【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

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出産

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 涼希に美里以外に子どものこと言って来るのは、三島の祖父母と誠一だけで、積極的に作ってはいなかったが、今もいずれできるだろうと思っていた。

 それなのに、あれこれ言われるのは、涼希もさすがに不愉快でしかなかった。

「英仁さんが反対しているの?」
「そうじゃないよ、もうこんなおめでたい日にやめよう」
「そうだ、美里もこんな日にやめなさい」
「大事なことじゃない!」

 友人もいない美里にとって、自慢ができるのは親族とご近所さんくらいだったが、親族には言えなくなってしまった。ゆえに、ご近所さんを捕まえては自慢をしてたが、それも相手も面倒がられているが、気付いていない。

「ほら、お姉ちゃんも産んだのだから、羨ましいでしょう?早く作らないと、どんどん辛くなってしまうわよ。あなたはのんびりしているんだから」
「もう……」
「もしも、不妊治療が必要なら、早い方がいいわ。お金は掛かるだろうけど、お金はあるんだからいいわよね」

 当然のように自分たちは払う気はないという様子にも、涼希は腹が立った。

「じゃあ、ママが出してくれるのね?」
「っえ」
「ママが言い出したのだから、ママが出してよ」
「そんなこと」

 美里は花穂と違って、のんびり考えている涼希を、しっかりさせなくてはと思ってのことだった。

 だが、その裏には子どもを産んでもらって、また妊娠したのと自慢したいこともあるが、私の血を継ぐ孫で、一生安泰を盤石なものにしたかった。

 美里は気付かれていないと思ったが、バレバレである。

 当然だが、お金を援助するなど考えてもいなかった。

「それだけ言うのだから出してくれるんでしょう?不妊治療って百万、二百万掛かるんでしょう?」
「でも」
「自分は出す気もないのに、口だけ出していたの?」
「お金のことが気になるなら、私が英仁さんに話をするわ」
「は?話をすり替えないで!お姉ちゃん、ごめんね。もうちゃんと言っておかないと、耐えられない!」

 花穂もうんうんと頷き、涼希は美里に向き直った。

「お金を出す気もないのに、口を出していたのかって聞いているの」
「だって、お金はあるじゃない」
「英仁さんが働いているからお金があるの、それをまるで自分が出すかのように言うのはやめて!ママ、そういういやらしいところ、バレバレだよ」
「そんなつもりは……」

 なかったとは言えないために、言葉は続かなった。

「当分、ママには会いたくないわ」
「何、言っているの……」

 美里の今の最大の誇りは涼希であり、妖の妻が娘であることで、いくら自慢できる相手が少なくなったとはいえ、それでも人から見られる視線が全く違う。

「ママはどうせ自慢したいからでしょう?後は、子どもができたら一生、妖様の孫がいるって思えるからでしょう?私が離婚でもされたら終わりだものね」
「違うわ、涼希のためなのよ?離婚なんてあり得ないけど、もし、もしよ、そんなことになっても子どもがいたら違うんだから」

 運命の相手なのだから離婚などあり得ないが、もしも万が一、離婚になっても子どもがいれば、慰謝料や養育費だってもらえる上に、妖の子どもということは変わらない。涼希は一生、豊かに暮らせるだろう。

 何も考えていない涼希に、美里は良かれと思って話した。

「自分のためにでしょう?」
「そうじゃないわ、涼希のために言っているの」
「だったら、ママが働いて、不妊治療のお金を出すか。子どもができるまで黙って待ってよ」
「っあ……」

 美里は専業主婦のために、そんなに大金をすぐに用意ができるわけがない。

 則人がこの場にいなければ、上手いことを言って出してもらうことができたかもしれないが、今すべての話を聞いてしまっており、出してくれるとは思えない。

 しかも、そもそも英仁は唸るほどお金があるのに、美里が出す意味が分からない。
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