【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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私の恋、あなたの愛

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 そして半年後、マリオスとマイニーの結婚式が行われた。既に一緒に暮らしていたが、結婚式は行われていなかった。ルノーも出席し、もちろんシエルも参加していた。ラビンスは地方の貴族に嫁いでいき、脅かされることもなくなった。

 マリオスはマイニーの横で、幸せで溶けてしまいそうに微笑んでいる。その様子に両親も満足そうに笑っている。

 シエルは誰よりも輝いていた。目立たぬようにしたつもりだろうが、華やかさは隠しきれない。

 結婚式が終わり、パーティーが始まった。シエルは男性に声を掛けられているが、上手く躱しているようだった。だがマイニーの幸せが余程嬉しいのか、友人たちにお酒を勧められては飲んでおり、とても楽しそうであった。

 ルノーはその輪に入らずにリリオンとマリオスの友人たちと一緒にいた。しばらくすると、主役であるマリオスとマイニーから、いいところにいたと声を掛けられた。

「シエル嬢を部屋まで運んでくれないか?」
「あなたなら大丈夫でしょう?」

 いや、僕が一番危険な相手なのではないだろうかと思ったが、そんなことは言えはしない。

「飲みすぎちゃって、雄どもに渡すわけにはいかないし」

 マイニーの視線の先には机に突っ伏したシエルが、幸せそうに眠っている。

 役得だと揶揄われながら、断るわけにもいかず、シエルを背負って、ルノーは指定された部屋に向かった。シエルからは何の香りもしない、だかシエルの身体の柔らかさと温かさを感じてしまう。

 ベットに寝かせて、去ろうと本当に思っていた。

 それなのにこれでお別れだと、一度だけとキスをした―――。

 だが、もう止まれなかった。シエルは寝ぼけた様子で何度か起きたようだが、夢?などと言っていて、私にしがみ付き、淫らな声を聞いてしまうと、何度も抱いてしまった。

 今までの比べ物にならないほど、甘美な時間だった。我に返った時にはもう全てが遅かった。番のとことはともかく、目覚めたらきちんと話をしなくてはならない。

 シエルは目を覚ますと、ルノーを見て、きゃあと驚くわけでもなく、絶句した。

「夢ではなかったのね?」
「はい、すまない…」
「酔っていたのよね?なかったことにしましょう、割り切った一人になるつもりはないし、あなたにとってはよくあることでしょう?」

 ルノーもお酒は飲んでいたが、酔っぱらうほどは飲んでいない。意思のあるまま、シエルを抱いたと言うべきなのか迷った。

「いや…それは分かっている」
「じゃあ、なかったことに、それでいいでしょう?」
「っでも」
「大丈夫。あなたの自由を否定する気も、奪う気もないから。一回くらいで責任を取るようなことではないでしょう?」
「それは…そうだけど」
「もう出て行って貰っていい?」
「分かった」

 部屋を出ても、何といえば良かったのか分からなかった。

 確かにいつもなら、『また会う?』『都合があえばね』なんてやり取りをして、可愛い女の子を抱いただけで終わる話だった。

 何も言えなかった、番だと言っても困惑させるだけで、理由にはなるが…どうしたらいいのか分からなかった。

 僕はなんて言って貰いたかったのだろうか、責任を取るように言われたかったのだろうか、どうして抱いたのか問われたかったのだろうか。

 なかったことにしようと言われるとは、なぜか思っていなかった。

 ああ、僕はこれからシエルと無意識に何かを始めようとしていたのだと思った。でも今さらシエルにどこから話せばいいのか、向き合っていけばいいのか。

 いつもの日常に戻っても、シエルのことばかり考えていた。認めなくてはいけない気持ちと、認めたくない気持ちの葛藤を繰り返していた。

 そんなある日、帰ろうとするとリリオンが待っていた―――。
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