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第14話
彼女の幼なじみ1(マキュリーヌ王国)
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セナリアンはアリッシュ王太子妃のためにエメラルダの魔術師・エムとして、マキュリーヌ王国に訪れていた。
アリッシュは王弟であったライサット・ルビアスの娘で、王弟は国王陛下より早くに結婚しているので、年齢は五歳年上になるが、セナリアンの先祖返りも知っている幼なじみである。
コビア大陸で下に位置するマキュリーヌ王国は近年、魔力の多い魔術師の活躍が目覚ましい国で、魔力差の問題も出てくるようになり、六年前にアリッシュは是非ともと言われてクリストフェル王太子殿下に嫁ぎ、王子と王女を産んでいる。
先日、アリッシュから手紙が届いたことから始まる。アリッシュは艶麗で責任感の強い女性であった。セナリアンの力を頼ったのは、実は初めてのことである。
事の始まりは、一年半前。クリストフェル殿下が家庭教師として、平民である魔術師・リーナという女性を連れて来たこと。年は三十歳で、子どもたちの家庭教師になると、当時王子は四歳、王女は三歳だったので、まだ早いのではないかと伝えるも早い方がいいと決められてしまったそうだ。
しかし、アリッシュは公爵令嬢であるように魔力は多い。嫁がなければ、セナリアンを見ているので、魔術師になりたいと思っていたほどだ。貴族教育が優先であったために、魔術師の勉強はなかなか出来なかったが、幼なじみは先祖返りである。教師としては最高峰。時間が合えば、教えて貰ったり、おすすめの本を読んだりしていた。セナリアンも貴族教育をアリッシュに教えてもらうこともあった。
ゆえにアリッシュはエメラルダで、目が肥えているとはいえ、リーナが魔力も少なく、子どもの家庭教師をするほどの技量もあるとは思えなかった。
「技量があるとは思えませんが、どなたかの推薦ですか」
「いや違う。平民なのが嫌なのか」
「私は魔術師に尊敬しかありませんし、選民思想は持っておりません」
「始めに学ぶにはそれほど技量がない者の方いいだろう」
「始めだからこそきちんと技量のある方の方がよろしいのではないですか」
「エメラルダはそうかもしれないが、我が国は違う」
結局、聞き入れては貰えず、子どもたちにも授業の後で話を聞いたりもしたが、王子は優しいけど授業は面白くないと言い、王女はまだ興味すら持てないようであった。授業自体はエメラルダから連れて来ている侍女を付けているので、心配はない。
しかし半年が経つ頃、侍女からクリストフェル殿下と家庭教師が男女の関係だと噂が出ていると聞き、侍女に確かめるように言うと、その場を見たわけではないが、おそらく事実だろうということであった。
最初の頃は上手くいっていたはずだったが、魔力差の問題は女性が被害に遭うことが多いため、自分には関係ないと思っているような節も見られ、距離は出来てしまっていた。それでも王太子妃として、エメラルダを背負って来ているのだ。子どもはいるので、側妃は難しいが、愛妾にしたいと言えば王太子妃になった以上、覚悟はしており、認めるつもりであった。
何度か愛妾にするのですかと問えば、そのような関係ではないと言い合いになり、避けられるようになってしまい、二人が夜中に会っていることもあったが、見て見ぬふりをするようになっていた。
しかし、ある日、子どもたちが授業後に気持ち悪いと言い出したのだ。しかも実は前にも一度あったと言い、侍女に何かおかしなことなかったか聞くと、家庭教師が手を握ったりはしていたと言い、魔力を使うのに触れることはある。いや、でも何かしようとしているのかもしれない。しかし、アリッシュはきちんと学んだのは魔術のコントロールと、セナリアンから教わった治癒術くらいである。
この国で訴えても揉み消されるであろう、だとすれば、私には力強い幼なじみがいるではないか。
