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緊張
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「遅れて申し訳ありません」
「申し訳ありません」
皆が郁に注目をした。そして、すぐに英仁の様子を伺うように、視線を移した。
だが、英仁は黙ったまま、首を振った。
「じゃあ、詠だというのか……あの子が?」
そう言い出したのは、誠一であった。
その声はどこか弾んでおり、実は自分の娘が妖の運命の相手だったのではないかという気持ちが込められていた。
「そうと決まったわけではありません。詠さんが違えば、血縁者は違うということが明らかになります」
郁と京は洋介に話を聞き、郁は自分が疑われていたことにギョッとした。そして、今度は詠が疑われていることに、京は怪訝な顔をした。
「姉さんは結婚しているんだ、そんなはずないだろう」
「だが、もしも詠だったら……詠なら涼希と同じ年だ。ある意味、一番近い血縁者ではないか?」
「お兄ちゃん、何てことを言うの!」
美里はいくら兄でも言っていいことと悪いことがあると、カッとなった。
「だが、そうだろう?二人だけが同い年だろう?」
田生家と三島家の孫世代で、同い年なのは涼希と詠だけである。
「でも、結婚式で英仁さんとは会っているでしょう?しかも、詠は他の男の子どもを産んでいるのよ!」
「魂がどうこうということなのだから、会っていても分からないのではないか?」
「いい加減にしてよ!もし、そうだったら、詠が何かしたかもしれないのよ?」
「それはないだろう。夫の子どももいるのに、詠が何かするはずがないだろう」
誠一はカッとなり易く、賢い人間ではないが、珍しく話が通っていた。
しかも、美月のことで美里とは昔のような庇うだけのような関係ではなくなっており、自分の娘が本物かもしれないと考えるようになっていた。
涼希が違うとなっても、自分の娘が本物なら、どちらにしろ安泰ではないか。むしろ、今度は自分がいい思いができるとすら考えていた。
「涼希のことが羨ましかったんでしょう!同い年なのに、妖様の運命の相手に選ばれたことが!」
「そうか?涼希が結婚した時には詠は既に結婚していたのだぞ?」
「そんなの関係ないわ、そうに決まっている!自分は共働きで、お金もどうせないんでしょう?いくら子どもがいたって、お金がないのなら可哀想なだけだわ」
「美里……言い過ぎだ」
則人がさすがに諫めたが、妖側はその様子を冷めた様子で見つめていた。
「姉さん、あと少しで着くって」
「っ」
京も混乱していたが、詠からメッセージが届いた。
他の皆は詠は結婚しているために、英仁の運命の相手だとは思ってはいなかったが、これでもしも運命の相手だったら、どうなってしまうのかと不安にもなった。
そして、一番の当事者である涼希はおかしくなりそうだった。
「詠ちゃんは結婚しているの、絶対にないわ」
「そうよ、そうよね」
「結婚している女性が、運命の相手だと分かった例はありますよ」
さすがに黙っていた光峯が口を挟んだ。
「子どもだって」
「はい、子どもがいた女性が運命の相手だと分かった例もあります」
「でも、でも」
「その場合は、どうなるのですか?」
黙って様子を伺っていた拓実は、自身も結婚した身としては他人事とは思えなかった。万が一、詠が選ばれたらどうなってしまうのかと問い掛けた。
「そうですね、相談の上で離婚していただくことをお勧めしております」
「諦めるということはないのですか?」
「はい、慰謝料や子どもがいる場合は、養育費なども負担しますし、何か希望があれば叶えます。それだけ妖にとって運命の相手は特別ですから」
その言葉に孫世代はゾッとした。
それはお金に物を言わせ、さらに立場もあることから、運命の相手も、運命の相手の夫や子どもを脅すのではないか。
どうか、詠が運命の相手ではないことを願うしかなかった。
そして、インターフォンが鳴り、女性の声が聞こえた。もう血縁の訪問者は詠しかいない。
