病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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告白

 さすがに少し緊張しながら、執務室を扉を叩くと、オーリンが顔を出した。

「人払いも済ませておりますので、ご安心してお話しください」
「ありがとう」

 ブレフォスは既にソファに座っており、まるで待ち構えていた様子であった。

「お時間を取っていただき、申し訳ございません」
「いや、構わない」

 モリーはブレフォスの前に座ったが、さてどう切り出そうかと思った。

 分かり易い方がいいだろうと、ペイリーと同じ方法がいいだろうと考えたが、特に怪我はしていない。

「お父様か、オーリン、どこか痛いところがありますか?」
「っえ、いや、私は」
「私も特に」
「オーリンは腰が痛いと言っていたのではないか?」
「それは、昨日、重いものを持ち上げただけですので」
「腰ですか」

 誰か医師を呼んだのをモリーが見たのかと思ったが、最近、誰も医師を呼んだ覚えはなく、何の話だろうかと意図が分からなかった。

「モリー、何の話だ?何かあったのか?」

 モリーは小さく、息を吐いた。

「黙っておりましたが、私は水魔法、治癒術が使えます」
「……な、な」
「何と、誠でございますか」

 ブレフォスは予想だにしていないことに言葉にならず、オーリンもいつもなら口を挟むことをしないのに、身を乗り出していた。

「はい、隠しており申し訳ございませんでした」
「お前は魔術は使えないと……」
「はい」

 どう言い訳をしても、隠していたことに変わりはないので、素直に認めた。

「治癒術が使えるのか……それで、痛いところがないかと」
「はい、腰は慢性的ではないのですよね?」
「はい、昨日からですので」
「では行ってみましょうか?その方が嘘ではないことも分かりますし、理解し易いでしょう」
「そうだな、オーリンいいか?」
「私は構いませんが……」

 半信半疑のブレフォスとオーリンは、まずは確認をすることも大事だろうと、まだ頭が混乱していた。

「では、椅子に逆に座って、背中を見せてもらってもいいですか」
「はい、承知いたしました」
「ペイリー、オーリンのシャツを持ってもらっていい?」
「承知いたしました」

 オーリンは逆向きに椅子に座って、シャツを捲り、ペイリーが持った。その姿に、ブレフォスはペイリーは知っていたのだと、勘付いた。

「では、失礼します」

 モリーはペイリーの時と同じように、水を出し、治癒術を展開して、オーリンの腰の全体に当て、消した。

 ブレフォスはモリーが器用に行うことに、ただただ驚いていた。

「どうかしら」
「立ってみてもよろしいですか」
「ええ」

 オーリンは立ち上がって、前に屈んでみたり、背を反らせてみたが、痛みはなくなっていた。

「ありがとうございます、治っております」
「本当か?」
「はい、痛くありません」
「モリー……なぜ、言わなかった?理由があるんだろう?」

 先程まで、屈む度に痛いとは言わないが、顔を引き攣らせていたオーリンが、何ともない顔をしている。

「面倒なことに巻き込まれると思ったのです」
「面倒……とは」
「私の世代で、他に治癒術を使える人がいないのです。他にもいれば、たいした価値はないと思っていたのですけど……オブレオサジュール公爵家にいくら愛人と異母妹が住んでいても、治癒術に価値があることは分かります」
「っ」

 ブレフォスは関わらないようにさせていたが、コアナとマキュレアリリージュのことを言われると、何も言えなかった。

 しかも、モリーが今回、ここまではっきりブレフォスに話すのは初めてであった。

 だが、モリーにとっては何度もブレフォスに言って来たことで、重みのある話ではなかった。

 三回目は距離を取ったが、二回目は特にカリーナに言われて、何度も非難し、お前には関係ないと言われ、カリーナには責められて、二人の間でボロボロになった。

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