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悲しみの従姉妹
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「私のことなんてどうでもいいのよ。手紙にあったことは本当なのね…」
青白い顔をして、ベットにいるベルアンジュに冗談でしょうとは、ベルーナは冗談でも口には出来なかった。
「ええ、事実よ」
「NN病だなんて…ああ、何であなたが…この子、ああ、娘はメイアンと言うのだけど、抱いてあげてくれる?」
受け止めきれず、動揺したベルーナは娘を紹介し始めた。
「いいの?」
「勿論よ、是非抱いてあげて」
ベルアンジュは乳母から、メイアンを受け取ると、そっと抱きかかえた。部屋にはベルアンジュ、ルイフォード、ベルーナと乳母しかいない。
その姿にベルーナは思わず涙が出そうになり、ルイフォードにはまるで後光の差した、聖母のように見えた。
「可愛いわね、ふくふくだわ」
ベルアンジュはメイアンに向かって、にこにこと笑い、メイアンもつられて笑って声を出し、温かい空気が流れた。
「この子のお父様のことは聞いてもいいのかしら?」
「ええ、ルイフォード様から聞いてないの?」
「ええ」
「話しても良かったのに」
ベルーナはルイフォードを見たが、横に小さく首を振っていた。
勝手に話すわけにはいかないとしたのだろうが、私は裏切るような真似をしたのに、律儀な人だなと思った。
「父親は医学生で、こちらに留学に来た時に知り合って、いずれは私もこの子を連れて、向こうの国に行くつもりなの。子どもは予定外だったけど、後悔していないわ」
「そういうことだったのね、良かったわ。叔父様は大丈夫なの?」
プライドの高い叔父様が、ベルーナをこのままにしておくとは思えない。
「大丈夫ではないけど、今は大人しくして置いて、覚悟を決めて出て行くつもりよ」
「認めてくれそうにはないの?」
「相手は言っていないの」
「え?」
「彼も男爵令息ではあるのだけど、お父様に知られたらどうなるか分からないから…結婚は出来ない相手だということにしているの」
「さすが賢いわね」
おそらく叔父様達は、既婚者だと思い込んでいるのだろう。
「だって、子どもを産ませて、結婚させようとしたのよ?あり得ないわ!って、私のことはいいの」
「それを言うなら、私はもうどうにもならないわ」
「彼にも手紙を書いたの!でも…」
「治療法はない、でしょう?」
「っ」
彼も可哀想だけど、症状を遅らせる薬があるくらいで、治療法はない。その薬はベルアンジュは既に服用している。
何かやりたいこと、残す方も残される方も、後悔しない選択をしていくのが一番だと書かれていた。
ベルアンジュのぬくもりで眠ってしまったメイアンは、乳母が受け取って、ソファに寝かせた。
邸の使用人は執事以外はベルーナは療養中だと思っており、さすがに両親は事実を知っているが、邸にはいないことも、ベルーナが来れた理由である。
ベルーナも非難されることも覚悟の上でやって来ており、大変ご迷惑を掛けたと、少なからず知り合いの使用人に頭を下げた。
「ベルアンジュ、本当にごめんなさい」
「ベルーナは私に謝ることなんてないわ」
「いいえ、私は何も知らずに、悔しくて堪らないの!」
「そんな悲しい顔しないで、私は受け止めているの」
ベルーナ宛ての手紙にも、私は受け入れている、どうか悲観しないで欲しい、あなたの幸せを祈っていると、そう書いてあった。
どうにかして会って、話をしなくてはならないと、ここまでやって来た。
「伯父さんたちは知らないって聞いたけど、相変わらずなの?」
「ええ、変わらないわ」
「そう…言いたくもなくなるわよね、私も言わないことに賛成だもの」
「ありがとう」
「お父様にも絶対に言わないから、心配しないでね」
少し休むというベルアンジュに、4人は別の部屋に移動をした。
青白い顔をして、ベットにいるベルアンジュに冗談でしょうとは、ベルーナは冗談でも口には出来なかった。
「ええ、事実よ」
「NN病だなんて…ああ、何であなたが…この子、ああ、娘はメイアンと言うのだけど、抱いてあげてくれる?」
受け止めきれず、動揺したベルーナは娘を紹介し始めた。
「いいの?」
「勿論よ、是非抱いてあげて」
ベルアンジュは乳母から、メイアンを受け取ると、そっと抱きかかえた。部屋にはベルアンジュ、ルイフォード、ベルーナと乳母しかいない。
その姿にベルーナは思わず涙が出そうになり、ルイフォードにはまるで後光の差した、聖母のように見えた。
「可愛いわね、ふくふくだわ」
ベルアンジュはメイアンに向かって、にこにこと笑い、メイアンもつられて笑って声を出し、温かい空気が流れた。
「この子のお父様のことは聞いてもいいのかしら?」
「ええ、ルイフォード様から聞いてないの?」
「ええ」
「話しても良かったのに」
ベルーナはルイフォードを見たが、横に小さく首を振っていた。
勝手に話すわけにはいかないとしたのだろうが、私は裏切るような真似をしたのに、律儀な人だなと思った。
「父親は医学生で、こちらに留学に来た時に知り合って、いずれは私もこの子を連れて、向こうの国に行くつもりなの。子どもは予定外だったけど、後悔していないわ」
「そういうことだったのね、良かったわ。叔父様は大丈夫なの?」
プライドの高い叔父様が、ベルーナをこのままにしておくとは思えない。
「大丈夫ではないけど、今は大人しくして置いて、覚悟を決めて出て行くつもりよ」
「認めてくれそうにはないの?」
「相手は言っていないの」
「え?」
「彼も男爵令息ではあるのだけど、お父様に知られたらどうなるか分からないから…結婚は出来ない相手だということにしているの」
「さすが賢いわね」
おそらく叔父様達は、既婚者だと思い込んでいるのだろう。
「だって、子どもを産ませて、結婚させようとしたのよ?あり得ないわ!って、私のことはいいの」
「それを言うなら、私はもうどうにもならないわ」
「彼にも手紙を書いたの!でも…」
「治療法はない、でしょう?」
「っ」
彼も可哀想だけど、症状を遅らせる薬があるくらいで、治療法はない。その薬はベルアンジュは既に服用している。
何かやりたいこと、残す方も残される方も、後悔しない選択をしていくのが一番だと書かれていた。
ベルアンジュのぬくもりで眠ってしまったメイアンは、乳母が受け取って、ソファに寝かせた。
邸の使用人は執事以外はベルーナは療養中だと思っており、さすがに両親は事実を知っているが、邸にはいないことも、ベルーナが来れた理由である。
ベルーナも非難されることも覚悟の上でやって来ており、大変ご迷惑を掛けたと、少なからず知り合いの使用人に頭を下げた。
「ベルアンジュ、本当にごめんなさい」
「ベルーナは私に謝ることなんてないわ」
「いいえ、私は何も知らずに、悔しくて堪らないの!」
「そんな悲しい顔しないで、私は受け止めているの」
ベルーナ宛ての手紙にも、私は受け入れている、どうか悲観しないで欲しい、あなたの幸せを祈っていると、そう書いてあった。
どうにかして会って、話をしなくてはならないと、ここまでやって来た。
「伯父さんたちは知らないって聞いたけど、相変わらずなの?」
「ええ、変わらないわ」
「そう…言いたくもなくなるわよね、私も言わないことに賛成だもの」
「ありがとう」
「お父様にも絶対に言わないから、心配しないでね」
少し休むというベルアンジュに、4人は別の部屋に移動をした。
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