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【テイラー】共犯者
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「イオリクが転ばせたと?」
「はい、どうなってなのかは聞きそびれたのですが、そう申しておりました」
「テイラー嬢の行為から、嘘だとは分かっていたが……イオリクが目の前にいなくて良かった」
ディオエルの手は、自分でも抑えきれず、怒りで震えていた。
「まさに彼女が自分の力で、一矢報いたのでしょう」
「一矢ですか?」
シュアリアだけは何の話か分からず、困惑の表情を浮かべた。
「母上、テイラー嬢はイオリク殿の目に自分の血を塗り付けたそうです」
「え、そうなの?」
シュアリアは若い女性と、そんな激しいやり取りがあったのかと、テイラーを思うとまた胸が苦しくなった。
「おそらく、あまり動けない彼女に出来る最大の一矢だったのだろう。ローズミーたちの時は、睡眠薬の影響で動けなかったと言っていた……だから」
ディオエルはそう言いながらも、今度はやり返した。それは、アイルーンのように亡くなってしまうような気がして、言葉が続かなかった。
そのことを、皆も言葉にせずとも分かっていた。
「ディオエル様、謝罪に伺ってみましょう。まずは行ってみませんと、こちらも責任の取りようがありません」
「そうだな……謝罪をしなければならないな」
「エレサーレ、一緒に行って頂戴」
「承知いたしました」
「私はギリシスに話をします。皇帝陛下、よろしいでしょうか」
流石にもう黙ってはいられないと、シュアリアも判断した。
「ああ、そうだな。何を言ったのか、何をしたのか聞いてくれ。後、イオリクが暴れでもしたら、殴りつけて貰って構わない」
「承知いたしました」
イオリクを押し込んだ貴族牢は、しっかり鍵を掛けているが、念のために屈強な騎士も付けている。
ディオエル、ライシード、エレサーレ、護衛たちはデリア侯爵邸に向かうことになった。ディオエルがデリア侯爵邸に行くのは、アイルーンの時以来である。
見送ったシュアリアは、ギリシスに付けていた監視を外して、執務室に乗り込むと、マフスもおり、丁度いいと判断した。
「国王陛下、あなたは何をしましたか」
「何だ、急に」
シュアリアの鋭い目つきに、心当たりのあるギリシスはたじろいだ。
「身に覚えがあるでしょう?宰相も共犯なのかしら?」
「いいえ!私は聞いて驚いていたところでございます」
「何を?」
「エイク子爵にテイラー嬢がディオエル皇帝陛下の番に選ばれたから、嫁ぐように説得して欲しいと手紙を送ったと」
「当然のことだろう!どちらにせよ、話をしなければならない」
シュアリアはそんなこともしていたのかとは思ったが、今はエイク子爵は後回しである。
「イオリク様に何を言いました?何を言われました?」
「彼は戻って来たのか?」
ホテルから戻って来たら、話をしに来るだろうと思っていたが、姿を現さないことから、難航しているのではないかと考えていた。
「あなたがホテルの場所を教えたのですね?」
「それは……失敗したのか?」
「何の失敗ですか!」
まるで暗殺を指示したような、そんな気持ちになったシュアリアは怒鳴り付けた。
「だから、イオリク様はあの娘を皇帝陛下の番になるように説得しに行ったんだ。やはり上手くいかなかったのか?」
いくら脅しても、そう簡単には首を縦に振らないのではないかと思っていた。
帰国の準備もあるために、イオリクが戻って来ないようなら、滞在を一日延ばしてはどうかと皇帝陛下に話をしようかと、考えているところであった。
「テイラー嬢は、現在!イオリク様に転ばされたことで、大怪我を負い、昏睡状態です!非常に危険な状態です!」
「な、なんだと…」
「誠のことですか?」
「こんな嘘を私が、冗談でも付くはずがないでしょう!」
