73 / 73
お花畑に住めなくなった家族10
しおりを挟む
「相当、貧乏生活だったらしい」
「まあ、口は悪いですが、自業自得のざまあみろですわね。それで、今はどうなったのですか?」
「領地の片隅で暮らしているということだったが、見に行ったわけではないから今はどうなっているか、分からない」
「見に行きたくもありませんわ」
視界に入れるのも不愉快であるため、その通りだなと、二人は頷き合った。
「キャリーヌは出て来たのですか?」
「ああ、ソアリ伯爵家が没落したことで、オーバス侯爵が平民になったのなら、もういいと、早めに出られることになった」
「でも帰る家がありませんわよね?あっ、お子さんも」
ベルーナはキャリーヌとも従姉妹ではあるが、ベルーナはキャリーヌは物を取ったりすることもあり、関わらないようにしていた。
「ああ、更地になっている伯爵家に驚いたという話だ。それでようやく、領地に戻ったことを思い出して、向かってようやく没落したことを理解したらしい」
「相変わらずですわね…」
刑務所を出る際に事情を説明しており、信じていなかったこともあるが、あまり聞いていなかったのである。
「それで片隅に住む両親に、娘の孤児院を聞いて向かったそうだが、娘は既にいなかったそうだ」
「え?」
「養子に貰われていたんだ」
「その方が良かったでしょうね」
キャリーヌに今更迎えに来られても、幸せになれるとは思えない。
「父親なんだよ」
「え?」
「キャリーヌのことは遊びだったそうだが、子どもが出来たと人伝に聞いて、しかも娘が孤児院にいると知って、自分も孤児だったそうだから、自分と同じ目に遭わせたくないと迎えに来たんだよ」
「まあ、それは良かったと言っていいのでしょうね」
どんな境遇になっているか分からないため、から弾みには言えないが、それが一番良いのではないかと思った。
「ああ、キャリーヌに育てられるより、余程いいはずだ」
「それでキャリーヌは?」
「自分も妻に迎えられると思って、嬉々として探しに向かったそうだ」
カイザーが迎えに来たの?と大喜びして、どこに住んでいるのかと大騒ぎしたが、父親だと確認が出来たから、それ以上は知らないと答えた。
実際は向かった先は知っていたが、キャリーヌには伝えなかった。
「らしいですわね」
「母国がミズラー王国だと聞いていたそうだから、そこへ向かったんだろう。もう監視は終えたから、それ以降は知らない」
「それでいいと思いますわ」
キャリーヌがカイザーとメロリーヌに、出会えている可能性はかなり低い。
「NN病も新しい薬が出来るそうですわね」
「ああ、まだ完治する薬ではないそうだが、以前の物より長く生きられるようになるそうだ」
「それは進歩ですわね」
「ベルアンジュのおかげで、寄付や支援金も増えて、リランダ医師が感謝していた」
「そうですか…ルイフォード様は、ベルアンジュを今でも愛していますか」
「ああ、勿論だ」
「そうですか」
今でもあの頃と同じ瞳で、ベルアンジュを想っていると、すぐに言い切れるルイフォードに、ベルーナは自分の選択は間違っていなかったと思った。
「だが、ベルアンジュが私に残した手紙には、自分のために生きて欲しいと書いてあった…」
ようやく一周忌に読んだ手紙には、最期の時間はとても穏やかで幸せな時間だったことへの感謝の言葉と、優しい思い出は胸にしまって、自分のために、我儘に生きて欲しいと書いてあった。
「ベルアンジュらしいですわね」
「ああ、だが私はベルアンジュと過ごした時間と子どもたちだけで、十分前を向いて生きて行ける。ベルアンジュの分も生きるんだ」
「ええ、私もそうします」
不思議な関係性の二人にはなってしまったが、繋いだのはベルアンジュ以外の何者でもない。二人は良き友人であり続け、ベルアンジュの思い出話に花を咲かせた。
皆が口々に思った、『あの子の代わりに』という言葉。
だが、真にベルアンジュを想っていた人たちのその言葉は、とても温かく優しく、愛に溢れたものだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
自分より辛い立場だったら?ということから書き始めた作品でした。
自分でも思わぬ方向になってしまったために、
またも長くなってしまい、申し訳ございません。
お付き合いいただきありがとうございました。
