【完結】試される愛の果て

野村にれ

文字の大きさ
133 / 154

摩擦

しおりを挟む
「またローザ公爵家に行ったそうだな、いい加減にしてくれ。それでなくとも、忙しいんだ…」

 メリーアンはカーサスに呼び出されて、今日のことを叱られていた。

「だって、結婚式に呼ばれなかったのよ!しかも、マーガレットも来ていたって」
「マーガレットが?ダリア殿が連れて来たのか?」
「きっとそうよ、それなのに私が呼ばれないなんておかしいじゃない」
「迷惑を掛けたからだろう」
「一度だけじゃない」
「一度でもだ!何をするか分からない、常識のない者を呼ぶはずがないだろう」

 カーサスは事件のこともあるだろうとは思ったが、抗議には迷惑を掛けられたので、招かなかったと書かれていたので、そのまま伝えることにした。

「常識はあるわ」
「では、なぜ先触れをまた出さなかった?」
「…そ、それは」

 リアンスをどこか利用してもいいと思っていたなんて言えば、怒られると思い、口には出せなかった。

「謝罪に行って来るが、もう二度と行くな。それでどうにか収めて貰う」
「そんな、私は友人なのよ」

 メリーアンはすっかり友人気分でいたが、友人と呼べるのかという関係性であった。友人だったのはリアンスとダリアで、スノーとは数回しかあっていない。

「そうだとしても、お前の今回の行動が問題とされたんだ」

 カーサスは友人としてスノーの名前を聞いたこともなく、訪ねて来たこともなく、メリーアンの言葉を怪しんでいた。

「話せば分かるはずよ」
「ローザ公爵から、あまりに常識がない。関わってくれるなということだ。お前は公爵に盾突くのか?」
「そうじゃなくて、リアンス様とスノーさんに」
「スノー様だ!」

 相手はローザ公爵家だと言うのに、あまりに分かっていない様子に怒鳴った。

「えっ」
「次期公爵夫人だ、ちゃんと立場を弁えろ」
「だから、友人なの。話せば分かるから、大丈夫よ」
「話すならローザ公爵だ、苦情はローザ公爵から来ている」
「だから、取りなして貰えばいいじゃない」

 友人だと言っているのに、お父様は分かっていないんだからと、メリーアンは思っていた。

「いい加減にしてくれ…」
「何よ…」
「お前はそんなに言葉が通じなかったか?」
「だから」
「もういい、謝罪をして来るから、二度と行くんじゃない。分かったな?黙って、部屋に戻れ」
「だから」

 だからを繰り返すメリーアンに酷く苛立った。事件が分かり、離縁されて、情緒不安定なことは分かるが、カーサスは酷く疲れていた。

「いい加減にしろっ!」
「っひ」

 カーサスがメリーアンを、ここまで怒鳴り付けるのは初めてであった。

「お父様、酷いわ…私は被害者なのよ」

 カーサスはもうメリーアンを見るのも嫌であった、執事に促されて、メリーアンは応接室を出るしかなかった。

 メリーアンを王都に留まらせているのは、マーガレットの話し合いがあるためで、早めに話し合いをするべきかもしれないと思うようになっていた。

「父上…大丈夫ですか」

 やって来たのは、トーラスであった。

「メリーアンは、あんなに話が通じなかったか?」
「前からありましたが、酷くなりましたね…」
「そうか」
「馬車をローザ公爵家には行かせないようにしましょう、歩いては行かないでしょうから」
「そうだな」
「メリーアンは私より辛いだろうと思っていましたが、現実を知った方がいいのかもしれません。外にも出たがらなくなるはずです」

 カーサスもトーラスも、非難は勿論、厳しい目で見られている。ある意味、リリーは本人が罪を償っているが、ジーリスは償いようがない。

 メリーアンはトーラスより辛い心情だろうと思っていたが、これ以上、迷惑を掛けられては困る。

「だが、どこで…?」
「喫茶店にでも行かせれば、白い目で見られるはずです」
「そうだな…」

 メリーアンはリリーとは違って、知っている者も多い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...