運命だとは認めない

野村にれ

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産後

「大丈夫です。今はお疲れですので、そっとしておいて欲しいとのことです」
「そうですか、ご無事ならいいのです」

 アリルールの顔を見たかったが、医師に言われてしまえば、無理に入り込むことはできない。

「念のために今日も泊まり込みますのでご安心ください」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
「お子様の世話はお任せしてよろしいですか?」
「はい、乳母にも待機してもらっております」

 手配していた乳母には来てもらっており、生まれた子どもは男の子だった。

 両陛下も公務を終えて、こっそりとやって来て、母子ともに無事に生まれたことを喜んだ。ハイザートとエリアンはアリルールに会って帰っていった。

 子どもも問題なく、アリルールも医師が大丈夫だと翌日には帰っていった。

 メイファスは子どもの名前をアリルールに尋ねようと思い、久し振りに部屋を訪ねた。アリルールは顔色悪く、ベットに座っていた。

「具合はどうだろうか」
「悪いです……」

 二人は同じ会話をして、夫婦にも親にもなったようにも誰が見ても思えない。

「改めてにはなりますが、子どもを産んでいただきありがとうございました」
「大事なお子様ですものね、大切にしてあげてください」

 メイファスはまるで他人事のような口振りに胸が苦しくなったが、意見を言うことは目的があるためにグッと堪えた。

「子どもの名前を決めたのですが、よろしいでしょうか?」
「お任せしますと申し上げたはずです」
「勝手はできません」
「これから嫡男が一番呼ぶことになるのですから、いい名前を付けてあげてください……」

 アリルールは疲れたようにメイファスを視界にも入れようとせず、メイファスは両親と相談して、ルーファスと名付けられることになった。

 ルーファスはアリルールのところに連れて行けば、母乳をあげることはしないが、抱くことはするが泣き出すとそっと返すようになった。

 アリルールはしばらく安静にもしていたが体が回復すると、再び絵を描く生活に戻った。

 ルーファスは想像通り、モンカール公爵家で愛されて育っていた。ただ、そこに母親はいないだけ。

「アリルール様は妊娠中は無理をして食べてらしたのね……」

 フーランは夕食が終わると、悲しそうに話し始めた。

「どういうことですか?」
「今日、残してしまうから量をもっと減らして欲しいと手紙が添えられていたの……」
「あれ以上ですか?」
「両陛下もおっしゃっていたでしょう?元々お食べになられないと……それでも妊娠しているから無理をしていたのよ、きっと」

 出産後、アリルールの食事量は一気に減っていた。まだ回復されていないからだと思っていたが、フーランは手紙を見て、無理をして食べていたのだと感じていた。

「ですが、あれだけでは……」
「パンは食べられているようなの」
「絵のですか?」
「ええ、残った物を食べたりしているようだから……」

 フーランは様子を伺いに話にも行ったが、「パンを食べていますから」と言われてしまったのである。

「王妃陛下に相談してみるわ」
「よろしくお願いいたします」
「ルーファスのことも、今は良いけど、お互いがどう受け止めるかしらね」
「それは私の責任ですから」
「そうね……」

 アリルールの食事量についてはエリアンから、前はその程度だったことを聞き、安心することはなかったが、減らすことにした。

 それからアリルールは画材を買いに行く時以外は部屋に籠るようになった。

 王宮では授業を受けていたが、それも既に嫁ぐことになって終えることになり、本当にリトラーズの言ったような生活になった。

 パーティーも二人で出向くようなことはなく、アリルールにそれなら離縁しましょうと言われるのではないかとメイファスも誘うことはできなかった。

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