【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】報告書3

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「テイラー様の意思を、大事にしましょう」
「ああ、それが最優先だ」
「「「はい!」」」

 ライシードから連絡はもらっていたが、ディオエルはテイラーの意志を尊重するつもりであることを、本人の口から聞き、再度しっかりと受け止めた。

「今、アレはどうしている?」
「まだ自白剤の影響が治まっておりませんが、静かにしておりましたよ」

 現在は自白剤を使った後ということもあるが、一人きりの環境に喚いていたのは最初だけだった。誰もイオリクを擁護するような者は、そばにいない。

「あと、どれくらいで元に戻る?」
「2、3日というところでしょうか」
「そうか、オイワード公爵家の方は?」
「公爵夫妻は、大人しくしております。監視も付けております」

 イオリクが牢にいることは一部しか知らず、オイワード公爵も会いに来たなどと言えば、皇帝宮にはおらず、事件を起こしたことを公表することであるために、動くことはできない。

 ディオエルに盾突いてまで、イオリクを助けようという者は家族くらいしかいないだろう。

「ですが、イオリクの妻は子どもを連れて、離縁して出て行ったようです」
「そうか」

 イオリクには娘と息子がいる。

 おそらくミリオン王国で事件を起こしたと聞き、ディオエルがなかなか戻らないということから、重く受け止めた公爵が念のために妻子を逃がしたのだろう。

 侯爵も妻子たちもイオリクが戻って来て、問題がなければ、また再婚すればいいと思っているはずである。

 イオリクの性格からして、妻子にも自分の意見を話しているだろう。

 本人たちから聞いたわけではないが、イオリクは妻のことを一番の理解者だと言っていた。おそらく同じような考えを持っていると思われる。だが、事件自体には関わりようのないことである。

 そもそも、イオリクの言動は結婚する前からである。妻子によって変わったわけではない。

 イオリクと相思相愛で結婚していることから、同じ考えを持っていたのか。同じように考えるようになったのだろう。

 どちらにしろ、事件が公になれば、元でもイオリクの家族だという目で見られるだろう。何もしなくても、勝手に罰になるだろう。

「呼び出すことは可能です。話を聞きますか?」

 離縁して逃がしたことは、勝手にしてと思ったが、大人しく実家の伯爵家に帰っていることは把握している。

 名ばかりの伯爵家であるために、追い詰めるのは簡単である。

 だが、イオリクの妻子ということから、会ったことのある者たちは家族仲は良いことから、似たような性格をしているのだろうと思っていた。

「いや、おそらくは必要ないだろう」

 テイラーもいくら同じ考えでも、アイルーンの時と同じで、妻子まで罪に問うことは望まないだろう。

「ではあちらから何か言ってくればということにしましょうか」
「そうだな」

 オイワード公爵も、離縁しても妻子も、黙っていないかもしれない。

 それならば、その時にその考えを潰してやればいい。

「ギリシス国王陛下については、いかがなさるつもりですか?」
「自白剤で、ギリシス国王陛下は協力していることは明らかです」

 報告書にも〈ギリシス国王陛下は、私も同じ考えで、竜帝国の方に同じ思いの方がいて良かったですと言っていた〉

 〈必ず妃にさせる。ディオエル様の子ども、次代を産んで貰わなければなりませんと言うと、私もそれが正しい道だと思っておりますと同意してくれた〉

 〈テイラーの職場はギリシス国王陛下に聞いた〉

 〈生家であるエイク子爵家には、秘密裏に手紙を出して置くとギリシス国王陛下が約束してくれた〉

 〈ギリシス国王陛下は、テイラーはデリア侯爵家の養女にして嫁がせようと考えていた。陞爵も可能だが、急ぐなら、やはり侯爵家の養子にすればいいと話した〉とあった。
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