【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

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契約

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「絶望?何が絶望なんだ……」
「ここにいる方は、今日から絶望することになるの」

 詠は鋭い目つきで、全員を見渡した。

「どうして魂が入れ替わったのですか?」
「私が30歳になるまでという約束だったからね」
「30歳」
「30歳……っあ」

 その言葉に詠の誕生日を知る者は、ハッとした。誠一も祝うことはなかったが、詠の誕生日だなとは思っていた。

 京と郁は、メッセージを送って、祝っていたので覚えていた。

「詠の誕生日」
「一昨日」
「花穂と一緒だったわよね」

 年齢は違うが、詠と花穂の誕生日は同じであった。

「花穂さんと同じなのですか?」
「ええ、もしかして、花穂ちゃんと勘違いしたかしら?」

 詠はにこにこ笑いながら、嬉しそうに涼希、花穂、美里、則人を見たが、皆は驚いた顔をしたままであった。

「そうなったら面白いと思っていたのだけど」

 入れ替わったことを知る由もないが、花穂と誤解されたら面白いなと考えていた。

「30歳で、元に戻ったということですか?」
「そうね。そういえば、お母さんの親族は呼ばなかったのね、ああそっか、関係ないものね。まあ、いいのだけど」

 涼希を起点として親族が呼ばれているために、美月の親族は呼ばれていない。

「一体、どうなって、そんなことになったのですか?」

 風蓮は誕生日がきっかけであったことは分かったが、それでもどうしてこんなことが起きたのか、軌道修正を行った。

「契約よ」
「契約?」
「やっぱりあなたが、何かしたって言うの!だったら、本当は涼希が運命の相手なんじゃないの!」

 美里は運命の相手とされた人間が、何かしたのかもしれないと聞いていたことを思い出し、叫んだが、詠はバッサリと答えた。

「違います」
「でも、おかしいじゃない」

 涼希は現実とは思えず、花穂にもたれ掛かりながら、その様子を見ていた。

「おかしいのはあなたの娘よ!」
「は?」
「花穂ちゃんじゃないわ、涼ちゃんよ」

 皆の視線がぐったりとした涼希に向いたが、涼希は意味が分からなかった。

「私は、何も知らないわ!詠ちゃん、私に恨みがあるの?私が何をしたって言うの?私は何かした覚えなんてないわ!」
「それはいずれ分かるわ」
「詠ちゃん、本当に涼希が何かしたの?」

 詠と涼希は同じ年で、比べられることもあっただろうが、涼希は詠を嫌っていたわけではない。涼希は妖様と結婚をしたが、詠は既に結婚をしていた。

 羨ましいと思うような嫉妬があったとも思えない。

「そうね、花穂ちゃんはどうして便乗して結婚してしまったの?」
「っえ」
「予定外だったのよね、子どもまで産んでしまって、驚いたわ……」

 花穂は一体、涼希が何をしてしまったのか。どうして私までも困った顔をされるのか、背中が冷たくなるほどの不安が襲っていた。

「それで、契約とは何ですか?」
「ある契約によって、涼ちゃんと私の魂が入れ替わっていたの」
「誰がそんなことを」
「それは本人に聞いた方がいいわ」

 そう言って、詠は再び、涼希に視線を向けた。

「涼希さんだと言うのですか?」
「ええ」
「そんな契約なんて知らないわ!本当よ!そんなことしていない!私は英仁さんに選ばれただけよ!」

 涼希は体を立て直して、必死で首を振り、否定した。

「涼ちゃんは呪われるはずだった」
「っな……呪いなんて」

 呪いなどただのまやかしだと思いたいが、妖がおり、魂が入れ替わっていたかもしれないことに、否定することはできなかった。

「呪いですか?」
「ええ、でも私の誕生日までは待ってもらうことになっているの」
「誰にですか?」
「それはあなたが知ることではないわ」
「ですが」
「人間って最初から絶望するより、途中から突き落とされる方が辛いでしょう?涼ちゃん、少しは幸せだった?」
「っな、どういう……」

 涼希の目をじっと見つめる詠は酷く冷たく、恐ろしく思えた。
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