「まあ、口は悪いですが、自業自得のざまあみろですわね。それで、今はどうなったのですか?」
「領地の片隅で暮らしているということだったが、見に行ったわけではないから今はどうなっているか、分からない」
「見に行きたくもありませんわ」
視界に入れるのも不愉快であるため、その通りだなと、二人は頷き合った。
「キャリーヌは出て来たのですか?」
「ああ、ソアリ伯爵家が没落したことで、オーバス侯爵が平民になったのなら、もういいと、早めに出られることになった」
「でも帰る家がありませんわよね?あっ、お子さんも」
ベルーナはキャリーヌとも従姉妹ではあるが、ベルーナはキャリーヌは物を取ったりすることもあり、関わらないようにしていた。
「ああ、更地になっている伯爵家に驚いたという話だ。それでようやく、領地に戻ったことを思い出して、向かってようやく没落したことを理解したらしい」
「相変わらずですわね…」
刑務所を出る際に事情を説明しており、信じていなかったこともあるが、あまり聞いていなかったのである。
「それで片隅に住む両親に、娘の孤児院を聞いて向かったそうだが、娘は既にいなかったそうだ」
「え?」
「養子に貰われていたんだ」
「その方が良かったでしょうね」
キャリーヌに今更迎えに来られても、幸せになれるとは思えない。
「父親なんだよ」
「え?」
「キャリーヌのことは遊びだったそうだが、子どもが出来たと人伝に聞いて、しかも娘が孤児院にいると知って、自分も孤児だったそうだから、自分と同じ目に遭わせたくないと迎えに来たんだよ」
「まあ、それは良かったと言っていいのでしょうね」
どんな境遇になっているか分からないため、から弾みには言えないが、それが一番良いのではないかと思った。
「ああ、キャリーヌに育てられるより、余程いいはずだ」
「それでキャリーヌは?」
「自分も妻に迎えられると思って、嬉々として探しに向かったそうだ」
カイザーが迎えに来たの?と大喜びして、どこに住んでいるのかと大騒ぎしたが、父親だと確認が出来たから、それ以上は知らないと答えた。
実際は向かった先は知っていたが、キャリーヌには伝えなかった。
「らしいですわね」
「母国がミズラー王国だと聞いていたそうだから、そこへ向かったんだろう。もう監視は終えたから、それ以降は知らない」
「それでいいと思いますわ」
キャリーヌがカイザーとメロリーヌに、出会えている可能性はかなり低い。
「NN病も新しい薬が出来るそうですわね」
「ああ、まだ完治する薬ではないそうだが、以前の物より長く生きられるようになるそうだ」
「それは進歩ですわね」
「ベルアンジュのおかげで、寄付や支援金も増えて、リランダ医師が感謝していた」
「そうですか…ルイフォード様は、ベルアンジュを今でも愛していますか」
「ああ、勿論だ」
「そうですか」
今でもあの頃と同じ瞳で、ベルアンジュを想っていると、すぐに言い切れるルイフォードに、ベルーナは自分の選択は間違っていなかったと思った。
「だが、ベルアンジュが私に残した手紙には、自分のために生きて欲しいと書いてあった…」
ようやく一周忌に読んだ手紙には、最期の時間はとても穏やかで幸せな時間だったことへの感謝の言葉と、優しい思い出は胸にしまって、自分のために、我儘に生きて欲しいと書いてあった。
「ベルアンジュらしいですわね」
「ああ、だが私はベルアンジュと過ごした時間と子どもたちだけで、十分前を向いて生きて行ける。ベルアンジュの分も生きるんだ」
「ええ、私もそうします」
不思議な関係性の二人にはなってしまったが、繋いだのはベルアンジュ以外の何者でもない。二人は良き友人であり続け、ベルアンジュの思い出話に花を咲かせた。
皆が口々に思った、『あの子の代わりに』という言葉。
だが、真にベルアンジュを想っていた人たちのその言葉は、とても温かく優しく、愛に溢れたものだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
自分より辛い立場だったら?ということから書き始めた作品でした。
自分でも思わぬ方向になってしまったために、
またも長くなってしまい、申し訳ございません。
お付き合いいただきありがとうございました。
6,104
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる