文字サイズ
小
中
大
特大
26 / 154
覚悟
「お祖母様は賛成ですか」
「あなたに覚悟があるのならば、賛成しますよ」
「覚悟…」
「ありませんか、覚悟が」
「はい…」
ようやくトイズとリリーの素性と、関係性は分かったが、高位貴族と関わりたくない理由がもう一つある。
「そうですか、覚悟が決まったら力になりますよ」
「意外です…」
「反対すると思いましたか」
「はい…」
「もしもレピアだったら、何としてでも反対したでしょうけど、お祖父様も同じ意見ですよ」
「お祖父様も?」
祖父であるランドマーク前侯爵は、現在、詳しい理由は分からないが、隣国に行っている。ゆえにわざわざ連絡を取ったということだろう。
「ええ、ですからあなたの覚悟次第と伝えておきます」
「ありがとうございます。よく考えてみます」
「何かあったら、遠慮せずに連絡しなさい」
「はい」
スノーがレリリス伯爵家に戻る際も同じことを言ってくれた。血の繋がりもないのに、とても正しい人は、ホッとする。
寮に帰って、覚悟について考えてみることにした。婚約をして欲しいと言われることはないが、リアンスから諦めてはいないということは、何度か伝えられている。
でも、会いたくないあの人が一体誰だったのか。知ることになるような気がする。とても怖いのだ。私は殺されるのではないかとすら思っている。
それからもリアンスとは時折、会いながらも、決定的なことが言われないことをいいことに、ずるずると会っているだけのような関係のような気がしていた。
そんな折、王家からリジーナ側妃の産んだルミアーノ第一王女が、国王陛下の子ではなかったと発表され、国内に激震が走った―――。
現在、王家には王妃と側妃が一人いた。王妃は政略で結ばれた隣国・パスライン王国の第二王女で、側妃は自国の伯爵令嬢。
元々、第二王女と婚約している状態で、伯爵令嬢と恋仲になったのだ。破棄されてもおかしくはなかったが、第二王女は然るべき時が来たら、教育を施したうえで側妃にすればいいと言い、王妃が王子を二人産んでから、側妃となった。
第二王女にとっては、愛妾のようなものだった。側妃の教育も使えればいいなくらいに思っていたが、全く使い物にならず、ほとんど公式な行事に出ることはなく、顔を知らない者も多い。
その側妃の産んだ王女は、現在15歳で、側妃によく似ていた。
側妃は離縁された上で、最北端の修道院という名の刑務所に入れられることになった。実家の伯爵家は側妃と王女のこれまでの費用を負担する必要もあり、全財産没収の上で爵位を返上し、平民となった。
年の離れた弟は両親や姉のことを嫌悪し、王妃の紹介で、パスラインに留学し、現在もそのまま留まっており、全く関与していないことは明らかだった。
王妃からも減刑の願いがあり、家族とは縁を切り、パスライン王国の貴族の養子になることになった。
両親は托卵だとは知らなかったが、娘が婚約者のいる王子と恋仲になったことも咎めず、側妃になったことで、横柄に振舞い、脅しとも取れるようなことをしていたことも露見し、関与と同等と判断した。
死罪としなかったのは、側妃に力を持っていなかったのもあるが、国王は恋仲になった当時は良かったが、結婚し、側妃教育を受けるようになった頃から、真面目に受けようともせず、構って欲しいばかりの姿に、愛情はどんどん冷めていた。
それでも既に関係を持っており、側妃にしなければ、嫁ぐところのない彼女を娶るしかなかった。
子どもも一人産ませればいいだろうくらいにしか思っていなかった。それでも裏切っていたことに怒り狂ったが、王妃は当てつけだったのではないかと言われて、己を顧みたからであった。
ルミアーノの父親は、側妃教育でダンスの相手をしていた伯爵家の令息だった。
「あなたに覚悟があるのならば、賛成しますよ」
「覚悟…」
「ありませんか、覚悟が」
「はい…」
ようやくトイズとリリーの素性と、関係性は分かったが、高位貴族と関わりたくない理由がもう一つある。
「そうですか、覚悟が決まったら力になりますよ」
「意外です…」
「反対すると思いましたか」
「はい…」
「もしもレピアだったら、何としてでも反対したでしょうけど、お祖父様も同じ意見ですよ」
「お祖父様も?」
祖父であるランドマーク前侯爵は、現在、詳しい理由は分からないが、隣国に行っている。ゆえにわざわざ連絡を取ったということだろう。
「ええ、ですからあなたの覚悟次第と伝えておきます」
「ありがとうございます。よく考えてみます」
「何かあったら、遠慮せずに連絡しなさい」
「はい」
スノーがレリリス伯爵家に戻る際も同じことを言ってくれた。血の繋がりもないのに、とても正しい人は、ホッとする。
寮に帰って、覚悟について考えてみることにした。婚約をして欲しいと言われることはないが、リアンスから諦めてはいないということは、何度か伝えられている。
でも、会いたくないあの人が一体誰だったのか。知ることになるような気がする。とても怖いのだ。私は殺されるのではないかとすら思っている。
それからもリアンスとは時折、会いながらも、決定的なことが言われないことをいいことに、ずるずると会っているだけのような関係のような気がしていた。
そんな折、王家からリジーナ側妃の産んだルミアーノ第一王女が、国王陛下の子ではなかったと発表され、国内に激震が走った―――。
現在、王家には王妃と側妃が一人いた。王妃は政略で結ばれた隣国・パスライン王国の第二王女で、側妃は自国の伯爵令嬢。
元々、第二王女と婚約している状態で、伯爵令嬢と恋仲になったのだ。破棄されてもおかしくはなかったが、第二王女は然るべき時が来たら、教育を施したうえで側妃にすればいいと言い、王妃が王子を二人産んでから、側妃となった。
第二王女にとっては、愛妾のようなものだった。側妃の教育も使えればいいなくらいに思っていたが、全く使い物にならず、ほとんど公式な行事に出ることはなく、顔を知らない者も多い。
その側妃の産んだ王女は、現在15歳で、側妃によく似ていた。
側妃は離縁された上で、最北端の修道院という名の刑務所に入れられることになった。実家の伯爵家は側妃と王女のこれまでの費用を負担する必要もあり、全財産没収の上で爵位を返上し、平民となった。
年の離れた弟は両親や姉のことを嫌悪し、王妃の紹介で、パスラインに留学し、現在もそのまま留まっており、全く関与していないことは明らかだった。
王妃からも減刑の願いがあり、家族とは縁を切り、パスライン王国の貴族の養子になることになった。
両親は托卵だとは知らなかったが、娘が婚約者のいる王子と恋仲になったことも咎めず、側妃になったことで、横柄に振舞い、脅しとも取れるようなことをしていたことも露見し、関与と同等と判断した。
死罪としなかったのは、側妃に力を持っていなかったのもあるが、国王は恋仲になった当時は良かったが、結婚し、側妃教育を受けるようになった頃から、真面目に受けようともせず、構って欲しいばかりの姿に、愛情はどんどん冷めていた。
それでも既に関係を持っており、側妃にしなければ、嫁ぐところのない彼女を娶るしかなかった。
子どもも一人産ませればいいだろうくらいにしか思っていなかった。それでも裏切っていたことに怒り狂ったが、王妃は当てつけだったのではないかと言われて、己を顧みたからであった。
ルミアーノの父親は、側妃教育でダンスの相手をしていた伯爵家の令息だった。
感想
あなたにおすすめの小説
髪は女の命よ~挙式前日、義妹と婚約者の悪ふざけで髪の毛を切られた聖女は家を捨て、国を捨て、幸せになる
タイトル通りです
聖女ステファニー・エヴァレットにとって、長い銀髪は単なる美しさの象徴ではなかった。
それは、彼女が聖女として生きてきた十八年間の誇りであり、亡き母から受け継いだ唯一の形見だった。
婚約者の妹、王女セリーヌに嫉妬され、耳のあたりでざんばらに切られてしまう。
王太子は、上方のせいで、結婚式がダメになるとも知らずに笑い転げていた。
アナタの大事な女性は許されるのに~わかってくれと言われ続けた令嬢は、もう誰も許さない
タイトル通りです。
恋人には、忍耐と屈辱を味わわせても、本当に大切な女性は、すべて当然のごとく許される。
そんな理不尽を書いてみました。
七年間あなたを信じた妻は、もう二度と振り返らない
タイトル通りです
夫は、私に隠れて、7年もの間、愛人を囲っていた。
その愛人に別荘を買い与え、高価な宝石やドレスをプレゼントしていた。
すべてを知った妻は、離婚を申し立てる。
【完結】毎夜、幼馴染の元へ通う夫へ。完璧な妻の仮面は返上いたします
【祝】HOTランキングランクイン!たくさんの応援ありがとうございます!
社交界で「理想の夫婦」と称えられるグランヴェル伯爵夫妻。だが実態は、毎夜幼馴染の愛人の元へ通う夫レオナルドと、一人冷たいベッドで眠るアメリアの「白い結婚」だった。
愛人に金品を貢ぎ、妻を「冷たい飾り」と見下す夫。しかし彼は知らなかった。己が誇る「優秀な領地経営」を担っていたのが、アメリアの頭脳だったことを――。
限界を迎えたアメリアの知的な罠が弾ける時、偽りの夫と愛人に完膚なきまでの絶望が襲いかかる!
※ハッピーエンド保障
※全5話完結しました
【完結】侯爵令嬢のほうがふさわしいと婚約破棄されたので、もうあなたの後ろには立ちません
婚約破棄された伯爵令嬢クレアは、元婚約者を恨むことも、失った立場にすがることもしなかった。
彼女が選んだのは、新たに任された仕事に誠実に向き合うこと。記録を確かめ、曖昧な契約を整理し、対立する人々の言葉に耳を傾ける。その積み重ねはやがて確かな信用となり、彼女を認める人と新しい未来を引き寄せていく。
一方、爵位ある家との華やかな婚約と大きな商機を選んだ元婚約者ライオネルは、成功を急ぐほど家の足元を見失っていく。
人の未来を決めるのは、与えられた爵位か、それとも積み重ねた信用か。
信用を築く令嬢と、信用を使い果たしていく青年。それぞれの選択が明暗を分ける、復讐ではない静かな逆転の物語。
ごめん。で済まされない愛
リディアローゼ・フェルディナント伯爵令嬢は、ある日の夜会で婚約者のエドガー・ハルフォード侯爵令息から婚約破棄されてしまう。
理由は好きな人ができた。
好きな人とは、ミレーヌ・クロフォード伯爵令嬢。
ミレーヌは、社交界で将来の侯爵夫人を名乗るばかりか、リデイアローゼのことを陰で、さんざん罵っていた。
リディアローゼの6年間の努力を蔑ろにした二人は、次第に後悔の奈落へと突き落とされる。
、
【完結】幼なじみを妻にしたいと仰るなら、どうぞ勅書をお読みください。婚約を命じられたのは侯爵家の嫡男と、私の名でございます
「王命のお相手を、彼女に替えていただけるよう陛下にお願いする」
幼なじみの手を取ったまま、婚約者はそう仰いました。父は「王命だ、我慢しろ」とだけ言い、母は目を伏せました。
ええ、構いません。泣いてすがるつもりも、陛下に申し上げることもございません。
ただ、あの勅書は、読めば分かるように書かれております。
婚約を命じられたのは、侯爵家と伯爵家ではございません。「侯爵家の嫡男」と——私の名です。
名で下された王命は、陛下にしか書き換えられません。そして陛下は、一度下した命を書き換えないお方です。
替えられるのは、私のほうではございませんでした。
今さら勅書を読み返しても、もう遅いのです。
【新作】妹の方が優秀だと辺境へ嫁がされましたが、人を育てていたのは私でした―そして妹も家を出るそうです―
「あなたなら、大丈夫」
華やかで語学に秀でた妹と、地味で堅実な姉。
伯爵家の長女セシリアに決まったのは、遠い辺境伯家への縁談だった。
妹は手元に置いて守りたい。
姉なら、知らない土地でもやっていける。
けれど両親は、セシリアが何を望んでいるのか、尋ねなかった。
帳簿の見方を教え、失敗した使用人と原因を確かめ、少しずつ仕事を任せる。
セシリアが続けてきたことは、両親の目には目立たない手伝いにしか映っていなかった。
自分の意思で縁談を受け入れた彼女は、辺境で新しい暮らしを始める。
すぐに役に立とうとする花嫁に、若き辺境伯が望んだのは、まず一緒に夕食を食べることだった。
仕事をしない日にも、彼女の席はそこにある。
そして彼女が人を育てるほど、領地には仕事を任せられる人が増えていく。
一方、実家では優秀な妹へ仕事が集まり始めていた。
姉が去っても家は回る。けれど、新しくできるようになる人が増えない。
ようやく長女の力を認めた父は、実家へ戻ってほしいと頼む。
「帰って、その仕事を引き受けることはできません」
セシリアは、今の暮らしを選んだ。
姉を心から慕う妹もまた、外交官になるという自分の夢へ歩き始める。
姉なら我慢できる。
妹なら、そばにいてくれる。
そう思っていた両親が娘たちを正しく見た時、二人はもう、親の評価を待ってはいなかった。