【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

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対面

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 お手伝いさんが買い物に行ったために、光峯が玄関に迎えに出た。

 リビングには緊張感が走っており、涼希はこれで花穂が運命の相手だったら、私は生きていられないかもしれないとまで思っていた。

「遅くなって大変申し訳ありません」

 花穂は入ってすぐに、頭を下げ、その姿を英仁はじっと見つめた。

 光峯は英仁に視線を向けたが、首をゆっくり振った。

「違ったようですね……」

 涼希は息を止めていたようで、ようやく息ができた。

「良かった……」
「何かあったのですか?」
「お姉ちゃん、涼希が運命の相手ではないかもしれないって」
「えっ」

 美里は気遣うということができないために、すぐに花穂のそばに向かった。

「お姉ちゃんかもしれないって、でも違ったみたいね」

 花穂だったら困るが、それでも関係のない相手よりも花穂だったと思っているところもあった。

「どういうことなの?」
「涼希を運命の相手と認識できなくなったって言うの」
「えっ」

 花穂は暗い表情の涼希を心配そうに見つめながらも、もしも妖様の運命の人ではないのなら、自分の結婚は大丈夫なのか、子どもも二人にいるのにと、不安な気持ちも芽生え始めていた。

「じ、事実なのですか?」
「英仁が認識できなくなったのは事実です。魂が入れ替えられた可能性を考え、貴方かもしれないとも考えたのですが、違ったようです」
「魂?そんなことがあるのですか?」

 認識できなくなったことも問題だが、魂の入れ替えなど、考えることもできない話であった。

「過去にあったことは事実ですが、今回も同じかは分かりません」
「そんな……」

 花穂も妖様の運命の相手に選ばれたらと考えたことがないと言えば嘘になる。だが、選ばれたのは妹で、そのおかげで裕福な相手と結婚もできた。

 夫も真面目で、優しい人で、花穂のことも大事にしてくれている。

 恋人とは違うが、結婚相手としては、素晴らしい相手だと思う。

 義実家も嫁いびりのようなこともなく、今日も子どもたちを英仁に呼ばれたので預かって欲しいと言えば、快く預かってくれた。

 それも、涼希が英仁の運命の相手であるからではないか。それが違ったら、私に価値はあるのだろうか。

「風蓮、可能性を先に潰した方がいいか?」
「そうですね、まずはその方がいいでしょう」
「今日の今日では無理だろうな」
「ええ、私ももう一度、調べてからにしましょう」
「どれくらい掛かる?」
「明日中には調べましょう」

 血縁者を調べることは容易いだろうが、それで解決する確証はなかった。

「英仁、明後日でいいか?」
「ああ」
「すまないが、明後日、10時にここに血縁者を集めていただけますか?」
「はい、承知いたしました」

 則人も動揺はしていたが、返事をすると、英仁と光峯と風蓮は玄関の方へ向かうために立ち上がった。

「ど、どこへ行くの?」
「私はしばらく光峯のところに泊まるよ、君はここにいてもいいし、実家に帰ってもいい。好きにするといい」
「そんな……」
「今は離れた方がいい。検査薬も買って来てくれたようだから、調べてみたらどうだい?」

 お手伝いさんは戻ってきており、妊娠検査薬を買って来てくれていたが、調べましょうという空気ではなく、やはり英仁と光峯と風蓮は興味がないようだった。

 三人は出て行き、広いマンションには涼希、花穂、美里、則人が残った。

「私は連絡をするよ」
「そうね」

 則人は少し離れたところで連絡を始めると、美里は涼希のそばに寄り添った。

「検査してみたら?子どもがいれば少しは違うかもしれないわ」
「でも、運命の相手ではないかもしれないって、子どもができていてもどうなるの……」
「養育費は払ってくれるわよ」
「養育費って、私が離婚されるってこと……?」

 美里の中では、離婚されるかもしれないということを考えていたために、思わず養育費という言葉が口から出ていた。
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