【完結】あの子の代わり

野村にれ

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従姉妹の提案

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 ベルーナは予約していたホテルに娘と乳母と帰り、娘の世話を終えると、ベルアンジュに何が出来るか考えた。

 そして、あることを思い出した。

 娘の父親であるオーカスの姉・リンダも医師で、産婦人科医。妊娠中にわざわざ訪ねてくれて、出産まで随分、勇気づけて貰った。これからは不妊治療にも力を入れたいと話していた。

 我が国では行われていないが、隣国では体外受精も行っていると言っていた。

 体外受精なら、ベルアンジュとルイフォードの子どもが生まれるかもしれない。

 ベルアンジュは産むことは難しいだろう。ならば私が産めばいい、私には分不相応なほど健康な身体がある。そしてルイフォードにも恩が返せる。私に捧げてくれようとしたベルアンジュにも、希望になるのではないか。

 自己満足かもしれない、でも可能ならば叶えたい。

 NN病のこともあるので、リンダに手紙を書き、返事を待つことにした。

 そして、返事があった。まずは簡単なことではない、感情的になっているのなら、落ち着いて考えなさい。でももし、気持ちが変わらないのならば力になる。オーカスにも話したが、応援すると言っている。

 NN病も卵子には問題はなく、薬も影響はないということだった。皮肉にも強い薬ではあるが、治癒するような薬ではないことが、理由だった。

 但し、本人たちの同意は必ず必要だと言うこと。感情的にならず、判断をして欲しい。そう書かれていた。

 ベルーナの覚悟は既に決まっており、先触れを出して、再度ルイフォードに会うことにした。

「ベルアンジュの子どもを産ませては貰えませんか」
「何を言っているんだ?」

 ルイフォードは心から、何を言っているか分からなかった。

「ベルアンジュの卵子を取って、あなたと受精させた卵を私に戻して、産むことが出来るそうなのです。高額ですが、私も半分出します」
「お金はいいが、そんなことは」
「私だって、何かしたいのです。でも私には健康な体くらいしかない…ルイフォード様にも恩を返せていないのですから」

 ベルーナが裏切ったような形になって、責任を感じていることは分かっていたが、もう終わった話だと思っていた。

「そんなことは…」
「ご両親にはまだ言っていないのですよね?」

 ルイフォードの両親も、子どもから見て、いい両親とは言えない。政略結婚の典型的な夫婦で、子どもはルイフォードしかいなかった。

 子どもは愛するものではなく、後継者という考えで、ベルーナのことも憤りは感じていたが、特に思い入れもなく、次がいるならいいという考えで、ベルアンジュのことも認めてくれた。

 ルイフォードは後継者を残さなくてはならない。

「ああ…」
「こんなことは言いたくはないですが、ベルアンジュがいなくなっても、子どもがいれば希望になりませんか。ルイフォード様もベルアンジュの子どもなら、愛せるのではありませんか?」

 ベルアンジュが亡くなって、誰かと結婚したとしても、その人を愛せるか、その人との子どもをルイフォードが愛せるとは思えない。

 従姉に襲われたことも、両親に話していないとすら言っていた。

「だが、ベルアンジュに影響はないのか?」
「麻酔をして行うそうなので、痛みがある方は少ないそうです。ただ採取後に痛みがあることもあるそうですが、鎮痛剤を服用すれば治まるそうです」
「ベルーナ嬢はそれでいいのか?」

 子どもを産むなんて簡単なことではない、特にベルーナは娘を産んでいるのだから、何も知らずに言っているわけではない。

「私はもう覚悟を決めています」
「ベルアンジュは、どう思うのだろうか…」
「私が話します」
「もし叶ったとしても、君はどうするつもりだ?」
「そこなんです、どうにかいい考えはないですかね…」

 もし上手くいって、ベルーナが妊娠して、出産するまでどうするかが問題だった。これはベルーナだけではどうにもならない。
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