【完結】試される愛の果て

野村にれ

文字の大きさ
28 / 154

疑惑

しおりを挟む
 スノーは彼女が側妃だったことに激しく動揺した。

 6歳の時に出席した茶会で見たのは、リリー・ユーフレット侯爵夫人が、リジーナ側妃に詰め寄っている場面だったことになる。

 話していた言葉は顔と違って正確ではないが、『彼の子じゃないの?』『バレたらどうなるのかしらね』『悪いようにはしないから』そんな会話をしていたはずだ。

 癖でその二人も偶然、じっと見つめていたが、聞いてはいけないような話が聞こえて、その場を去ったのだ。おそらく二人はスノーに気付いていたとしても、子どもだからと思ったはずだ。

 リジーナは違う、違うと首を振っていた。彼というのが、ルミアーノ王女の父親を指していたのだろう。

 リリー夫人はなぜ知っていたのか。

 リジーナは死罪にはならなかったようだが、もう二度と表舞台には現れないだろう。だが、脅されることはもうなくなったとも言える。

 王女様が国王陛下の子どもではなかったという秘密を握っていたが、実際はリジーナ側妃は王家で力は持っていなかったという。

 ならば、リリー夫人は脅して、何を得ていたのか。

 リリー夫人は今回のことをどう思っているのか。

 仕事に行っても、リジーナ側妃とルミアーノ元王女の話で持ち切りだった。先輩である同じ伯爵家の令嬢である、ライラが話し掛けて来た。

「驚いたわよね」
「はい…」
「王家は全て決めてから、発表をしたようね。その方が王家の混乱が、伝染しなくて良かったのかもしれないわね。托卵しておいて、死罪でないのには驚かなかった?」
「はい、死罪だと思っていました」

 王家に楯突いて生きていけるとは思っていなかった。

「力がない側妃だったから助かったのかもしれないわね」
「そうかもしれませんね」
「側妃様、もう様はいいわね。教育が足りず、ほとんど出て来なかったから、顔を知らない人も多かったでしょう?」
「はい、私も知りませんでした」

 誰だか知らなかったと言うべきだが、伝わらないので言うつもりはない。

「でしょう?私は今となっては大きな声で言えないけど、伯母が同級生でね」
「どういった方だったのですか」
「うーん、前は恋に恋する感じではあったそうだけど、側妃になってからは弁えていたそうよ。王女はそうはいかないでしょうけどね」
「へえ、これから大変でしょうね」

 これから生きていくのは、いばらの道となるだろう。てっきり修道院に行くのかと思ったが、なかなか逞しい人なのかもしれないと思った。

「ええ、側妃と同じブロンドで、グリーンの瞳だもの。どうしたって隠せないわよ」
「ブロンド…」
「さすがに元王女は知っているでしょう?」
「え、ええ…ブロンドだったなと思って」

 ブロンドというのが、妙に気になり、思い出したことがあった―――。

 スノーはリリーとリジーナを目撃した茶会は、子どもたちの交流が目的で、付き添えない子どもは送り迎えがされることになっていた。

 邸に送って貰うために馬車に乗ったが、今でもわざとだったのか、ミスだったのか分からないが、途中で置き去りにされたのだ。

 自力で帰ろうとしたが、今いる場所がどこかも分からず、方向音痴が災いして、迷い込んでしまった。そこで助けてくれたのが、トイズ・オスレだった。

 だがスノーは貴族街でトイズとリリーが揉めていたのを見ていたために、誘拐かと思ったが、一緒に年老いた女性が一緒にいたことから、自力で帰れそうにもなかったので、彼の手を取るしかなかった。

 汚れた姿だったので、今となってはどこだったのか分からないが、郊外の小さな邸に連れて行かれて、服を綺麗にしてもらい、食事もさせて貰った。

 そこで誰かも知らないまま、トイズと話をした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...