【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

呼び出し１

　トドック男爵夫妻とオマリーは王宮に着くと、こちらでお待ちくださいと謁見室に通された。

　そして、約束の時間になるとダズベルト国王陛下、オーバン王妃陛下、エルドール第二王子殿下、ヨルレアン・オズラール公爵令嬢、最後に宰相であるジルファンド侯爵が入室した。

　特に華美な装いではないが、当たり前ではあるが男爵家とは雲泥の差である。

　中央にダズベルトとオーバン、ダズベルトの右側にエルドール、オーバンの左側にヨルレアン、宰相は進行をするために、右前に立っている。

　そして、それぞれの侍女、従者、護衛が控えている。

　３人は立ち上がったが、オマリーは少し口が開いたまま、その様子を見ていたが、ベクターとジュディーは頭を下げ続けており、錚々たる面々に委縮して、オマリーの様子に気も気付かなった。

「面を上げよ」

　ようやく、ダズベルトが声を掛け、ベクターとジュディーは頭を上げ、オマリーはまだぼーっとしていた。

「座りなさい」

　ベクターとジュディーは一礼して、椅子に座ったが、オマリーは上品さの欠片もなく、両親が座ったので、ぴょんと椅子に座った。

「ベクター・トドック男爵、呼び出しに心当たりはありますか？」
「いえ、ございません」

　宰相が問い掛けると、少し顔を上げて、ベクターは答えた。

「ご令嬢から呼出しがあると聞いていませんでしたか？」
「い、いえ」
「そうですか」

　ベクターは宰相の淡々とした様子で、オマリーの言っていたような良い話ではないことを察した。ジュディーは白い顔色になっていた。

「先に、オマリー・トドック。今から机に置く文を解読してください」
「え？」

　オマリーの前に、机と以前エルドールが一行だけ解読しようと試みたあの文が置かれた。辞書も文献も用意されていない。

　UU･ω･||ー・ー・ー・=/Γ==//δΣΠ//Λ∴Θ

「解読してください」
「え？これをですか…解読？え？」
「解読してください」
「いえ、解読は…私はお手伝いをしただけで…」

　噂のことを訊ねる前に、両陛下、エルドール、宰相の前であっさりと言質を取ることが出来た。

「オマリー・トドック、あなたは今のように『振り返る女』の解読を手伝ったと、同級生に話していますね？聞いたという証言も得ています」

　自分で口にしていることをエルドールに知られてしまったことから、オマリーは目を泳がせた。

「…」
「答えなさい」
「…はい、つい…申し訳ございません」

　オマリーは勝手に言ったことを叱られているのだと思い、謝罪した。

「『振り返る女』の解読を手伝ったと言うのは、先程の文を解読したような方が使っていい言葉です。意味が分かりますか？」
「…え、ですが、資料を作ることだって」
「解読に関しては資料を集める、作ることを任されたとしても、それは手伝いとは言いません」
「でも！私だって、力になったはずです！殿下、そうですよね？」

　エルドールは勝手に話すことは出来ないために、オマリーと目は合っても、黙ったままであった。

「殿下！そうですよね？」

　オマリーはどうして答えてくれないのかと、エルドールにそうだと言って貰うために、再度問い掛けた。

「エルドール、そのようなことがあったのか？」

　ダズベルトが、エルドールに問い掛けた。

「いいえ、そのような事実はありません」
「な！資料をお渡ししたではありませんか！」
「何の資料ですか？」
「ヴァイオリンの資料です！」

　オマリーはエルドールが手伝ったことを知られたくないために、認めないのだと思うようになっていた。

「ああ…」
「認めてください！」

　オマリーは立ち上がって、叫んだ。

「私はヴァイオリンのことなど調べておりませんでしたので、意味が分かりませんでした。手伝うようなことはないといくら言っても、しつこくされて困ってもおりました」
「…な、殿下、なんでそのようなことを」

　オマリーは両親に化け物を見るような目で見られ、オマリーは変な汗をかきながら、焦り始めていた。