134 / 154
世間の目
しおりを挟む
「ローザ公爵家には行けません」
「どうしてよ!」
メリーアンはあれだけ言われたのにも関わらず、話をすれば分かると、御者にローザ公爵家に馬車を出すように言っていた。
だが、既にカーサスが手を打っていた。
「当主様にそう言われておりますから」
「私が行くように言っているのよ!」
「恐れながら、お嬢様に公爵家相手に責任が取れるのですか!」
「っな、あなた…」
「何をしてでも止めて欲しいと、当主様に許可を得ております」
カーサスに怒鳴られたことを思い出し、嘘だとは思えなかった。
「気晴らしに喫茶店などに、お連れするならいいと言われております」
「喫茶店?」
そう言えば、ダリアとマリエル様が行っていた、喫茶店に行こうと約束していたのにと思い出して、悲しい気持ちになった。
「はい、買い物などは目に付くので控えて欲しいが、喫茶店程度ならいいと」
「そう…じゃあ行ってみようかしら」
噂話、思い出話に花を咲かせるのが喫茶店である。そこへ無自覚なメリーアンが行くということは、餌を撒きに行くようなものである。
こんな時にと言われても、自覚を持たせるためにカーサスとトーラスは敢えて許可を出した。今日、たまたま話をしている人はいないかもしれないが、メリーアンを見れば、注目を集め、話題になるだろうと考えた。
喫茶店は初めて行く店で、着いたメリーアンは、同行してくれる家族はいなかったので、二人の侍女を伴って個室の席に案内された。侍女も一人ではちょっとと渋ったので、二人付けられることになった。
早速、入店して個室に案内される時点で、既にザワザワしており、厳しい目を向ける者、眉をひそめる者も多かったのだが、メリーアンは注目されるのは侯爵令嬢だから仕方ないと考え、気にもせずに席に着いた。
注文して、静かにお茶を飲んでいたが、女性の声が聞こえ始めた。この店は個室と言っても、聞く気があれば、隣の声は聞こえる程度の個室である。
皆は自分の話で夢中で聞こえていないという体になっており、トーラスは敢えてそのような喫茶店を御者に指定した。
「よく来れるわね~」
「ええ、自分は関係ないとでも思っているんじゃない?」
「でも、離縁されたんでしょう」
「そりゃそうでしょうよ、高飛車だって有名だったから、少しは大人しくなるんじゃないかしら」
「もう表に出れないわよ」
メリーアンは最初は自分のことではないと思っていたが、名前は出ていないが、もしかして自分のことを言っているのではないかと、怒りでカッと赤くなった。
抗議しようと立ち上がろうとしたが、今度は違う声が聞こえて来た。
「よくお茶なんて出来るものだわ!」
「外でお茶も飲むなって思うわね」
「ええ、落ち着いてお茶も飲むことも、笑うことも出来なくなった方々のことを考えないのかしら」
「下々の者とは違うとでも思っているんじゃない?」
「そうかもしれないわね」
メリーアンは私は被害者なのに、どうしてお茶を飲んではいけないのよと、再び怒りでカッとなった。
「母親のこともだけど、あの男は本当に許せないわ」
「殺してくれて、感謝している人の方が絶対に多いはずよ!署名を集めたっていいくらいだわ」
「ええ、殺意を持っていた人なんて人間の指だけでは足りないでしょう。近づけなかったのはあるけど、彼女が殺さなくたって、誰かが殺していたわよ」
「そうね」
ジーリス叔父様のことを言っているのだと思い、座り直した。
さすがのメリーアンも、いくら自分には優しかったジーリスでも、擁護することは反感を買うことだと分かった。
未だにジーリスが父親であることは、受け止め切れていない。だが、リリーに言われた知られたら酷い目に遭うのではないかと、頭の片隅では思っている。
「どうしてよ!」
メリーアンはあれだけ言われたのにも関わらず、話をすれば分かると、御者にローザ公爵家に馬車を出すように言っていた。
だが、既にカーサスが手を打っていた。
「当主様にそう言われておりますから」
「私が行くように言っているのよ!」
「恐れながら、お嬢様に公爵家相手に責任が取れるのですか!」
「っな、あなた…」
「何をしてでも止めて欲しいと、当主様に許可を得ております」
カーサスに怒鳴られたことを思い出し、嘘だとは思えなかった。
「気晴らしに喫茶店などに、お連れするならいいと言われております」
「喫茶店?」
そう言えば、ダリアとマリエル様が行っていた、喫茶店に行こうと約束していたのにと思い出して、悲しい気持ちになった。
「はい、買い物などは目に付くので控えて欲しいが、喫茶店程度ならいいと」
「そう…じゃあ行ってみようかしら」
噂話、思い出話に花を咲かせるのが喫茶店である。そこへ無自覚なメリーアンが行くということは、餌を撒きに行くようなものである。
こんな時にと言われても、自覚を持たせるためにカーサスとトーラスは敢えて許可を出した。今日、たまたま話をしている人はいないかもしれないが、メリーアンを見れば、注目を集め、話題になるだろうと考えた。
喫茶店は初めて行く店で、着いたメリーアンは、同行してくれる家族はいなかったので、二人の侍女を伴って個室の席に案内された。侍女も一人ではちょっとと渋ったので、二人付けられることになった。
早速、入店して個室に案内される時点で、既にザワザワしており、厳しい目を向ける者、眉をひそめる者も多かったのだが、メリーアンは注目されるのは侯爵令嬢だから仕方ないと考え、気にもせずに席に着いた。
注文して、静かにお茶を飲んでいたが、女性の声が聞こえ始めた。この店は個室と言っても、聞く気があれば、隣の声は聞こえる程度の個室である。
皆は自分の話で夢中で聞こえていないという体になっており、トーラスは敢えてそのような喫茶店を御者に指定した。
「よく来れるわね~」
「ええ、自分は関係ないとでも思っているんじゃない?」
「でも、離縁されたんでしょう」
「そりゃそうでしょうよ、高飛車だって有名だったから、少しは大人しくなるんじゃないかしら」
「もう表に出れないわよ」
メリーアンは最初は自分のことではないと思っていたが、名前は出ていないが、もしかして自分のことを言っているのではないかと、怒りでカッと赤くなった。
抗議しようと立ち上がろうとしたが、今度は違う声が聞こえて来た。
「よくお茶なんて出来るものだわ!」
「外でお茶も飲むなって思うわね」
「ええ、落ち着いてお茶も飲むことも、笑うことも出来なくなった方々のことを考えないのかしら」
「下々の者とは違うとでも思っているんじゃない?」
「そうかもしれないわね」
メリーアンは私は被害者なのに、どうしてお茶を飲んではいけないのよと、再び怒りでカッとなった。
「母親のこともだけど、あの男は本当に許せないわ」
「殺してくれて、感謝している人の方が絶対に多いはずよ!署名を集めたっていいくらいだわ」
「ええ、殺意を持っていた人なんて人間の指だけでは足りないでしょう。近づけなかったのはあるけど、彼女が殺さなくたって、誰かが殺していたわよ」
「そうね」
ジーリス叔父様のことを言っているのだと思い、座り直した。
さすがのメリーアンも、いくら自分には優しかったジーリスでも、擁護することは反感を買うことだと分かった。
未だにジーリスが父親であることは、受け止め切れていない。だが、リリーに言われた知られたら酷い目に遭うのではないかと、頭の片隅では思っている。
2,041
あなたにおすすめの小説
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる