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漂う
「ユーフレット侯爵の弟だと知っていたのか?」
「そう…だったのですか?」
「そこは知らなかったのか」
「はい…私も当時は幼く、伯爵が名前をジーリス様と呼んでいたので、家名までは知りませんでした。格上の方だろうとは思っておりましたが」
今回は何者かは分からないが、顔と名前を知っていたということか。
「リリーと一緒にいたところを見たことはあるか?」
「いいえ、ありません」
「そうか、レリリス伯爵家にはジーリスは一人で来ていたのか?」
「おそらく…」
珍しくスノーの陰りのあるような言い方に、オブレオ破棄になった。
「何かあるのか?」
「正直、あまり印象のいい方ではなかったです。伯爵も表向きは遜っていましたが、付き合いたくはないという感じでした」
「レリリス伯爵は何か言っていたか?」
「私が聞いたのは伯爵ではありませんが、執事が危ない男だと言っておりました」
「危ない?」
オブレオにとって、ジーリスは自分を主張するようなことはなく、あまり存在感のある質ではなかった。バークスの印象も同じであった。
「大人しそうな顔をしているが、女性を軽視しており、女性たちはジーリス様が来ている間は、近付かないようにしておりました」
「な…そこまでか」
「はい、伯爵家では何か言われても、抗議は出来ないからと」
「そういうことか」
爵位の一番使ってはならない使い方をしていたのだろう。
「実は後から、レリリス前伯爵夫人である祖母から聞いたのですが、逆らえない女性を食い物にしていたと聞きました。亡くなられているのですよね?」
「ああ、亡くなっている」
「正直、安堵したそうですよ」
両親はともかく、レリリス伯爵家側の祖父母は、スノーがランドマーク侯爵邸にいる頃は、会いに来てくれており、関係は悪くなかった。
「襲われた女性がいるということか?」
「そういうことだと思います。詳しくは聞きませんが、今回のことに何か関わっているのですね?」
「ああ…」
スノーにも、リアンスにも、明日にも鑑定をすることは伝えていない。二人も気にならないと言えば嘘になるが、知る権利はなくていいと言っている。
聞くとすれば、ダリアからメリーアンから聞くべきだろうということだった。
「では、ジーリス様の周りのロビーと呼ばれる方を探してみてください。いつも一緒に来ていましたが、邸には入って来ませんでした、御者なのか、従者なのか。顔も分かりますが、その後に会ったことはありません」
「覗いていたのか?」
「はい、子どもでしたから…誰だろうと思って、窓から」
バークスはスノーも部屋から出さないようにされて、窓から人が見えたのだと思った。まさか、人の顔を覚える特技があるとは思わずに、ただ見ていたのだろう。
「ただ、不思議なことはありました。ロビーは二人いるのです」
「どういうことだ?」
「オスレ伯爵家の侍女の時と同じで、途中から別の方に変わったのですが、呼び名はロビーのままだったのです。その後はずっと同じロビーでした」
「同じ名前だったのか、ジーリスが適当に呼んでいたのか…」
「ただ…二人を並べると似ているのかもしれません」
スノーには違う人に変わったという感覚で、似ているのかは自信がない。
「でも黒子の位置が違ったんです」
「また黒子かい?」
黙って聞いていたリアンスが、スノーに声を掛けた。
「ええ、口元にあるのは同じなのですが、最初の方は口角の下の辺りで、後の方は少し中心寄りでした」
「他に特徴は?」
「子どもの頃なので、身長までは詳しく分かりませんが、高い方だと思います。いつもブラウンの上下を着ていて、目が大きくて、鼻が高くて、黒髪で、茶色い瞳です。黒子は二人とも左側です」
「分かった」
「口元に黒子…」
同じく黙って話を聞いていた、バークスがぽつりと口にした。
「そう…だったのですか?」
「そこは知らなかったのか」
「はい…私も当時は幼く、伯爵が名前をジーリス様と呼んでいたので、家名までは知りませんでした。格上の方だろうとは思っておりましたが」
今回は何者かは分からないが、顔と名前を知っていたということか。
「リリーと一緒にいたところを見たことはあるか?」
「いいえ、ありません」
「そうか、レリリス伯爵家にはジーリスは一人で来ていたのか?」
「おそらく…」
珍しくスノーの陰りのあるような言い方に、オブレオ破棄になった。
「何かあるのか?」
「正直、あまり印象のいい方ではなかったです。伯爵も表向きは遜っていましたが、付き合いたくはないという感じでした」
「レリリス伯爵は何か言っていたか?」
「私が聞いたのは伯爵ではありませんが、執事が危ない男だと言っておりました」
「危ない?」
オブレオにとって、ジーリスは自分を主張するようなことはなく、あまり存在感のある質ではなかった。バークスの印象も同じであった。
「大人しそうな顔をしているが、女性を軽視しており、女性たちはジーリス様が来ている間は、近付かないようにしておりました」
「な…そこまでか」
「はい、伯爵家では何か言われても、抗議は出来ないからと」
「そういうことか」
爵位の一番使ってはならない使い方をしていたのだろう。
「実は後から、レリリス前伯爵夫人である祖母から聞いたのですが、逆らえない女性を食い物にしていたと聞きました。亡くなられているのですよね?」
「ああ、亡くなっている」
「正直、安堵したそうですよ」
両親はともかく、レリリス伯爵家側の祖父母は、スノーがランドマーク侯爵邸にいる頃は、会いに来てくれており、関係は悪くなかった。
「襲われた女性がいるということか?」
「そういうことだと思います。詳しくは聞きませんが、今回のことに何か関わっているのですね?」
「ああ…」
スノーにも、リアンスにも、明日にも鑑定をすることは伝えていない。二人も気にならないと言えば嘘になるが、知る権利はなくていいと言っている。
聞くとすれば、ダリアからメリーアンから聞くべきだろうということだった。
「では、ジーリス様の周りのロビーと呼ばれる方を探してみてください。いつも一緒に来ていましたが、邸には入って来ませんでした、御者なのか、従者なのか。顔も分かりますが、その後に会ったことはありません」
「覗いていたのか?」
「はい、子どもでしたから…誰だろうと思って、窓から」
バークスはスノーも部屋から出さないようにされて、窓から人が見えたのだと思った。まさか、人の顔を覚える特技があるとは思わずに、ただ見ていたのだろう。
「ただ、不思議なことはありました。ロビーは二人いるのです」
「どういうことだ?」
「オスレ伯爵家の侍女の時と同じで、途中から別の方に変わったのですが、呼び名はロビーのままだったのです。その後はずっと同じロビーでした」
「同じ名前だったのか、ジーリスが適当に呼んでいたのか…」
「ただ…二人を並べると似ているのかもしれません」
スノーには違う人に変わったという感覚で、似ているのかは自信がない。
「でも黒子の位置が違ったんです」
「また黒子かい?」
黙って聞いていたリアンスが、スノーに声を掛けた。
「ええ、口元にあるのは同じなのですが、最初の方は口角の下の辺りで、後の方は少し中心寄りでした」
「他に特徴は?」
「子どもの頃なので、身長までは詳しく分かりませんが、高い方だと思います。いつもブラウンの上下を着ていて、目が大きくて、鼻が高くて、黒髪で、茶色い瞳です。黒子は二人とも左側です」
「分かった」
「口元に黒子…」
同じく黙って話を聞いていた、バークスがぽつりと口にした。
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