【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
9 / 131

父と父1

しおりを挟む
「ダリーツ、この度はすまなかった!ヨルレアン嬢にも、落ち着いてからで構わないので、謝罪させて貰いたい」

 約束通り、ダズベルト陛下に会うことになったダリーツ・オズラール公爵が部屋に入ると、すぐさまダズベルトは立ち上がって、謝罪した。

「承知しました」
「押し付けた者と、エルドールにも話は聞いた、馬鹿息子にほとほと呆れ、ヨルレアン嬢は体は大丈夫だろうか?」
「はい、念のため侍医にも診せましたら、栄養不足と睡眠不足、過労ということで、休養すれば大丈夫だろうとのことでした」

 疲弊していることは明らかで、体重も減っていた。

「本当にすまなかった!」

 ダズベルトは16歳の子を、大人たちがそのような状況に追い込んだことに、自分を激しく責めた。

「ゆっくり休ませてやってくれ。押し付けた者には、相応の対処をする。手始めに、王妃が怒鳴り込んでおったから、何か言って来ることはないはずだ」

 妻であり、母親であるオーベル王妃に話をすると、エルドールには同様に呆れ、押し付けた者たちには、私が話を付けて来ますと、怒鳴り込んでいった。

 そして、エルドールにはダズベルトが散々言ってしまったために、さらに咎めることは言わないが、終始、冷めた目で見つめている。

「よろしくお願いいたします」
「それで、馬鹿息子のことなのだが…まあ、座ってくれ」

 向き合って座り、ダズベルトは『はあ』と大きな溜息を付いた。

「話は聞いたのだが、私も宰相ですら理解出来なかった」
「はい、私もヨルから聞きましたが、理解が出来ませんでした」
「やはりそうか?」

 ヨルレアン側から聞いたダリーツなら、分かるかと思ったら、そちら側も分からないとは、情けないとしか言いようがない。

「馬鹿息子は、なぜそこまで問題にしたのかが分からない」
「はい、怒鳴ったことは私的な理由だったようで、謝ったそうですが」
「私的な理由?」
「どうやらヨルは、このところ1週間くらい、ほとんど寝ておらず、あの日に関しては2日前から横になっただけの状態だったようで、言い合っていたことが過剰にうるさく感じたのでしょう」
「な、それは申し訳ないことをした」

 ダズベルトは国王は簡単に謝ってはならないとは思っておらず、国に関わることであれば、きちんと相談をするが、人同士で謝罪すべき場合はしっかりと謝罪をする。

「いえ、あの子は責任感が強いので、無理をしてでもと思っていたようですが、殿下に相応しくないと言われたことがきっかけとなり、人としての限界だと言われて、さすがに止められませんでした」
「いや、何も悪くない。そんな状態なのに、あの馬鹿息子は…はあ」

 ダリーツはこちらで調べようかとも思っていたが、まずは陛下に会ってからと思い、気になっていた男爵令嬢のことを聞くことにした。

「失礼ですが、殿下とその男爵令嬢と、親しい関係なのですか?」
「生徒会の仲間だとは言っておった。特に怪しいような報告も受けていなかったが、念のため調べさせている」
「そうですか…」
「何か言っていたのか?私には怒られると思って言わなかったのか?」

 ダズベルトは身を乗り出して、ダリーツに近付いた。

「いっ、いえ、何か言われたようなことはないようでしたが…殿下がその男爵令嬢の横に座り、潤んだ瞳で見ながら、腕を持たれていたと言っておりました」
「な!何だと…婚約者の前で?馬鹿息子が!」
「ヨル曰くですが、彼女の前で私を咎めることで、格好いいと思われたかったのではないかと…」

 ダズベルトのこめかみに、青筋が浮き出ていく様が確認出来たために、ダリーツは言葉に詰まった。

「そんな、くだらんことで!ふざけやがって!」
「あくまでヨルの見解ですが…」
「いや、ヨルレアン嬢にそう思わせたことが問題だ!その娘もどうなっておるのだ!本当に調子に乗っているではないのか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。 すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。 ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。 それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。 そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ…… ※短い……はず

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...