【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

留年男爵令嬢

　オマリーは厳しい令嬢教育を得て、礼儀作法も試験もパスはしたが、これで理解が出来ていないということは一切通用しない。

　本来ならば、当たり前として入学しているので、休学は救済措置でもある。

　オマリーは留年となっているために、同級生たちが皆が進級して、二度目の二年生として復学した。

　クラス割で成績優秀者には入れなかったが、２クラスあるＳクラスにはなれたが、周りは一学年下だと言う現実に直面することになった。

　ひそひそ言われ、男爵令嬢だからだと、オマリーは苛立ったが、復学の試験の際に次は休学ではなく、退学だと言われたために大人しくしていた。

　だが、再び選ばれると思っていた生徒会には選ばれなかった。

　問題を起こしたのだから当たり前ではあるが、オマリーはどうして選ばれないのかと、ふざけるなと考えていた。

　だが、オマリーはプライドがどんどん高くなっていたために、気にしていない素振りをして、過ごしていた。

　選ばれたのは、勿論、リスカーダであった。生徒会長に指名され、令嬢も生徒会長になることはあるために、珍しいことではなかったが、副会長くらいが良かったとは思っていた。

　だが、周りは満場一致で、生徒会長に相応しいと判断した。

　オマリーは元生徒会の一員として、手伝って欲しいと言われることもあるかもしれないと考えていたが、リスカーダとはクラスも違い、関わることはない。

　しかも、エルドールに話をしようと考えており、会えるような機会もなかったために、学園でまた相談しようと思っていた。

　ヨルレアンとの一件の驕りはオマリーの自信に変わっており、エルドールなら話せば、誤解だと理解して貰えると信じていた。

　ある意味、男爵夫妻は深刻さを理解していたが、オマリーの場合は男爵令嬢ということが、王家の恐ろしさを現実として感じていないと言えた。

　オマリーは偶然会うことも、生徒会室にもいないので、直接三年生のクラスに会いに行くことにしたが、オマリーの姿を見付けた、カイロスが立ち塞がった。

　エルドールはオマリーを確認すると、その後は見ることもせず、クラスメイトも何しに来たのかという顔を向けていた。

「何の用だ？」
「殿下に話があるんです」
「話をすることはない。退学になりたいのか？」
「そんな！私は謝罪をしたいだけなのです」
「謝罪？何の謝罪だ？」
「迷惑を掛けてしまったので…」

　オマリーは未だに自分は察しのいい、優秀な令嬢だと自負している。

　カイロスは話を聞いているので、謝るならばオズラール公爵令嬢だと思ったが、口にすることは出来ないために、溜息を付くしかなかった。

「はあ…もう殿下が君に関わることはない」
「一度でいいんです」
「君はもう生徒会の一員でもない。それとも、殿下を友達か何かとでも思っているのか？立場を弁えろ」
「っ」

　家庭教師に『男爵令嬢だから立場を弁えるのではなく、まずは人として弁えると考えること。そうすれば、自ずと立場が見えて来るでしょう』という言葉が蘇ったが、男爵令嬢だからに決まっているじゃないかと心の中での悪態の方が勝った。

「一度、話を聞いて貰えば分かっていただけるはずです」
「また来るようなら、先生に話をする。いいな？それとも、今から話した方がいいか？」
「わ、分かりました」

　オマリーはカイロスに言われては困ると思い、退学になっては意味がないことは分かっていた。いつかタイミングがあるはずだと、その場は引き下がることにした。

　クラスでは完全に腫物状態で、オマリーも本来は先輩だという気持ちが見え隠れしており、浮いていた。だが、しっかり通っている時点で、精神面は強いということは間違いないだろう。

　だが、二年と三年では授業の内容も、行動も違うために、オマリーはエルドールに会うことは出来ないまま、時は過ぎていった。