【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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もう二度と

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「不憫な人ですね、親兄弟は無理でも、子どもを脅しに使って、言いなりにすることも出来たのに。そんなに死んで欲しくなかったのですね」
「当たり前だ…」

 それからミファラは一日の大半はベットにいたが、初めて実家に手紙を書いた。

 ダーロス男爵夫妻は、ミファラの初めて手紙に喜んだ。ついに結婚ではないかと思ったが、そうではなかった。

 書かれていたのは、ダーロス男爵家がロークロア公爵に、孫のためだと嘘をついて、お金を集り、騙し取っているという話が高位貴族の間で広まっている。

 慰謝料も支度金も払っていないのに、愛人でしかない私を盾にお金の無心をしていたのか、公爵様は返金することは不可能だろうから、訴えないと言ってるが、もし詐欺罪だとされた場合はきちんと認めて、償うようにと書かれていた。

 慰謝料や支度金を払っていないことは、確認を行い、弁護士も呼んで貰って、これまでシュアンが支払ったお金の明細も同封して貰った。

 そして、病気のことは書かず、親が集りなどと恥ずかしくて堪らない、二度と会いたくないと書いた。

「なんだこれは…」
「あ、あなた…」
「訴えないと言っているんだから、だ、大丈夫だろう」
「でもこの前の買い物は…」
「それは…キャンセルするしかない」

 祖父母としてアデルにプレゼントは贈っていたが、またシュアンからのお金を当てにして、購入していた。

 始めはそんなつもりはなかったが、ミファラの代わりにアデルに贈り物をしましょうかと、手紙を出すとお金が送られて来た。

 アデルは幼かったのであまりお金が掛からず、母が残りを使ってしまったことから始まり、お伺いを立てるようになってしまった。

「ドレスは無理よ、リツアにも購入してしまったの」

 リツアはミファラの兄の妻である。

「何とかして払うしかないな…」
「最後だからって頼んでみるのは?」
「捕まってもいいというのか?そもそも、茶会のためのドレスじゃなかったか?」

 高位貴族も多く集まるという茶会であるため、二人はドレスを新調したのだ。

「そうよ」
「高位貴族の間で広まっているというのに、そんな場に行ったら…集ったお金で買ったと思われるのではないか」
「そんな…」
「実際、今までそうだったんじゃないか!お前が散財ばかり」
「あなただって!」
「私は普通の服を新調したくらいだ」

 二人は言い争いになり、さらに兄夫婦も巻き込み、誰もミファラについて心配している者はいなかった。まさに金蔓を失っただけであった。

 ミファラに会いに行かなかったのは、母親は首を絞められて、怖い思いをしたからだと言ったが、旅費が勿体なかったからである。

 旅行がてらロークロア公爵家が払ってくれるように、何度か仕向けたが、ミファラが会いたがっておらず、会わせたくないために、了承することはなかった。

 番なのだからいずれ結婚すれば、家族になると思っていたが、ミファラが愛人だと言われるようになって、驚いた。

 慌ててどういうことかと手紙を書いたが、ミファラが結婚を望んでいない、表向きは愛人と呼んでいるだけで、客人のような存在であると返事が帰って来た。

 公爵家の縁者になれると思っていた家族は、周りにも吹聴していた。それが愛人となれば、やっぱり男爵令嬢だからと言われるようになった。

 支度金もロークロア公爵家ともなれば要らないだろうと勝手に思っており、支度金の話もしなかった。家族も結婚は望んでいないと思われてもおかしくはない。

 養子のことは事前に聞いており、仕方ないとは思ったが、次代は難しいかもしれないが、今代は縁が切れるわけではないと思うことにした。

 だが、ミファラからの手紙によって、ついにお金の縁も切れてしまった。
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