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【テイラー】報告書1
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「そうか……駆け付けたデリア侯爵にも、その娘が抵抗するからと言ったそうだ」
「っな」
「認めているではありませんか」
「ああ、アレの言いそうなことだ」
その後の報告にも〈抵抗したテイラーが悪い。私は悪くない。殺そうと思ったわけではない。次代を産ませなければいけないのに、殺そうなどと思うはずがない。それなのに、あの女は、私が死ねば、あなたはどんな待遇になるのでしょうねと、自分の立場も弁えずに馬鹿にした〉とあった。
テイラーがどこまで本気だったのか分からないが、死を意識したことに、誰しもが胸が苦しかった。
〈テイラーは自身の流れ出た血をすくって、自分の右目に擦り付けた。おかげで右目がよく見えない。早く治療をして欲しい。私も被害者だ〉ともあった。
「カーズ医師、目がはどうだ?」
「見え辛くなっているようです。目の中に吸収させたのが良かったのだと思います。治療はする気はございません」
明らかに、見えなくなったことを擁護する言葉であった。
「それでいい、当然の報いだ」
「はい」
元より治療をする気はなかったが、テイラーがイオリクに怪我をさせられた、そして亡くなったと聞いて、ショックだった。
テイラーと過ごした時間は少なかったが、人生で幾度とはない濃い時間だった。
彼女の強い意志を持ちながらも、どこか愁いを帯びたレッドブラウンの瞳は、忘れることはないだろう。
医師として血には興味があったが、きっと解明するようなことではない。疑似番などを行わなければ、害になるわけでもない。
だが、彼女、アイルーンとしても、テイラーとしても、イオリクには思うところがあったはずだ。
アイルーンにはあまりに多くの人間が間違いを犯した。
だが、テイラーには誰しもが真摯に対応をして、受け止めた。だが、イオリクは二人に対して行った、やり返さない理由がない。
「テイラー様にしかできない抵抗というべき、反撃をなされたのでしょう」
「ああ、私もそう思った。目が一番、効果的なのだろうと思っていたが、デリア侯爵によると、輸血のように血が巡ることはなく、目は露出しており、吸収率が良く、皮膚などのように再生しないそうだ。だが、両目でも足りない」
「はい……」
イオリクはレッドブラウンの瞳に関して、何も知らない。誰も告げることもないかもしれない。
どちらにしろ、二度と解毒薬は作ることはできなくなったために、治ることはなくなったとも思った。
ディオエルのような竜種だったら、効果はなかったかもしれないが、イオリクには効果があったと言っていい。むしろ、悪化すればいい。見えなくなればいい。
「片目ではなく、両目でも良かったと思います」
「ああ、その通りだな。何も見えていないアレに、目など必要ないだろう」
「はい!」
カーズ医師はざまあみろと思いはしたが、こんなことでは足りないくらいだ。
イオリクが、なぜそのようなことをしたのかには〈自分はディオエル様と同じように生きられない。私はディオエル様の世が長く続くように、守られなければならない。それが使命だった。だから間違ったことはしてない〉とあった。
ディオエルのためと言いながらも、結局は自分のためが大いに含まれていた。
「テイラー嬢には、私に許可を得ていると言っていたそうだ」
「っな!そのようなことを」
自白剤を使っても、質問に答える形なので、あの時のすべて、何を言ったかなど話すというわけではない。
「それは、イオリクは皇帝陛下に罪を着せるつもりだったのかとも取れます!」
「そうです!」
騎士団長も、騎士団員もテイラーのたった一つの願いを皆も聞いている。意を汲みたいというディオエルの気持ちも、理解もしている。だが、許せるものではない。
だからこそ、使えると判断していた。
「っな」
「認めているではありませんか」
「ああ、アレの言いそうなことだ」
その後の報告にも〈抵抗したテイラーが悪い。私は悪くない。殺そうと思ったわけではない。次代を産ませなければいけないのに、殺そうなどと思うはずがない。それなのに、あの女は、私が死ねば、あなたはどんな待遇になるのでしょうねと、自分の立場も弁えずに馬鹿にした〉とあった。
テイラーがどこまで本気だったのか分からないが、死を意識したことに、誰しもが胸が苦しかった。
〈テイラーは自身の流れ出た血をすくって、自分の右目に擦り付けた。おかげで右目がよく見えない。早く治療をして欲しい。私も被害者だ〉ともあった。
「カーズ医師、目がはどうだ?」
「見え辛くなっているようです。目の中に吸収させたのが良かったのだと思います。治療はする気はございません」
明らかに、見えなくなったことを擁護する言葉であった。
「それでいい、当然の報いだ」
「はい」
元より治療をする気はなかったが、テイラーがイオリクに怪我をさせられた、そして亡くなったと聞いて、ショックだった。
テイラーと過ごした時間は少なかったが、人生で幾度とはない濃い時間だった。
彼女の強い意志を持ちながらも、どこか愁いを帯びたレッドブラウンの瞳は、忘れることはないだろう。
医師として血には興味があったが、きっと解明するようなことではない。疑似番などを行わなければ、害になるわけでもない。
だが、彼女、アイルーンとしても、テイラーとしても、イオリクには思うところがあったはずだ。
アイルーンにはあまりに多くの人間が間違いを犯した。
だが、テイラーには誰しもが真摯に対応をして、受け止めた。だが、イオリクは二人に対して行った、やり返さない理由がない。
「テイラー様にしかできない抵抗というべき、反撃をなされたのでしょう」
「ああ、私もそう思った。目が一番、効果的なのだろうと思っていたが、デリア侯爵によると、輸血のように血が巡ることはなく、目は露出しており、吸収率が良く、皮膚などのように再生しないそうだ。だが、両目でも足りない」
「はい……」
イオリクはレッドブラウンの瞳に関して、何も知らない。誰も告げることもないかもしれない。
どちらにしろ、二度と解毒薬は作ることはできなくなったために、治ることはなくなったとも思った。
ディオエルのような竜種だったら、効果はなかったかもしれないが、イオリクには効果があったと言っていい。むしろ、悪化すればいい。見えなくなればいい。
「片目ではなく、両目でも良かったと思います」
「ああ、その通りだな。何も見えていないアレに、目など必要ないだろう」
「はい!」
カーズ医師はざまあみろと思いはしたが、こんなことでは足りないくらいだ。
イオリクが、なぜそのようなことをしたのかには〈自分はディオエル様と同じように生きられない。私はディオエル様の世が長く続くように、守られなければならない。それが使命だった。だから間違ったことはしてない〉とあった。
ディオエルのためと言いながらも、結局は自分のためが大いに含まれていた。
「テイラー嬢には、私に許可を得ていると言っていたそうだ」
「っな!そのようなことを」
自白剤を使っても、質問に答える形なので、あの時のすべて、何を言ったかなど話すというわけではない。
「それは、イオリクは皇帝陛下に罪を着せるつもりだったのかとも取れます!」
「そうです!」
騎士団長も、騎士団員もテイラーのたった一つの願いを皆も聞いている。意を汲みたいというディオエルの気持ちも、理解もしている。だが、許せるものではない。
だからこそ、使えると判断していた。
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