46 / 70
別れ
しおりを挟む
「艶零、崇景、絋琳の責任も取らなくてはならないのです」
「それは私のせいで……待ってくれ、本当に」
英仁は目を血走らせて、消えつつある詠に近寄ろうと、立ち上がった。
「夫と子どもに近付けば、関係者には天罰が下りますので、弁えてくださいね」
これは伝えても伝えなくても良かったが、妖にとって天罰というのは人間以上に重く受け止めるはずだと聞かされていた。
事実、三人は渋い表情を浮かべていた。
「どうして」
「いや、待ってください。猶予はないのですか」
「殺した時、殺された時、猶予なんてありませんでしたよ。さようなら」
史南詠は、英仁と光峯と風蓮、絵久美の前から何もなかったかのように消えた―――。
そして、詠は場所を移して、階段から落ちて、病院に運ばれたが、亡くなったと桐人に連絡が入った。
桐人は覚悟をしていた、ずっと覚悟していたが、スマートフォンを持つ手の震えが止まらなかった。
学校から帰っていた頼を連れて、病院に急いだ。事件性はなく、足を踏み外して、頭を打ったことが原因だったと説明を受けたが、桐人だけは理由を分かっていた。
息をしていない詠に会っても、分かっていても涙が止まらなかった。
「お父さん、お母さんどうしたの?」
桐人の様子に、頼も不安になった。
「お母さんは、天国へ行ったんだ」
「死んだってこと?」
「そうだ」
祖母である美月も亡くなっているために、頼は死を理解している。
「嫌だよ、何で、何で……」
泣き出した頼を抱きしめて、背中を擦ることしかできなかった。なかった世界では、先に殺されたために、詠の死を知ることはなかった。
それでも、これからは二人でまた生きて行かなくてはならない。
詠のどうしてもあなたたちを守りたいという気持ちを、受け入れなくてはならない。
「お母さん、急いでいたのかもしれないね」
「ゆっくり帰ってくれば良かったのに」
「そうだな」
詠は今日は仕事にしていたが、午前中は桐人も有休を取って、詠と色んな話していた。そして、別れた―――これが最期になることは分かっていた。
引き留めて逃げたかった、きっと詠も同じ気持ちだっただろう。
だが、詠は高校生のころと変わらない笑顔を見せて、運命は変わらないと、詠は自分たちも殺された、あのマンションに向かった。
そして、言われていた通り、亡くなったという連絡をもらった。
葬儀は家族葬にして、桐人の家族と誠一と京にだけには知らせた。
二人は憔悴したような顔をしていたが、慌ててやって来た。
「どういうことだ?」
「どうして」
「駅の階段で、足を踏み外した事故だそうです……事件性はありません」
桐人は何も知らない振りをすればいいと詠から言われており、亡くなった事実だけを伝えた。
二人は詠の遺体を見つめて、混乱しているようだった。
「なぜだ……事故?」
「姉さん……何で姉さんが、関係ないんだろう?どういうことだ」
桐人も呪いのことも聞いているが、なかった世界について一切説明する気はない。
「桐人さん、姉さんから何から聞いていますか?」
「いえ、何も連絡はなかったものですから、急いで帰っていたのかもしれません」
「そ、そうですか」
誠一が親族に連絡をしたようで、自分たちも大変な状況ではあったが、慌てて駆け付けて、詠の顔を見て混乱しているようであった。
やっぱり呪いがと言っている人もいた。
誰にも黙って葬儀を行うこともできたが、詠を隠していると思われては困るために、事実を突きつけなくてはならなかった。
天宮英仁も真っ青な顔をして、やって来た。誠一が対応していたために、桐人は近寄ることもなかった。頼のところへも来ることはなかった。
もしかしたら、これが守られているということなのかもしれないと考えていた。
そして、お通夜と葬儀は無事に終わり、詠はあまりにも小さくなって帰って来た。
「それは私のせいで……待ってくれ、本当に」
英仁は目を血走らせて、消えつつある詠に近寄ろうと、立ち上がった。
「夫と子どもに近付けば、関係者には天罰が下りますので、弁えてくださいね」
これは伝えても伝えなくても良かったが、妖にとって天罰というのは人間以上に重く受け止めるはずだと聞かされていた。
事実、三人は渋い表情を浮かべていた。
「どうして」
「いや、待ってください。猶予はないのですか」
「殺した時、殺された時、猶予なんてありませんでしたよ。さようなら」
史南詠は、英仁と光峯と風蓮、絵久美の前から何もなかったかのように消えた―――。
そして、詠は場所を移して、階段から落ちて、病院に運ばれたが、亡くなったと桐人に連絡が入った。
桐人は覚悟をしていた、ずっと覚悟していたが、スマートフォンを持つ手の震えが止まらなかった。
学校から帰っていた頼を連れて、病院に急いだ。事件性はなく、足を踏み外して、頭を打ったことが原因だったと説明を受けたが、桐人だけは理由を分かっていた。
息をしていない詠に会っても、分かっていても涙が止まらなかった。
「お父さん、お母さんどうしたの?」
桐人の様子に、頼も不安になった。
「お母さんは、天国へ行ったんだ」
「死んだってこと?」
「そうだ」
祖母である美月も亡くなっているために、頼は死を理解している。
「嫌だよ、何で、何で……」
泣き出した頼を抱きしめて、背中を擦ることしかできなかった。なかった世界では、先に殺されたために、詠の死を知ることはなかった。
それでも、これからは二人でまた生きて行かなくてはならない。
詠のどうしてもあなたたちを守りたいという気持ちを、受け入れなくてはならない。
「お母さん、急いでいたのかもしれないね」
「ゆっくり帰ってくれば良かったのに」
「そうだな」
詠は今日は仕事にしていたが、午前中は桐人も有休を取って、詠と色んな話していた。そして、別れた―――これが最期になることは分かっていた。
引き留めて逃げたかった、きっと詠も同じ気持ちだっただろう。
だが、詠は高校生のころと変わらない笑顔を見せて、運命は変わらないと、詠は自分たちも殺された、あのマンションに向かった。
そして、言われていた通り、亡くなったという連絡をもらった。
葬儀は家族葬にして、桐人の家族と誠一と京にだけには知らせた。
二人は憔悴したような顔をしていたが、慌ててやって来た。
「どういうことだ?」
「どうして」
「駅の階段で、足を踏み外した事故だそうです……事件性はありません」
桐人は何も知らない振りをすればいいと詠から言われており、亡くなった事実だけを伝えた。
二人は詠の遺体を見つめて、混乱しているようだった。
「なぜだ……事故?」
「姉さん……何で姉さんが、関係ないんだろう?どういうことだ」
桐人も呪いのことも聞いているが、なかった世界について一切説明する気はない。
「桐人さん、姉さんから何から聞いていますか?」
「いえ、何も連絡はなかったものですから、急いで帰っていたのかもしれません」
「そ、そうですか」
誠一が親族に連絡をしたようで、自分たちも大変な状況ではあったが、慌てて駆け付けて、詠の顔を見て混乱しているようであった。
やっぱり呪いがと言っている人もいた。
誰にも黙って葬儀を行うこともできたが、詠を隠していると思われては困るために、事実を突きつけなくてはならなかった。
天宮英仁も真っ青な顔をして、やって来た。誠一が対応していたために、桐人は近寄ることもなかった。頼のところへも来ることはなかった。
もしかしたら、これが守られているということなのかもしれないと考えていた。
そして、お通夜と葬儀は無事に終わり、詠はあまりにも小さくなって帰って来た。
993
あなたにおすすめの小説
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません
しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」
――それは私を縛る呪いの言葉だった。
家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。
痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。
でも、、そんな私、私じゃない!!
―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。
「私の人生に、おかえりなさい。」
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
三年目の離婚から始まる二度目の人生
あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。
三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。
理由はただ一つ。
“飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。
女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。
店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。
だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。
(あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……)
そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。
これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。
今度こそ、自分の人生を選び取るために。
ーーー
不定期更新になります。
全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる