【完結】試される愛の果て

野村にれ

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世間の目

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「ローザ公爵家には行けません」
「どうしてよ!」

 メリーアンはあれだけ言われたのにも関わらず、話をすれば分かると、御者にローザ公爵家に馬車を出すように言っていた。

 だが、既にカーサスが手を打っていた。

「当主様にそう言われておりますから」
「私が行くように言っているのよ!」
「恐れながら、お嬢様に公爵家相手に責任が取れるのですか!」
「っな、あなた…」
「何をしてでも止めて欲しいと、当主様に許可を得ております」

 カーサスに怒鳴られたことを思い出し、嘘だとは思えなかった。

「気晴らしに喫茶店などに、お連れするならいいと言われております」
「喫茶店?」

 そう言えば、ダリアとマリエル様が行っていた、喫茶店に行こうと約束していたのにと思い出して、悲しい気持ちになった。

「はい、買い物などは目に付くので控えて欲しいが、喫茶店程度ならいいと」
「そう…じゃあ行ってみようかしら」

 噂話、思い出話に花を咲かせるのが喫茶店である。そこへ無自覚なメリーアンが行くということは、餌を撒きに行くようなものである。

 こんな時にと言われても、自覚を持たせるためにカーサスとトーラスは敢えて許可を出した。今日、たまたま話をしている人はいないかもしれないが、メリーアンを見れば、注目を集め、話題になるだろうと考えた。

 喫茶店は初めて行く店で、着いたメリーアンは、同行してくれる家族はいなかったので、二人の侍女を伴って個室の席に案内された。侍女も一人ではちょっとと渋ったので、二人付けられることになった。

 早速、入店して個室に案内される時点で、既にザワザワしており、厳しい目を向ける者、眉をひそめる者も多かったのだが、メリーアンは注目されるのは侯爵令嬢だから仕方ないと考え、気にもせずに席に着いた。

 注文して、静かにお茶を飲んでいたが、女性の声が聞こえ始めた。この店は個室と言っても、聞く気があれば、隣の声は聞こえる程度の個室である。

 皆は自分の話で夢中で聞こえていないという体になっており、トーラスは敢えてそのような喫茶店を御者に指定した。

「よく来れるわね~」
「ええ、自分は関係ないとでも思っているんじゃない?」
「でも、離縁されたんでしょう」
「そりゃそうでしょうよ、高飛車だって有名だったから、少しは大人しくなるんじゃないかしら」
「もう表に出れないわよ」

 メリーアンは最初は自分のことではないと思っていたが、名前は出ていないが、もしかして自分のことを言っているのではないかと、怒りでカッと赤くなった。

 抗議しようと立ち上がろうとしたが、今度は違う声が聞こえて来た。

「よくお茶なんて出来るものだわ!」
「外でお茶も飲むなって思うわね」
「ええ、落ち着いてお茶も飲むことも、笑うことも出来なくなった方々のことを考えないのかしら」
「下々の者とは違うとでも思っているんじゃない?」
「そうかもしれないわね」

 メリーアンは私は被害者なのに、どうしてお茶を飲んではいけないのよと、再び怒りでカッとなった。

「母親のこともだけど、あの男は本当に許せないわ」
「殺してくれて、感謝している人の方が絶対に多いはずよ!署名を集めたっていいくらいだわ」
「ええ、殺意を持っていた人なんて人間の指だけでは足りないでしょう。近づけなかったのはあるけど、彼女が殺さなくたって、誰かが殺していたわよ」
「そうね」

 ジーリス叔父様のことを言っているのだと思い、座り直した。

 さすがのメリーアンも、いくら自分には優しかったジーリスでも、擁護することは反感を買うことだと分かった。

 未だにジーリスが父親であることは、受け止め切れていない。だが、リリーに言われた知られたら酷い目に遭うのではないかと、頭の片隅では思っている。
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