33 / 131
オールエドリレット
しおりを挟む
なぜオドリレットとなっていたのかは、エリーはオールエドリレットと名乗っているつもりだったが、オドリレットと呼ばれるようになり、訂正が出来なかった。
チラシはエリーが書いたままになっていたが、呼び名はオドリレットのままになってしまった。
新聞記事などは、耳で聞いたものであったために、オドリレットとなったまま掲載されたのである。
エリーはオールエドリレットは別人だと言っていたが、作者にとってはどちらも同じエリーだった。
だが、エリーが言い張るので、それならばオールエドリレットとして、名前を残してあげたいと絵を描いた。だが、その絵はエリーにとってはエリーからオールエドリレットに切り替わる前の瞬間のような顔であったが、エリーも気に入っていた。
モデルは本名であるエリーではなく、作者の意を組んで、歌い手のオールエドリレットとした。
解読を終えても、作者とオールエドリレットの関係性は分からなかったが、親しいことには間違いはなかった。
死については一切書かれていないことから、絵も文献もエリーが生きている内に描かれたもので、まだどこかに文献があるかもしれないと思われる。
解読を聞いたダズベルトは、ついにモデルの正体が分かったことに胸が高鳴ると同時に、ヨルレアンの言葉を思い出した。
「ヨルレアンの言った、『ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません』とは、真逆の結果となったな」
「そうですわね、それを言うべきは馬鹿息子の方でしょう」
「本当にな、だがほんの少しは力になったようだからな」
「ええ、ほんの少しですけどね」
記録を頼みに来て、用意させたのはダズベルトだが、その中から探し出したのは間違いなくエルドールである。
デザールとヨルレアンが解読したことは、記録には残るが、発表はされていない。二人とも煩わされることを避ける質であるためである。
悲劇の歌い手がモデルであったことは、国内中の話題となった。王立美術館も再び大賑わいとなり、ヨルレアンが見付けたチラシも、美術館に飾られることになった。
エルドールも、王家からの発表であったために、感動の言葉を掛けられることになった。
「殿下、素晴らしいことですね」
「殿下も手伝われたのですか?」
「いや、私の力ではない」
「本当に感動しました」
「この時代に生きていて良かったです」
その様子を見ていた、オマリーはまさか『振り返る女』のモデルを調べているとは思っておらず、素直に驚いた。
オマリーもあの振り返り、どこか儚く、愁いの帯びたようにも見え、微笑んでいるようにも見える、何とも言えない表情をした女性に心惹かれていた一人であった。
歴史的瞬間に、オマリーの気分は高揚した。
「私も手伝ったのです」
「そうなのか?」
「はい、内緒ですよ」
オマリーはヴァイオリンがどこに役に立ったのかは分からないが、エルドールを手伝ったことを、内緒だと言いながら口にするようになっていた。
ヨルレアンのことを知らず、エルドールたちとは関係のない者にはしか言わなかったことで、生徒会の一員だから、そういったこともあるのかと、オマリーはとても優秀だとさらに思われるようになった。
オマリーの元へ、今までも何人か縁談の申し込みはあったが、男爵家や平民で、まだ進路を決めていないと断っていた。
だが、今回の件で子爵家からも縁談も舞い込むようになった。
両親は凄いじゃないかと言ったが、オマリーは働きに出るならば全力でやりたい、結婚するなら難しくなってしまうのではないかと話しており、やっぱりまだ決められないと訴えた。
政略結婚ではない縁談であるために、両親も先方に丁寧に説明をして、相手も優秀な令嬢なら仕方ないなと受け入れてくれることになった。
縁談を断ったことで、オマリーは自分には非常に価値があることを実感して、自尊心はとても満たされた。
チラシはエリーが書いたままになっていたが、呼び名はオドリレットのままになってしまった。
新聞記事などは、耳で聞いたものであったために、オドリレットとなったまま掲載されたのである。
エリーはオールエドリレットは別人だと言っていたが、作者にとってはどちらも同じエリーだった。
だが、エリーが言い張るので、それならばオールエドリレットとして、名前を残してあげたいと絵を描いた。だが、その絵はエリーにとってはエリーからオールエドリレットに切り替わる前の瞬間のような顔であったが、エリーも気に入っていた。
モデルは本名であるエリーではなく、作者の意を組んで、歌い手のオールエドリレットとした。
解読を終えても、作者とオールエドリレットの関係性は分からなかったが、親しいことには間違いはなかった。
死については一切書かれていないことから、絵も文献もエリーが生きている内に描かれたもので、まだどこかに文献があるかもしれないと思われる。
解読を聞いたダズベルトは、ついにモデルの正体が分かったことに胸が高鳴ると同時に、ヨルレアンの言葉を思い出した。
「ヨルレアンの言った、『ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません』とは、真逆の結果となったな」
「そうですわね、それを言うべきは馬鹿息子の方でしょう」
「本当にな、だがほんの少しは力になったようだからな」
「ええ、ほんの少しですけどね」
記録を頼みに来て、用意させたのはダズベルトだが、その中から探し出したのは間違いなくエルドールである。
デザールとヨルレアンが解読したことは、記録には残るが、発表はされていない。二人とも煩わされることを避ける質であるためである。
悲劇の歌い手がモデルであったことは、国内中の話題となった。王立美術館も再び大賑わいとなり、ヨルレアンが見付けたチラシも、美術館に飾られることになった。
エルドールも、王家からの発表であったために、感動の言葉を掛けられることになった。
「殿下、素晴らしいことですね」
「殿下も手伝われたのですか?」
「いや、私の力ではない」
「本当に感動しました」
「この時代に生きていて良かったです」
その様子を見ていた、オマリーはまさか『振り返る女』のモデルを調べているとは思っておらず、素直に驚いた。
オマリーもあの振り返り、どこか儚く、愁いの帯びたようにも見え、微笑んでいるようにも見える、何とも言えない表情をした女性に心惹かれていた一人であった。
歴史的瞬間に、オマリーの気分は高揚した。
「私も手伝ったのです」
「そうなのか?」
「はい、内緒ですよ」
オマリーはヴァイオリンがどこに役に立ったのかは分からないが、エルドールを手伝ったことを、内緒だと言いながら口にするようになっていた。
ヨルレアンのことを知らず、エルドールたちとは関係のない者にはしか言わなかったことで、生徒会の一員だから、そういったこともあるのかと、オマリーはとても優秀だとさらに思われるようになった。
オマリーの元へ、今までも何人か縁談の申し込みはあったが、男爵家や平民で、まだ進路を決めていないと断っていた。
だが、今回の件で子爵家からも縁談も舞い込むようになった。
両親は凄いじゃないかと言ったが、オマリーは働きに出るならば全力でやりたい、結婚するなら難しくなってしまうのではないかと話しており、やっぱりまだ決められないと訴えた。
政略結婚ではない縁談であるために、両親も先方に丁寧に説明をして、相手も優秀な令嬢なら仕方ないなと受け入れてくれることになった。
縁談を断ったことで、オマリーは自分には非常に価値があることを実感して、自尊心はとても満たされた。
4,207
あなたにおすすめの小説
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
天然と言えば何でも許されると思っていませんか
今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。
アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。
ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。
あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。
そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる