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疑惑
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「郁ちゃんが、英仁さんの運命の相手だって言うの!そんなことあり得ない、あってはならないのよ」
涼希は首を振りながら顔を伏せて、両手をクロスして自分を抱きしめた。
「それはまだ分かりません。もしかすると、全く血縁者ではない関係のない人かもしれない。そうなると、見付けるのは大変だろう」
風蓮の仮説として、血縁関係だから魂の入れ替えが可能であった。運命の相手が見付かれば、現象の説明はつくのではないかと考えられていた。
「でも、涼希は悪くないってことですよね?郁だったら、郁が何らかの手を使って、悪いことをしたってことですよね?」
「美里ッ」
美里は郁の両親と兄である洋介と夏、拓実のことは視界に入っていないかのように、叫んだ。則人がさすがに諫めたが、美里の耳には入っていなかった。
「だが、結婚式の時に会っているじゃないか」
さすがに洋介も郁が悪いかのように言われて、言い返した。
「その郁さんが悪いとは言えません。もし、郁さんだったとしても、まだ涼希さんか郁さんか、どちらが運命の相手だとは断定できません」
「どういうことですか?」
「一時的という可能性も考えています」
「一時的……」
「はい、英仁と涼希さんは約五年一緒に過ごして来ており」
「そうです!」
涼希は諦めてはいなかったが、自分がまだ運命の相手である可能性が見えて、大きな声で縋るように答えた。
「五年間は問題がなかった。ただ、運命の相手が涼希さんなのに郁さんと魂が入れ替わったのか、運命の相手が郁さんなのに涼希さんと入れ替わったのか、これはすぐには分からないかもしれません」
「そんな……」
自分が運命の相手ならば、いくらでも待てるが、そんな確証もないまま、郁が運命の相手だとされて、待つなんて耐えられない。
「英仁が郁さんを運命の相手と認識する可能性もあります。だが、それも入れ替えられたこととするならば、一生ではないでしょう」
「私を認識するようになるということですか」
「可能性はあります」
話を聞いていた花穂は、自分は違うと分かったから冷静であったこともあるが、その姉妹はどうなったのかが気になった。
「あの、その姉妹というのはどうなったのですか?」
「その姉妹は妹が運命の相手で、入れ替えられたのは姉でした。その後は妹が運命の相手の相手と認識されたままでした」
置き換えるならば、涼希が間違えられたということになり、花穂は焦ってしまったが、それでも聞いておかなければならない。
「妖様の力ではないのですか?」
「そうではない、と考えられています」
「そうですか」
妖でもそこまでは分からない。どうしてこんなことが起きたのか、どのくらいの間、入れ替えられていたのかも分からない。
覚書しかないということは、書き残したくもなかったのかもしれない。
もしも、血縁者にいないのであれば、英仁は再度相手を探すと言っており、涼希とは万が一のことを考えて、しばらくは別居でもいいが、いずれは離婚となる。
英仁にとって、涼希を過去のように殺さなかったどころか、罵らなかっただけでも、マシだったただろう。
「今の状態では、英仁と涼希さんが一緒に暮らすことは困難だとお考えください」
「っ、そんな」
そんな話をしていると、インターフォンが鳴った。
お手伝いさんが対応しているが、皆に緊張が走ったが、聞こえて来たのは男性の声であった。ということは、京であるこということであった。
一気に緊張が緩んだが、事実を先延ばしにしているだけである。
「お邪魔します」
「連絡を取り合って、一緒に来たんです」
京だけだと思っていたのだが、女性の声もして、再び緊張が走った。詠かと思ったが、彼女の落ち着いた声ではなく、明るい声であることに気付いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日、同時刻より、
新作「さよならの代わりは」を投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
涼希は首を振りながら顔を伏せて、両手をクロスして自分を抱きしめた。
「それはまだ分かりません。もしかすると、全く血縁者ではない関係のない人かもしれない。そうなると、見付けるのは大変だろう」
風蓮の仮説として、血縁関係だから魂の入れ替えが可能であった。運命の相手が見付かれば、現象の説明はつくのではないかと考えられていた。
「でも、涼希は悪くないってことですよね?郁だったら、郁が何らかの手を使って、悪いことをしたってことですよね?」
「美里ッ」
美里は郁の両親と兄である洋介と夏、拓実のことは視界に入っていないかのように、叫んだ。則人がさすがに諫めたが、美里の耳には入っていなかった。
「だが、結婚式の時に会っているじゃないか」
さすがに洋介も郁が悪いかのように言われて、言い返した。
「その郁さんが悪いとは言えません。もし、郁さんだったとしても、まだ涼希さんか郁さんか、どちらが運命の相手だとは断定できません」
「どういうことですか?」
「一時的という可能性も考えています」
「一時的……」
「はい、英仁と涼希さんは約五年一緒に過ごして来ており」
「そうです!」
涼希は諦めてはいなかったが、自分がまだ運命の相手である可能性が見えて、大きな声で縋るように答えた。
「五年間は問題がなかった。ただ、運命の相手が涼希さんなのに郁さんと魂が入れ替わったのか、運命の相手が郁さんなのに涼希さんと入れ替わったのか、これはすぐには分からないかもしれません」
「そんな……」
自分が運命の相手ならば、いくらでも待てるが、そんな確証もないまま、郁が運命の相手だとされて、待つなんて耐えられない。
「英仁が郁さんを運命の相手と認識する可能性もあります。だが、それも入れ替えられたこととするならば、一生ではないでしょう」
「私を認識するようになるということですか」
「可能性はあります」
話を聞いていた花穂は、自分は違うと分かったから冷静であったこともあるが、その姉妹はどうなったのかが気になった。
「あの、その姉妹というのはどうなったのですか?」
「その姉妹は妹が運命の相手で、入れ替えられたのは姉でした。その後は妹が運命の相手の相手と認識されたままでした」
置き換えるならば、涼希が間違えられたということになり、花穂は焦ってしまったが、それでも聞いておかなければならない。
「妖様の力ではないのですか?」
「そうではない、と考えられています」
「そうですか」
妖でもそこまでは分からない。どうしてこんなことが起きたのか、どのくらいの間、入れ替えられていたのかも分からない。
覚書しかないということは、書き残したくもなかったのかもしれない。
もしも、血縁者にいないのであれば、英仁は再度相手を探すと言っており、涼希とは万が一のことを考えて、しばらくは別居でもいいが、いずれは離婚となる。
英仁にとって、涼希を過去のように殺さなかったどころか、罵らなかっただけでも、マシだったただろう。
「今の状態では、英仁と涼希さんが一緒に暮らすことは困難だとお考えください」
「っ、そんな」
そんな話をしていると、インターフォンが鳴った。
お手伝いさんが対応しているが、皆に緊張が走ったが、聞こえて来たのは男性の声であった。ということは、京であるこということであった。
一気に緊張が緩んだが、事実を先延ばしにしているだけである。
「お邪魔します」
「連絡を取り合って、一緒に来たんです」
京だけだと思っていたのだが、女性の声もして、再び緊張が走った。詠かと思ったが、彼女の落ち着いた声ではなく、明るい声であることに気付いた。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
本日、同時刻より、
新作「さよならの代わりは」を投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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