様々な思いが渦巻くリビングに、詠がやって来た。
「申し訳ありません」
皆が郁に注目をした。そして、すぐに英仁の様子を伺うように、視線を移した。
だが、英仁は黙ったまま、首を振った。
「じゃあ、詠だというのか……あの子が?」
そう言い出したのは、誠一であった。
その声はどこか弾んでおり、実は自分の娘が妖の運命の相手だったのではないかという気持ちが込められていた。
「そうと決まったわけではありません。詠さんが違えば、血縁者は違うということが明らかになります」
郁と京は洋介に話を聞き、郁は自分が疑われていたことにギョッとした。そして、今度は詠が疑われていることに、京は怪訝な顔をした。
「姉さんは結婚しているんだ、そんなはずないだろう」
「だが、もしも詠だったら……詠なら涼希と同じ年だ。ある意味、一番近い血縁者ではないか?」
「お兄ちゃん、何てことを言うの!」
美里はいくら兄でも言っていいことと悪いことがあると、カッとなった。
「だが、そうだろう?二人だけが同い年だろう?」
田生家と三島家の孫世代で、同い年なのは涼希と詠だけである。
「でも、結婚式で英仁さんとは会っているでしょう?しかも、詠は他の男の子どもを産んでいるのよ!」
「魂がどうこうということなのだから、会っていても分からないのではないか?」
「いい加減にしてよ!もし、そうだったら、詠が何かしたかもしれないのよ?」
「それはないだろう。夫の子どももいるのに、詠が何かするはずがないだろう」
誠一はカッとなり易く、賢い人間ではないが、珍しく話が通っていた。
しかも、美月のことで美里とは昔のような庇うだけのような関係ではなくなっており、自分の娘が本物かもしれないと考えるようになっていた。
涼希が違うとなっても、自分の娘が本物なら、どちらにしろ安泰ではないか。むしろ、今度は自分がいい思いができるとすら考えていた。
「涼希のことが羨ましかったんでしょう!同い年なのに、妖様の運命の相手に選ばれたことが!」
「そうか?涼希が結婚した時には詠は既に結婚していたのだぞ?」
「そんなの関係ないわ、そうに決まっている!自分は共働きで、お金もどうせないんでしょう?いくら子どもがいたって、お金がないのなら可哀想なだけだわ」
「美里……言い過ぎだ」
則人がさすがに諫めたが、妖側はその様子を冷めた様子で見つめていた。
「姉さん、あと少しで着くって」
「っ」
京も混乱していたが、詠からメッセージが届いた。
他の皆は詠は結婚しているために、英仁の運命の相手だとは思ってはいなかったが、これでもしも運命の相手だったら、どうなってしまうのかと不安にもなった。
そして、一番の当事者である涼希はおかしくなりそうだった。
「詠ちゃんは結婚しているの、絶対にないわ」
「そうよ、そうよね」
「結婚している女性が、運命の相手だと分かった例はありますよ」
さすがに黙っていた光峯が口を挟んだ。
「子どもだって」
「はい、子どもがいた女性が運命の相手だと分かった例もあります」
「でも、でも」
「その場合は、どうなるのですか?」
黙って様子を伺っていた拓実は、自身も結婚した身としては他人事とは思えなかった。万が一、詠が選ばれたらどうなってしまうのかと問い掛けた。
「そうですね、相談の上で離婚していただくことをお勧めしております」
「諦めるということはないのですか?」
「はい、慰謝料や子どもがいる場合は、養育費なども負担しますし、何か希望があれば叶えます。それだけ妖にとって運命の相手は特別ですから」
その言葉に孫世代はゾッとした。
それはお金に物を言わせ、さらに立場もあることから、運命の相手も、運命の相手の夫や子どもを脅すのではないか。
どうか、詠が運命の相手ではないことを願うしかなかった。
そして、インターフォンが鳴り、女性の声が聞こえた。もう血縁の訪問者は詠しかいない。
様々な思いが渦巻くリビングに、詠がやって来た。
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