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呪い2
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「そこまで覚悟をして、行うべきだったと思うわ。まあ、覚悟の前に冷静になれば、間違いだって分かることよね」
「詠ちゃんは、自殺なの?」
「分からないわ、事故だと言われているけど、あの日に亡くなったのよ?出来過ぎていると思うでしょう?」
「どうして……」
「そんなこと分からないわ」
詠が亡くなることは、決まっていたような気がしてならなかった。
生きていたとしても、詠は英仁を受け入れない。だからと言って突っぱねる力がどこまであるか。ならば、いなくなってしまえばいい。
詠は幼い頃は多少癇癪持ちだったが、よく笑う子だった。だが、成長するにつれて、酷く冷静な時があり、頑固なところもあった。
それが自分の家族を守るためなら、迷わず選択をする気がしていた。
亡骸からは何も感じ取れなかったが、それ以上についさっきまで動いて話していた詠が動かないことに、頭が追い付かなかった。
何かの力で死んだことにして、実は生きていて、家族と生きているのなら、そう願いたいと思うほどだった。
「詠ちゃんは幸せではなかったのよね……」
「良い暮らしを与えられていたけど、多分、そうでしょうね」
「涼希は幸せだったのでしょう?」
「っ、それは」
「詠も独身だったら、恋人がいなかったら、違ったかもしれない。でも出会った時には夫も子どももいたの。子どもと引き離されて、辛かっただろうと、私も分かるわ」
なかった世界では花穂は詠は妖の運命の相手に選ばれたのだから、嫁ぐしかないと聞かされていた。
だが、周りから嫁ぐしかない状況に置かれて、詠が言っていたように、涼希とは違って、窮屈な暮らしをさせられていたのだろうと思う。
「子どもは……私だって」
「涼希も望んでいたのだから辛かったでしょうけど、詠も辛かったのよ」
自分には子どもができたことから、涼希には申し訳ない気持ちはあった。
だが、授かりものであるために、どうしようもないと、慰めても花穂には分からないと思われるのではないかと、話を聞くことだけにしていた。
だから、詠の言葉は怒りも持った。
「涼希は、できていなくて正しかったのよ」
「お姉ちゃんッ!」
「詠の子どもは全員、殺されているのよ?養育費欲しさに必要だったってまだ言うつもり?」
「そんなことは!でも涼希だって苦しんで」
「それ以上に、詠は苦しんだの。それを涼希は笑っていたの。どちらが酷いかなんて、考えるまでもないでしょう?」
「でも!」
「逆だと思って考えてみてよ!涼希の子どもがいて、その子が殺されるのを詠が笑いながら見ていたら、どう思う?許せる?」
「それは……」
美里は自分の気持ちにあまりに素直に生き過ぎており、置き換えて考えることができない。小さな世界で、嫌われながら生きて来たのだから、これからは自慢することもなく、またその世界で生きるしかない。
「こんなことなら、詠にちゃんと謝っておけばよかったわ……」
「許してなんてくれないわよ、こんなことまでしたんだから」
「許してもらうためではないの!悪いことをした、だから謝るのよ、許してもらいたいからでも、自己満足でもないわ」
「復讐されたのよ」
「当然でしょう?殺されて戻って来たら、私でもそうするわ」
想像するまでもなく、花穂が詠だったら、そうするだろう。逃げられないことは、詠は誰よりも分かってもいたはずである。
「ママも責任をちゃんと感じて、これからは妖の運命の相手の親ではなく、妖の運命の相手だと騙したこの親になるの」
「っな、そんな言い方」
「事実じゃない、私も奏さんにはなしをしなくてはならないの」
「でも、わざわざ」
妖には敵わないが奏も高所得者で、これからの田生家を支えてもらわなくてはならないと考えていた美里は、黙っていることもできるのではないかと考えた。
「詠ちゃんは、自殺なの?」
「分からないわ、事故だと言われているけど、あの日に亡くなったのよ?出来過ぎていると思うでしょう?」
「どうして……」
「そんなこと分からないわ」
詠が亡くなることは、決まっていたような気がしてならなかった。
生きていたとしても、詠は英仁を受け入れない。だからと言って突っぱねる力がどこまであるか。ならば、いなくなってしまえばいい。
詠は幼い頃は多少癇癪持ちだったが、よく笑う子だった。だが、成長するにつれて、酷く冷静な時があり、頑固なところもあった。
それが自分の家族を守るためなら、迷わず選択をする気がしていた。
亡骸からは何も感じ取れなかったが、それ以上についさっきまで動いて話していた詠が動かないことに、頭が追い付かなかった。
何かの力で死んだことにして、実は生きていて、家族と生きているのなら、そう願いたいと思うほどだった。
「詠ちゃんは幸せではなかったのよね……」
「良い暮らしを与えられていたけど、多分、そうでしょうね」
「涼希は幸せだったのでしょう?」
「っ、それは」
「詠も独身だったら、恋人がいなかったら、違ったかもしれない。でも出会った時には夫も子どももいたの。子どもと引き離されて、辛かっただろうと、私も分かるわ」
なかった世界では花穂は詠は妖の運命の相手に選ばれたのだから、嫁ぐしかないと聞かされていた。
だが、周りから嫁ぐしかない状況に置かれて、詠が言っていたように、涼希とは違って、窮屈な暮らしをさせられていたのだろうと思う。
「子どもは……私だって」
「涼希も望んでいたのだから辛かったでしょうけど、詠も辛かったのよ」
自分には子どもができたことから、涼希には申し訳ない気持ちはあった。
だが、授かりものであるために、どうしようもないと、慰めても花穂には分からないと思われるのではないかと、話を聞くことだけにしていた。
だから、詠の言葉は怒りも持った。
「涼希は、できていなくて正しかったのよ」
「お姉ちゃんッ!」
「詠の子どもは全員、殺されているのよ?養育費欲しさに必要だったってまだ言うつもり?」
「そんなことは!でも涼希だって苦しんで」
「それ以上に、詠は苦しんだの。それを涼希は笑っていたの。どちらが酷いかなんて、考えるまでもないでしょう?」
「でも!」
「逆だと思って考えてみてよ!涼希の子どもがいて、その子が殺されるのを詠が笑いながら見ていたら、どう思う?許せる?」
「それは……」
美里は自分の気持ちにあまりに素直に生き過ぎており、置き換えて考えることができない。小さな世界で、嫌われながら生きて来たのだから、これからは自慢することもなく、またその世界で生きるしかない。
「こんなことなら、詠にちゃんと謝っておけばよかったわ……」
「許してなんてくれないわよ、こんなことまでしたんだから」
「許してもらうためではないの!悪いことをした、だから謝るのよ、許してもらいたいからでも、自己満足でもないわ」
「復讐されたのよ」
「当然でしょう?殺されて戻って来たら、私でもそうするわ」
想像するまでもなく、花穂が詠だったら、そうするだろう。逃げられないことは、詠は誰よりも分かってもいたはずである。
「ママも責任をちゃんと感じて、これからは妖の運命の相手の親ではなく、妖の運命の相手だと騙したこの親になるの」
「っな、そんな言い方」
「事実じゃない、私も奏さんにはなしをしなくてはならないの」
「でも、わざわざ」
妖には敵わないが奏も高所得者で、これからの田生家を支えてもらわなくてはならないと考えていた美里は、黙っていることもできるのではないかと考えた。
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