病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
132 / 206

流行り病(プレメルラ王国10)

しおりを挟む
 招待状を渡されて、マキュレアリリージュにとっては二度目のお誘いであったために、喜んでいないような顔をして見せたが、嬉しくてたまらなかった。

「クルージ伯爵家のディナーパーティーに誘われたの」
「まあ!良かったじゃない」
「そこへ着て行きたいのよ!モリーには会えなから、もう一度頼んでよ!」
「無理よ、何度も言ったら怒らせてしまうわ」

 コアナは最初はブレフォスに色んな我儘や行動を取っていた。だが、その都度、予算を減らされたり、本邸には入れなくなったり、ブレフォスにはほとんど会うこともなく、今のような状況になっている。

 だからこそ、一度頼んで駄目なら諦めるようにしていた。

「でも、困るわ」
「まあまあなんだから、別のドレスでいいでしょう?何ムキになっているの」

 コアナに言っても、あまり役に立ってはくれないことは分かってもいた。

 どうにかしてドレスを手に入れないといけないと、ディナーパーティーに行けない。いや、行くことはできるかもしれないが、着て行かないとならない。

 高等部に再び行ってモリーを呼び出そうとしたが、またお休みだと言われることになった。

「どういうことなの!いつも休み休みってわざとなの!いい加減にして頂戴」
「事実を述べているだけです」
「はあ?」

 そばにいた声がたまたま聞こえた学園長が、その場に向かった。

「何をしているんだ?」
「モリー・オブレオサジュール公爵令嬢に会わせろと、休みだと伝えたら大声を出されまして」
「どなただい?」
「異母妹だそうです」
「ああ、モリー嬢は今日は休みだ。このような場で大騒ぎはやめなさい」
「あの女が会いたくないからって、そう言うように言われているのでしょう!いいから、ここへ呼んで頂戴!」

 頭に血の上ったマキュレアリリージュは、学園長だと分からなかったこともあるが、変わらずに大声を出し続けた。

「そのようなことはない、帰りなさい」
「呼べって言っているの!」
「いい加減にしなさい、あなたのことは今後取り合わないようにさせてもらう」
「っな」

 警備員を呼んで、マキュレアリリージュは高等部から追い出されることになった。

 その後、コアナにも厳重注意、中等部の学園長からも二度と押しかけないように、このままでは中等部も退学、高等部にも進めない可能性もあると言われて、二度と行けなくなってしまった。

 なら、本邸に行くしかない。

 だが、コアナから本邸に行くようなことがあれば、別邸から出て行ってもらうと言われていることを聞いており、バレないように盗むしかないと考えた。

 本邸の裏口は知っているために、そこから夕食後なら、使用人も多くないだろうと忍び込み、しばらく誰にも会わずに、こっそり歩いていたが、オーリンに見付かることになった。

「何をされているのです」
「っあ」
「付いて来てください」

 オーリンは既にマキュレアリリージュの動きを別邸から報告を聞き、探していた。

 連れられた先にいたのは、ブレフォスであった。

「何をしている。本邸には入るなと言ってあったよな?」
「お父様!これは事情があって」
「お前に本邸に事情などあるはずがない」

 実際、マキュレアリリージュは本邸に用事などあるはずがない。

「そ、それは……異母姉様のドレスを借りたいの!」

 見付かってしまったのなら、正直に言えば、ブレフォスも私から言えば分かってもらえると思った。

「ああ……芸術祭のドレスのことか?」
「そう!ちょうどね、クルージ伯爵家のディナーパーティーに誘われたから、着てあげてもいいと思って」

 コアナが言っていたことを口にして、なぜ上から目線なのか。クルージ伯爵家のパーティーも気になったが、そんなことは今はどうでもいい。

「そもそも、こちらにはない」
「えっ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。

元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら

つちのこうや
恋愛
牢獄の妹に向けた手紙を書いてみる話です。 すきま時間でお読みいただける長さです!

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

婚約破棄の裏側で

豆狸
恋愛
こうして、いつまでも心配と称して執着していてはいけないとわかっています。 だけど私の心には今でも、襲い来る蜂から私を守ってくれた幼い騎士の姿が輝いているのです。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

処理中です...