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もう二度と
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到着したトップスとアデルは、シュアンの様子に最悪の想像をした。
アークスはアデルには会ってみたいが、邪魔になってはいけないからと、呼ばれるまで部屋に戻っている。
「…間に合わなかったのですか」
「申し訳ありません」
シュアンは深く頭を下げた。
「止めてください、公爵様に頭を下げられては困ります」
「いいえ、きちんと直接謝罪をずっとしたかった。だか、このような形になるなんて…アデル殿も、大変申し訳なかった」
「い、いえ」
そして、こちらですと案内された部屋にはミファラが寝かされていた。アデルは覚えていないが、トップスにとっては十年以上振りの前妻の姿だった。
「母上?」
「ああ、お前の母親だ。生きていれば似ていると分かっただろうな」
アデルはアークスと違って、ミファラによく似ていた。髪色も目の色も同じで、眉を下げて、困った表情もとてもよく似ていた。
「実感がないです…」
「目に焼き付けて置きなさい」
「…はい」
アデルは初めて母親を認識したが、生きてはいなかった。
シュアンはアデルを残して、隣の部屋に移動し、トップスと向き合っていた。
「彼女は幸せでしたか?」
「いいえ、おそらく1日も幸せだったと思う日はなかったと思います」
「え?」
トップスはミファラは、番に大事にされて、幸せにしているのだと思っていた。いや、思おうとしていた。
「私が二度目に会った時は、住まわれていた近くの山で自殺しようとしていました。私は彼女を見張っていたんです。山に入っていくのでおかしいと思って、首を切ろうとした包丁を取り上げました」
「は?そんな…」
「3日間、おそらく飲まず食わずで、あなた方を待っていた」
「そんな…」
待っているなんて思っていなかった、すぐに番が迎えに来たのだと思っていた。
「責任も悪いのも私です。それからこちらに連れ帰って、しばらくして、二度目の自殺を。この時は、私が治癒術を使えなければ、亡くなっていたと思います」
トップスの喉がヒュっと鳴り、息が苦しくなった。
「その後も、自傷行為は続きました。私といることは、何の意味もなかった。逃げても、私は追ったでしょうから、逃げ場などどこにもなかったんです。苦しい毎日、ストレス、飲酒…」
「酒を?」
「はい」
「弱いと思っていたのですが…」
ミファラはお酒に弱かった、すぐに真っ赤になり、心臓がドクドクしていると言っていた。だが手を出すほどに追い詰められていたのか。
「苦しくなると飲んでいたのです。でなければ、自傷行為を…」
「…」
「そして、先月、私が気付いた時にはかなり悪い状況でした。早くに連絡をするべきだったのです」
「…彼女が望まなかったのですね?」
「はい、会う資格はないと、常々言っていました。自分は子どもを捨てた母親だと、罪を背負い続けていました」
「そうでしたか…アデルには会いたがっていましたか?」
「はい、ですが…迷惑になると思う方が、強くなっていったと思います」
「ならば、これで良かったのかもしれませんね」
今となっては会わせてやるべきだったと思ってはいるが、もう少し大きくなってからと決めていた。
「男爵家には連絡したのでしょうか」
「いえ、病気のことは伝えていません。私がお金を渡していたことが、許せないと言われて、彼女が手紙は出しています」
「お金を?」
「はい…アデル殿のためにと言われて渡していました」
「誕生日の贈り物は貰っていましたが…それ以上を?」
「はい、死後も彼女から預かっている手紙がありますので、知らせなくて結構です」
手紙には病気で亡くなったこと、番だと言われた際に訪ねても来なかった人たちは、葬儀も墓参りも拒否する。これでロークロア公爵家とは縁が切れた。今後、何かあれば弁護士へと書いてある。
「既に私にお金を要求していたことが、噂になっていると伝えてあります。もしお金を要求することがあっても、渡さないでください」
「承知しました」
アークスはアデルには会ってみたいが、邪魔になってはいけないからと、呼ばれるまで部屋に戻っている。
「…間に合わなかったのですか」
「申し訳ありません」
シュアンは深く頭を下げた。
「止めてください、公爵様に頭を下げられては困ります」
「いいえ、きちんと直接謝罪をずっとしたかった。だか、このような形になるなんて…アデル殿も、大変申し訳なかった」
「い、いえ」
そして、こちらですと案内された部屋にはミファラが寝かされていた。アデルは覚えていないが、トップスにとっては十年以上振りの前妻の姿だった。
「母上?」
「ああ、お前の母親だ。生きていれば似ていると分かっただろうな」
アデルはアークスと違って、ミファラによく似ていた。髪色も目の色も同じで、眉を下げて、困った表情もとてもよく似ていた。
「実感がないです…」
「目に焼き付けて置きなさい」
「…はい」
アデルは初めて母親を認識したが、生きてはいなかった。
シュアンはアデルを残して、隣の部屋に移動し、トップスと向き合っていた。
「彼女は幸せでしたか?」
「いいえ、おそらく1日も幸せだったと思う日はなかったと思います」
「え?」
トップスはミファラは、番に大事にされて、幸せにしているのだと思っていた。いや、思おうとしていた。
「私が二度目に会った時は、住まわれていた近くの山で自殺しようとしていました。私は彼女を見張っていたんです。山に入っていくのでおかしいと思って、首を切ろうとした包丁を取り上げました」
「は?そんな…」
「3日間、おそらく飲まず食わずで、あなた方を待っていた」
「そんな…」
待っているなんて思っていなかった、すぐに番が迎えに来たのだと思っていた。
「責任も悪いのも私です。それからこちらに連れ帰って、しばらくして、二度目の自殺を。この時は、私が治癒術を使えなければ、亡くなっていたと思います」
トップスの喉がヒュっと鳴り、息が苦しくなった。
「その後も、自傷行為は続きました。私といることは、何の意味もなかった。逃げても、私は追ったでしょうから、逃げ場などどこにもなかったんです。苦しい毎日、ストレス、飲酒…」
「酒を?」
「はい」
「弱いと思っていたのですが…」
ミファラはお酒に弱かった、すぐに真っ赤になり、心臓がドクドクしていると言っていた。だが手を出すほどに追い詰められていたのか。
「苦しくなると飲んでいたのです。でなければ、自傷行為を…」
「…」
「そして、先月、私が気付いた時にはかなり悪い状況でした。早くに連絡をするべきだったのです」
「…彼女が望まなかったのですね?」
「はい、会う資格はないと、常々言っていました。自分は子どもを捨てた母親だと、罪を背負い続けていました」
「そうでしたか…アデルには会いたがっていましたか?」
「はい、ですが…迷惑になると思う方が、強くなっていったと思います」
「ならば、これで良かったのかもしれませんね」
今となっては会わせてやるべきだったと思ってはいるが、もう少し大きくなってからと決めていた。
「男爵家には連絡したのでしょうか」
「いえ、病気のことは伝えていません。私がお金を渡していたことが、許せないと言われて、彼女が手紙は出しています」
「お金を?」
「はい…アデル殿のためにと言われて渡していました」
「誕生日の贈り物は貰っていましたが…それ以上を?」
「はい、死後も彼女から預かっている手紙がありますので、知らせなくて結構です」
手紙には病気で亡くなったこと、番だと言われた際に訪ねても来なかった人たちは、葬儀も墓参りも拒否する。これでロークロア公爵家とは縁が切れた。今後、何かあれば弁護士へと書いてある。
「既に私にお金を要求していたことが、噂になっていると伝えてあります。もしお金を要求することがあっても、渡さないでください」
「承知しました」
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