【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

定期試験結果

「もし、本人やグルダイヤ侯爵が希望したとしても、そのように伝えます」
「そうしてくれ」

　グルダイヤ侯爵もアリナのことではないが、疑問を持つことになるだろう。だが、それこそ短期留学だからと言い出し、伸ばして欲しいと言い出す可能性が高い。

「ヨルレアン嬢はどうだった？」
「はい、今回も１位でございます。ミスは５点のみです」
「外国語は満点か？」
「はい、完璧の上に、今回もミスのご指摘もいただきました」
「そうか」

　ダズベルトはエルドールのことよりも、ヨルレアンの結果に満足そうに頷いた。

　事前に受けるようになったのも、ヨルレアンの試験中に問題ミスが分かり、まだ生徒は受けていない試験であったために、大慌てになってしまった。

　外国語の教師陣もＳクラスの問題は作る方も難しいために、学園長に願い出て、ダズベルトにも許可を貰うことになった。

　ある意味、ヨルレアンに指摘されないことが、教師陣の第一関門になっている。

　卒業後もチェックをして貰いたいと、学園に籍を置いて貰えないかと、嘆願書が既に出来ており、ヨルレアンの卒業後に渡すつもりである。

「確かに外国語の覚えはいいと聞いていますが、私にはどうしても、ハッソ嬢がヨルレアン嬢を超える存在だとは思えません」
「ああ、ますます怪しくはなって来たな」
「解読はさせるのですか？」
「ああ、グルダイヤ侯爵がして欲しいと言っているからな。準備が整い次第することになっているが、もしも同程度なら無理じゃないか？」
「確かに、一緒に来た者がこのような成績では…疑うのではありませんか？」

　グルダイヤ侯爵が何か言って来るかもしれないと、気の重い中、成績優秀者の結果が発表された。

　エルドールは、今回は３位であった。

　いつも１０位までは僅差のデッドヒート状態で、エルドールも１位もなったことはあるが、いつも３位から６位なので、今回は良い方と言えるだろう。王族だからと言って、１位が取れるわけではく、そこは平等なのである。

　だが、小間使いと化すことにもなったエルドールは、自分にしか見えない１位にヨルレアンがいるために、４位かと心の中で思って確認をしている。

「殿下、おめでとうございます」
「ありがとう。カイロスも５位じゃないか。おめでとう」
「はい、ありがとうございます」

　カイロスはいつも７位から１０位辺りなので、今回は良い方である。

「ローズマリー嬢が１位か」
「はい、今回は自信があると言っておりました」

　今回の１位はローズマリーである。２位のディーサン・バオル侯爵令息が悔しそうにしている。

　そして、１年生の成績優秀者に、ファミラ・ノーリーの名前はどこにもなかった。

　皆もアリナはいなかったが、ファミラが試験を受けていたことから、成績優秀者に入るのではないかと期待したが、いつも通りの結果であった。

　わざわざ聞くような失礼な者はいなかったが、短期留学だから外されているのかもしれない。だが２人とも見に来ていたと、こちらも首を傾けることになった。

　ダズベルトは夕食の際に、褒めるつもりでエルドールに声を掛けた。

「定期試験、今回は３位だったそうだな」
「４位です」
「ん？」
「ヨルレアン嬢が１位ですから、私は本当は４位です」

　エルドールも試験中はヨルレアンに会わないように言われており、以前のように学園で声を掛けることも出来なくはなってしまったが、１位であることはエルドールは受け入れ、誇らしいことに変わっていた。

「まあそうだな、今回はミスは５点だったそうだから、１位はヨルレアン嬢だな」
「あなた、それよりも外国語を５つも誰も受けておりませんよ」
「そうだったな」
「お義姉様は素晴らしいですから！」
「どうしてメイランが誇らしそうなんだよ」

　メイランは同じ王女としても、女性としても、学者としても、ヨルレアンに尊敬しかない。