シュアリアの目には涙が溜まっており、ギリシスとマフスも声が出なかった。
「はい、どうなってなのかは聞きそびれたのですが、そう申しておりました」
「テイラー嬢の行為から、嘘だとは分かっていたが……イオリクが目の前にいなくて良かった」
ディオエルの手は、自分でも抑えきれず、怒りで震えていた。
「まさに彼女が自分の力で、一矢報いたのでしょう」
「一矢ですか?」
シュアリアだけは何の話か分からず、困惑の表情を浮かべた。
「母上、テイラー嬢はイオリク殿の目に自分の血を塗り付けたそうです」
「え、そうなの?」
シュアリアは若い女性と、そんな激しいやり取りがあったのかと、テイラーを思うとまた胸が苦しくなった。
「おそらく、あまり動けない彼女に出来る最大の一矢だったのだろう。ローズミーたちの時は、睡眠薬の影響で動けなかったと言っていた……だから」
ディオエルはそう言いながらも、今度はやり返した。それは、アイルーンのように亡くなってしまうような気がして、言葉が続かなかった。
そのことを、皆も言葉にせずとも分かっていた。
「ディオエル様、謝罪に伺ってみましょう。まずは行ってみませんと、こちらも責任の取りようがありません」
「そうだな……謝罪をしなければならないな」
「エレサーレ、一緒に行って頂戴」
「承知いたしました」
「私はギリシスに話をします。皇帝陛下、よろしいでしょうか」
流石にもう黙ってはいられないと、シュアリアも判断した。
「ああ、そうだな。何を言ったのか、何をしたのか聞いてくれ。後、イオリクが暴れでもしたら、殴りつけて貰って構わない」
「承知いたしました」
イオリクを押し込んだ貴族牢は、しっかり鍵を掛けているが、念のために屈強な騎士も付けている。
ディオエル、ライシード、エレサーレ、護衛たちはデリア侯爵邸に向かうことになった。ディオエルがデリア侯爵邸に行くのは、アイルーンの時以来である。
見送ったシュアリアは、ギリシスに付けていた監視を外して、執務室に乗り込むと、マフスもおり、丁度いいと判断した。
「国王陛下、あなたは何をしましたか」
「何だ、急に」
シュアリアの鋭い目つきに、心当たりのあるギリシスはたじろいだ。
「身に覚えがあるでしょう?宰相も共犯なのかしら?」
「いいえ!私は聞いて驚いていたところでございます」
「何を?」
「エイク子爵にテイラー嬢がディオエル皇帝陛下の番に選ばれたから、嫁ぐように説得して欲しいと手紙を送ったと」
「当然のことだろう!どちらにせよ、話をしなければならない」
シュアリアはそんなこともしていたのかとは思ったが、今はエイク子爵は後回しである。
「イオリク様に何を言いました?何を言われました?」
「彼は戻って来たのか?」
ホテルから戻って来たら、話をしに来るだろうと思っていたが、姿を現さないことから、難航しているのではないかと考えていた。
「あなたがホテルの場所を教えたのですね?」
「それは……失敗したのか?」
「何の失敗ですか!」
まるで暗殺を指示したような、そんな気持ちになったシュアリアは怒鳴り付けた。
「だから、イオリク様はあの娘を皇帝陛下の番になるように説得しに行ったんだ。やはり上手くいかなかったのか?」
いくら脅しても、そう簡単には首を縦に振らないのではないかと思っていた。
帰国の準備もあるために、イオリクが戻って来ないようなら、滞在を一日延ばしてはどうかと皇帝陛下に話をしようかと、考えているところであった。
「テイラー嬢は、現在!イオリク様に転ばされたことで、大怪我を負い、昏睡状態です!非常に危険な状態です!」
「な、なんだと…」
「誠のことですか?」
「こんな嘘を私が、冗談でも付くはずがないでしょう!」
シュアリアの目には涙が溜まっており、ギリシスとマフスも声が出なかった。
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