【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】焦慮

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 シュアリアは情けない夫に、ほとほと嫌気が差したが、ディオエルから追及されれば、小心者も逃げられないと分かるだろう。

「行こうか」
「はい」

 ディオエルたちとシュアリアは、ギリシスの元へと向かった。エレサーレにも先に話をしているから、分かったら来るように伝えてもらうことにした。

「失礼する。話を聞かせて貰おうか」

 そう言いながら、入室したディオエルはあまりに冷たい表情であった。

「あっ、あの」
「早く座ってくれ」

 ギリシスは、恐る恐るディオエルの前に座った。シュアリアはギリシスのそばにいるのも嫌だったので、立ったままエレサーレが来ることを待とうと思った。

 マフスはギリシスの斜め後ろに、神妙な面持ちで立った。

「文は見せて貰ったが、あれはイオリクの言ったことであろう?そなたが彼女のホテルを教えたり、彼女の両親に圧力を掛けようとしたことが書かれていなかったが?」
「それは……」
「イオリクに頼まれたと言うのか?」
「そうです!聞かれたので」
「教えなければいいだろう」
「ですが」
「そなたは国王だろう?イオリクの願いなど断れば良かった!」

 シュアリアもマフスも、その通りだと思った。ギリシスならば、イオリクの願いも断ることができる。

「その……」
「そなただけのせいではないが、そなたが手引きし、テイラー嬢をあんな目に遭わせることになったんだ!」
「っ、そのようなことは」
「そなたがホテルを教えなければ、イオリクは会うことはできなかった。そうじゃないか?違うか?答えてみろ」

 凄むディオエルに、ギリシスは汗が止まらなかった。

「ですが」
「そなたが指示でもしたのか?」
「ち、違います!」
「そなたなら止められたにもかかわらず、進んで協力をしたのだろう?」
「っい、いえ」
「では、止めたのか?」
「っあ、注意はしたような……ははっ」

 追い詰められつつあったギリシスは、最低なことにこのような場で笑った。

「どうして笑った?何を笑うことがある?お前にとっては笑えるようなことがあるのか?」

 ギリシスの苦笑いに、ディオエルは捲し立てながら目を吊り上げた。

「い、いえ、申し訳ございません」

 あまりの形相にギリシスはすぐさま、頭を下げた。シュアリアはその様子に、目をギュッと瞑り、頭を殴って昏倒させたくなった。

「誰への謝罪だ?」
「っえ、それは、もちろん皇帝陛下へでございます」

 その言葉に、シュアリアはこの人は本当に何も分かっていない。誰が傷付いたのかも、今でも分かっていない。

 マフスもディオエルが何を言いたいか分かり、こちらも殴りつけてやりたい気持ちであった。

「今回の件で、傷付けられたのは誰だ!」
「っあ、そ、あ」

 ようやく、謝るべき相手は分かったが、テイラーに謝るのは、イオリクと同じで、嫌であった。

「そんなことも分からないのか!分からないから、こんなことが出来るんだよな?」
「いいえ、誤解です」
「何が誤解なんだ!そもそも、イオリクは王宮からどうやって出たんだ?それもお前が教えたのか?」
「っあ」

 シュアリアも同じことを考え、使用人たちの出入り口をギリシスが教えたのだろうと思った。通行証を渡して、通らせたのだろう。

「調べれば分かることだろう?王妃陛下」
「その通りです」
「お、お前」

 シュアリアは目も合わせずに、首を振った。

「手引きをしたことは間違いない。他に何をしたか正直に話せ」
「私はイオリク様に従っただけです」

 その言葉にディオエルは、ギリシスの書いた文について思い出した。

「そういえば、私も知っていたと思っていたと書いてあったな?」
「そうです、てっきりご存知の上だと思い、ですから」
「お前は本当に何も見えていないのだな。イオリクは、まだ本人は知らないが、帰国後に側近も外されることになっていた」
「えっ」

 ギリシスはその言葉に、さすがに血の気が引いた。
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