私が我慢すれば済むならいいが、子どもたちを危険に晒すことは許せない。アリッシュはセナリアンに間違いかもしれないがと前置きをして、手紙を書いたのだ。
アリッシュは王弟であったライサット・ルビアスの娘で、王弟は国王陛下より早くに結婚しているので、年齢は五歳年上になるが、セナリアンの先祖返りも知っている幼なじみである。
コビア大陸で下に位置するマキュリーヌ王国は近年、魔力の多い魔術師の活躍が目覚ましい国で、魔力差の問題も出てくるようになり、六年前にアリッシュは是非ともと言われてクリストフェル王太子殿下に嫁ぎ、王子と王女を産んでいる。
先日、アリッシュから手紙が届いたことから始まる。アリッシュは艶麗で責任感の強い女性であった。セナリアンの力を頼ったのは、実は初めてのことである。
事の始まりは、一年半前。クリストフェル殿下が家庭教師として、平民である魔術師・リーナという女性を連れて来たこと。年は三十歳で、子どもたちの家庭教師になると、当時王子は四歳、王女は三歳だったので、まだ早いのではないかと伝えるも早い方がいいと決められてしまったそうだ。
しかし、アリッシュは公爵令嬢であるように魔力は多い。嫁がなければ、セナリアンを見ているので、魔術師になりたいと思っていたほどだ。貴族教育が優先であったために、魔術師の勉強はなかなか出来なかったが、幼なじみは先祖返りである。教師としては最高峰。時間が合えば、教えて貰ったり、おすすめの本を読んだりしていた。セナリアンも貴族教育をアリッシュに教えてもらうこともあった。
ゆえにアリッシュはエメラルダで、目が肥えているとはいえ、リーナが魔力も少なく、子どもの家庭教師をするほどの技量もあるとは思えなかった。
「技量があるとは思えませんが、どなたかの推薦ですか」
「いや違う。平民なのが嫌なのか」
「私は魔術師に尊敬しかありませんし、選民思想は持っておりません」
「始めに学ぶにはそれほど技量がない者の方いいだろう」
「始めだからこそきちんと技量のある方の方がよろしいのではないですか」
「エメラルダはそうかもしれないが、我が国は違う」
結局、聞き入れては貰えず、子どもたちにも授業の後で話を聞いたりもしたが、王子は優しいけど授業は面白くないと言い、王女はまだ興味すら持てないようであった。授業自体はエメラルダから連れて来ている侍女を付けているので、心配はない。
しかし半年が経つ頃、侍女からクリストフェル殿下と家庭教師が男女の関係だと噂が出ていると聞き、侍女に確かめるように言うと、その場を見たわけではないが、おそらく事実だろうということであった。
最初の頃は上手くいっていたはずだったが、魔力差の問題は女性が被害に遭うことが多いため、自分には関係ないと思っているような節も見られ、距離は出来てしまっていた。それでも王太子妃として、エメラルダを背負って来ているのだ。子どもはいるので、側妃は難しいが、愛妾にしたいと言えば王太子妃になった以上、覚悟はしており、認めるつもりであった。
何度か愛妾にするのですかと問えば、そのような関係ではないと言い合いになり、避けられるようになってしまい、二人が夜中に会っていることもあったが、見て見ぬふりをするようになっていた。
しかし、ある日、子どもたちが授業後に気持ち悪いと言い出したのだ。しかも実は前にも一度あったと言い、侍女に何かおかしなことなかったか聞くと、家庭教師が手を握ったりはしていたと言い、魔力を使うのに触れることはある。いや、でも何かしようとしているのかもしれない。しかし、アリッシュはきちんと学んだのは魔術のコントロールと、セナリアンから教わった治癒術くらいである。
この国で訴えても揉み消されるであろう、だとすれば、私には力強い幼なじみがいるではないか。
私が我慢すれば済むならいいが、子どもたちを危険に晒すことは許せない。アリッシュはセナリアンに間違いかもしれないがと前置きをして、手紙を書いたのだ。
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