【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
69 / 131

オズラール公爵姉弟

しおりを挟む
 トドック男爵令嬢が休学になっても、ヨルレアンは解読に没頭しており、学園に通っていないので、いなくなったことを感じることもなかった。

 結局、試験だけ受けに行くという待遇のまま、過ごしていた。

「姉様、大変だったそうだね」

 別邸を訪ねて来たのは、3つ年下の弟であるミオリックであった。ミオリックは父と本邸に暮らしているが、きょうだい仲は良い。

 トドック男爵令嬢のことは、父・ダリーツもヨルレアンが怒るべきことなのだから、好きなようにすればいいと、許可を得ていた。

 ミオリックもダリーツから話を聞いて、ヨルレアンを訪ねて来た。相変わらず、姉の部屋はあらゆる本や文献で埋もれている。

 作業部屋だけは、掃除はしているので、綺麗ではあるが片付くことはない。掃除も、ヨルレアンを感度を損ねてはいけないと、細心の注意をしながら行われている。

「ちょっと、子どもっぽかったわと反省しているのよ」
「だけど、手伝ったなんてふざけたことを、私でも許せないよ」
「そうなの、許せなかったの。何だかおじ様の功績に、泥を塗られたような気分になってしまったのよ」
「当然だよ!しかも姉様を馬鹿にしていたんでしょう?」

 ミオリックは手伝ったと嘘を付いたこともだが、ヨルレアンを馬鹿にしていたことに怒りを感じていた。

 姉がどれだけ解読を祖父から託されたという責任感から、頑張っているかを知っている。知識も何が役立つか分からないからと、多岐に渡っている。

「成績優秀者を辞退していますからね、入っていないイコール馬鹿だと思われていたのでしょう」
「でも、男爵令嬢が?」

 ミオリックは姉なので、そうは思わないが、他者から姉は近づき難い雰囲気を纏っていると聞く。馬鹿にするなんてこととは、程遠い存在だと思っていた。

「しかも、20位だったこともあったんですって」
「ということは」
「そう、姉様が辞退していなければ、成績優秀者からも外れていることもあったってこと」
「姉様が馬鹿であるはずがないのに」
「馬鹿そうな顔をしているのかしら?」
「そんなはずないでしょう?いつも、何かしているのに」

 ヨルレアンがゆっくりしていたのは、エルドールとの一件があって、押し付けられていた解読を返した時くらいである。

 だが、結局、机から離れていることを耐えられなくなって、ザッハンデル前伯爵邸に行くようになった。お祖母様もあの人にそっくりだと言っていたくらいである。

「ミオはどう?変わりはない?」
「ないよ、毎日勉強と稽古漬けだよ」

 ミオリックも、ヨルレアンが受けて来た同じ教育を受けている。

 ヨルレアンもミオリックも辛いとは思ってはいるが、両親の元へ生まれた宿命だと思って、受け入れている。

「まあ、私も通った道だもの。頑張るしかないわよ」
「そうだね。そういえば、母様からまたパイナップルのチーズケーキが届いてたよ」
「また?」

 ルエルフ王国で食べて美味しかったので、あらゆるところのお土産にしたのだが、おかげで母から送られてくるようになってしまった。

「姉様が褒めたからでしょう?」
「ミオだって褒めていたじゃない」

 ルエルフ王国には、ミオリックも一緒に行っていた。

「そうだけど…でも、今度はブルベリーのチーズケーキもあるよ。新作だってさ」
「ブルベリー?それは美味しそうね」
「うん、明日出ると思うよ」
「明日?」
「父様が、明日はローストビーフだからこちらで食べなさいって」
「ええ?」
「好きでしょう?ローストビーフ」
「好きだけど」
「労いたいんだよ、付き合ってあげなよ。執事には話してあるから」
「分かったわ」

 皆が各々忙しいオズラール公爵気は、いつもは食事も別々であるが、時折、一緒に食事をすることもちゃんとある。

 ヨルレアンも解読と、時折、試験を受けに行くという生活を続け、実感もないままではあるが、無事に三年生になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。 すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。 ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。 それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。 そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ…… ※短い……はず

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

処理中です...