【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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愛してはいけない人

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 ロアス王国の第一王女・フルヴィアと、蟠りのあった獣人国であるキア皇国の王太子・エルカンの結婚が決まり、安堵と喜びに湧いていた。

 両国は隣り合っているが、歴史上では、双方が優位であったり、劣位であったりと繰り返してきたが、最近はずっとロアス王国が劣位であった。ようやく互いに譲歩しあって、平等となれるのではないかと期待に溢れていた。

 ロアス王国に皇太子が挨拶にやって来て、その側近が番を見付けたという。クノル・フォッド公爵。

 番が見付かっても、攫ったり、襲い掛かったりすることはない。ロアス王国に合わせて、きちんと確認を取り、了承を得て結婚をする。

 話を聞いているのは宰相と、大臣たちである。

「どなたかわかりますか?」
「はい、レンバー伯爵のご令嬢ではないかと思います。銀髪の」

 皆があわあわと、苦しそうな顔をしながら、目を合わせようとしない。

「あの家は…」「なんてことだ」

「申し訳ありませんが、令嬢は結婚式はまだですが、既に籍を入れ、伯爵家を継いでおります」

 クノルは覚悟はしていたが、ショックな胸の内を抑えて、息を整えた。

「…そ、そうですか」
「はい」
「一つだけ聞きたい。なぜ杖を突いているのだろうか」

「まさか」「レイラ嬢だというのか」

 皆は目を見開き、嘘だろうという顔をしている。

「彼女だというのですか、いつ見たのですか」
「昨日、偶然見掛けたのだ」

 レンバー伯爵家。いや、悲劇の伯爵家と言えば、皆がどこの家か分かるくらい有名な話である。

「覚えてらっしゃいませんか、アリナリア様を」
「まさか…」
「忘れていたら、私どもも黙ってはおれません」

 アリナリア・レンバーはこの世にもういない。

「あの方はアリナリア様のご息女?だが夜会に何度かお邪魔したが、見掛けたことはなかった」
「社交場は自由参加となっているのです。伯爵も、ご息女も社交が難しいのです。下の妹君だけはあの当時はまだ赤子で、離れて暮らしておりましたので、時折、婚約者と参加しておりました。先ほど、籍を入れていると言ったのは、妹の方です」
「妹君が継がれるのですか」
「はい、爵位を返上する予定でしたが、妹君のために二人は維持して来たのです。ですが、伯爵は半年前に亡くなりました。ですので、籍は入れておりますが、結婚式は半年後の予定となっております」

 父の喪が明けてから結婚式を行う予定となっている。

「では、姉君は結婚はなさっていないのですか」
「はい…引継ぎを終えたら、修道院に行くようになっております。あの足でも不自由のないところです」
「あの足はどうしたのですか」
「ご存知ないのですか…」

 皆が嘘だろうと、信じられないという顔をしている。ようやく対等になれると思ったのに、まさか知らないのか、疑心暗鬼になって当然だった。

「申し訳ない、教えてはもらえないだろうか」

 クノルは座ったままではあるが、皆に向かって頭を下げた。アリナリアの事件は知っているが、家族のことまでは書いていなかった。おそらく、キア皇国では触れたくもないことだったのだろう。

「あの男にやられたのですよ、もう十年以上、あの状態です」
「申し訳ない…」

 名前を発したくもないというのが、ありありと分かる。

「本当にご存知ないのですか!あの男に殴られて、蹴られて、踏みつけられて、それでもしがみ付いたのです。でもあの男は連れ去り、蹴られた弟君をおぶって、連れ帰ったのですよ!貴族や、伯爵領の者は全員知っております」
「…すまない」

 レンバー伯爵夫妻は、二人とも目立つ質ではなかったが、穏やかで、仲のいい微笑ましい夫婦だった。三人の子どもにも恵まれて、自他共に認める幸せな家族だった。

 それがある男のせいで、一瞬にして崩れ去ったのだ。

 だからこそ、今でも皆が胸を痛めているのだ。


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お読みいただきありがとうございます。

定期的に書きたくなる番(つがい)の物語。
しかし、書き出すとハッピーエンドにならないことが多いのですが、
「あわよくば好きになって欲しい」という思いで、
様々な話を投稿する場にしたい思っています。

それぞれ単体で読めるようにしますが、
繋がっていくこともあるかもしれません(未定)。

どうぞよろしくお願いいたします。
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