稿をしております。
よろしければ、お読みいただければと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下、もう何もかも手遅れです

魚谷
恋愛
偉大なる国王が崩御した。 葬儀の場で、王太子アドルフォスは、父王が病床にいるのを良いことに国を思うがままにしようとする、婚約者である公爵令嬢ロザリンデと、その父である宰相を断罪しようと決意する。 全ては自分が次の王に相応しいことを、その場にいる全ての貴族たちに示すため。 アドルフォスは自分の勝利を信じて疑わなかった。 自分には、麗しい子爵令嬢で、数百年に一度生まれる聖女の力に覚醒したエレインという心強い味方がいるのだから。 勝利は揺るぎないはずだった……そう、アドルフォスの頭の中では。 これはひとつの国の終わりの物語。 ★他のサイトにも掲載しております ★13000字程度でサクッとお読み頂けます

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

婚約破棄されたので、戻らない選択をしました

ふわふわ
恋愛
王太子アルトゥールの婚約者として生きてきた 貴族令嬢ミディア・バイエルン。 だが、偽りの聖女シエナに心を奪われた王太子から、 彼女は一方的に婚約を破棄される。 「戻る場所は、もうありませんわ」 そう告げて向かった先は、 王都から遠く離れたアルツハイム辺境伯領。 権力も、評価も、比較もない土地で、 ミディアは“誰かに選ばれる人生”を静かに手放していく。 指示しない。 介入しない。 評価しない。 それでも、人は動き、街は回り、 日常は確かに続いていく。 一方、王都では―― 彼女を失った王太子と王政が、 少しずつ立ち行かなくなっていき……? 派手な復讐も、涙の和解もない。 あるのは、「戻らない」という選択と、 終わらせない日常だけ。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります  

処理中です...