77 / 154
悲しい事実4
しおりを挟む
「聞きます、君は辛いなら席を外すか」
ダリアは再びしくしくと嘆いているメリーアンに、声を掛けた。
「っいいえ、私も聞きます」
「先ほどのこととどちらが辛いか、比べることではないが、私も話すことが心苦しいと思って聞いて欲しい」
「はい」
「はい…」
ダリアは母が義母に殺された以上に辛いことはないと思っており、メリーアンはまだあるの、どうすればいいのかと、だが席を外して、ダリアだけが聞いて、何も知らないではいられないと聞くことにした。
「リリーは、暴行罪、強制性交罪でも裁かれることになる」
「…」
ダリアは暴行罪だけであれば、まだ想定内だっただろうが、予想外の言葉に言葉が出なかった。
「…そんな、母は、母は認めたのですか!」
「ああ、認めている」
「そんな…」
メリーアンの顔は悲しみを帯びていたが、絶望に変わった。
「父に……ですか」
「ああ、そうだ」
ダリアは静かに強い眼差しで、バークスに問い掛けた。
「え…」
ダリアは話の流れから察していたようだが、メリーアンはなぜか相手はトイズではないと思っていた。
「嘘、ですよね…」
「いいや、あのリリーの様子からして、相手はトイズだと思わないか?媚薬を盛って、性行為を強要したそうだ。強い薬で、トイズには記憶がなかった」
「だったら、母だという証拠は」
メリーアンには殺したことに加担した上に、元婚約者で、自身の義父で、夫の父を襲っていたなんて…そもそも男性を襲うなど、同じ女性としても間違いであって欲しかった。そんな母親を持っていることを、認めたくなかった。
「リリーが媚薬を盛ったことも、本人が認めている」
「そんな…嘘…」
メリーアンはどんな顔をしていいか分からず、ダリアの方を見れなかった。
「トイズはマリエルのことを思って、訴えなかった。マリエルが知っていたかは分からない。だが、訴えるべきだったかと、トイズは言っていたそうだ」
「結婚後のことなんですね…」
「そうだ、トイズも結婚しているということは、リリーもユーフレット侯爵と結婚してからのことだ」
「そうですか…」
ここまで来ると、ダリアにとっては想定内のことであった。
だが、リリー夫人は両親が生きている頃は、近付いてくるようなことはなかった。メリーアンと出会う前、婚約する前、結婚する前、せめて子供が生まれる前であったならばと、考えていた。考える時点でダリアは後悔していた。
「ダリア…私、どうやって償えばいいか分からないわ」
「ああ…」
「いくら不甲斐ない母親だったとしても、犯罪を犯すなんて…なんてことを…どうすれば、いいのか」
メリーアンは、ダリアにメリーアンは関係ない。親は親、子は子だと言って欲しかった。
だが、ダリアはそのような精神状態ではなく、両親のことは不幸なことで、仕方ないと諦めながらも、どこかでずっと求めていた。
母は事故で、父は病気、そう思って生きていた。
リリーの名前が挙がっていると聞いても、そんなまさか、間違いだろうと思っていた。でもどこかソワソワする気持ちは抑えられず、メリーアンにここへ来るまでに打ち明けることも出来なかった。
だが、母は殺されて、父は媚薬を飲まされて、襲われていた。それが一生添い遂げようと思っていた、妻の母だと言われたら、私は恨まずにはいられない。
そこへメリーアンの兄・トーラスが慌てた様子で、応接室にやって来た。
「メリーアン、聞いたか?」
「……はい」
「ローザ公爵様、公爵夫人、ランドマーク前侯爵様、ダリア殿も、王城で父が呼んでおりますので、メリーアンを連れて行ってもいいでしょうか」
皆は頷き、メリーアンは後ろ髪を引かれながら、トーラスに連れていかれた。
「一つ聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「今になって、一気に分かったのはなぜですか」
「場所を変えようか」
トーラスもメリーアンもいない以上、ユーフレット侯爵邸にいる意味はない。
ダリアは再びしくしくと嘆いているメリーアンに、声を掛けた。
「っいいえ、私も聞きます」
「先ほどのこととどちらが辛いか、比べることではないが、私も話すことが心苦しいと思って聞いて欲しい」
「はい」
「はい…」
ダリアは母が義母に殺された以上に辛いことはないと思っており、メリーアンはまだあるの、どうすればいいのかと、だが席を外して、ダリアだけが聞いて、何も知らないではいられないと聞くことにした。
「リリーは、暴行罪、強制性交罪でも裁かれることになる」
「…」
ダリアは暴行罪だけであれば、まだ想定内だっただろうが、予想外の言葉に言葉が出なかった。
「…そんな、母は、母は認めたのですか!」
「ああ、認めている」
「そんな…」
メリーアンの顔は悲しみを帯びていたが、絶望に変わった。
「父に……ですか」
「ああ、そうだ」
ダリアは静かに強い眼差しで、バークスに問い掛けた。
「え…」
ダリアは話の流れから察していたようだが、メリーアンはなぜか相手はトイズではないと思っていた。
「嘘、ですよね…」
「いいや、あのリリーの様子からして、相手はトイズだと思わないか?媚薬を盛って、性行為を強要したそうだ。強い薬で、トイズには記憶がなかった」
「だったら、母だという証拠は」
メリーアンには殺したことに加担した上に、元婚約者で、自身の義父で、夫の父を襲っていたなんて…そもそも男性を襲うなど、同じ女性としても間違いであって欲しかった。そんな母親を持っていることを、認めたくなかった。
「リリーが媚薬を盛ったことも、本人が認めている」
「そんな…嘘…」
メリーアンはどんな顔をしていいか分からず、ダリアの方を見れなかった。
「トイズはマリエルのことを思って、訴えなかった。マリエルが知っていたかは分からない。だが、訴えるべきだったかと、トイズは言っていたそうだ」
「結婚後のことなんですね…」
「そうだ、トイズも結婚しているということは、リリーもユーフレット侯爵と結婚してからのことだ」
「そうですか…」
ここまで来ると、ダリアにとっては想定内のことであった。
だが、リリー夫人は両親が生きている頃は、近付いてくるようなことはなかった。メリーアンと出会う前、婚約する前、結婚する前、せめて子供が生まれる前であったならばと、考えていた。考える時点でダリアは後悔していた。
「ダリア…私、どうやって償えばいいか分からないわ」
「ああ…」
「いくら不甲斐ない母親だったとしても、犯罪を犯すなんて…なんてことを…どうすれば、いいのか」
メリーアンは、ダリアにメリーアンは関係ない。親は親、子は子だと言って欲しかった。
だが、ダリアはそのような精神状態ではなく、両親のことは不幸なことで、仕方ないと諦めながらも、どこかでずっと求めていた。
母は事故で、父は病気、そう思って生きていた。
リリーの名前が挙がっていると聞いても、そんなまさか、間違いだろうと思っていた。でもどこかソワソワする気持ちは抑えられず、メリーアンにここへ来るまでに打ち明けることも出来なかった。
だが、母は殺されて、父は媚薬を飲まされて、襲われていた。それが一生添い遂げようと思っていた、妻の母だと言われたら、私は恨まずにはいられない。
そこへメリーアンの兄・トーラスが慌てた様子で、応接室にやって来た。
「メリーアン、聞いたか?」
「……はい」
「ローザ公爵様、公爵夫人、ランドマーク前侯爵様、ダリア殿も、王城で父が呼んでおりますので、メリーアンを連れて行ってもいいでしょうか」
皆は頷き、メリーアンは後ろ髪を引かれながら、トーラスに連れていかれた。
「一つ聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「今になって、一気に分かったのはなぜですか」
「場所を変えようか」
トーラスもメリーアンもいない以上、ユーフレット侯爵邸にいる意味はない。
1,975
あなたにおすすめの小説
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる