病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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予想外

 もしかしたら、レルスは候補者に入りたくないというモリーのために、白紙に持って行ったのかもしれない。そして、白紙になってから婚約を申し込み、しばらくは公にできない状況を作ったのかもしれないと考えた。

「確かに公になれば、可能性は高かっただろうな。レルス殿下はモリーのために黙っていてくださっているということなのだな」
「はい」
「では、学園を卒業するまでは公にしないと交渉してみよう」
「お願いいたします」
「では、エグリス公爵令息がいらっしゃるのを待とう」
「はい」

 モリーとペイリーが執務室を出て行くと、ブレフォスもだがオーリンも驚いて、しばらく会話を交わすこともなく、黙り込んでいた。

「……驚いたな、誰も気付かなかった。いや、私は父親なのに」
「魔術を使われることもありませんでしたので……ですが、使い慣れてらっしゃいました」
「そうだな、私のせいだな……」

 オーリンも何も答えることはできず、ブレフォスは頭を抱えるしかなかったが、モリーの意向に沿って、願い出ようと決めた。

 そして、ジーアからプレメルラ王国に着いた、いつでも動けると連絡をもらった。

 両陛下に時間をいただきたいと願い出て、会う日になった。

 モリーとブレフォスとオーリンとペイリー、そしてジーアと落ち合い、五人でファリスとケリー、そしてレルスに会うことになった。

 ジーアはレオーラからレルスのことを聞いているために、知り得ないことだが元婚約者に会うような気持ちでもあった。

「国王陛下、王妃陛下、王子殿下をご挨拶申し上げます」

 代表してブレフォスが挨拶を行い、皆で頭を下げた。

「堅苦しいのはいい、座りなさい。それで、パークスラ王国の公爵令息がいらっしゃる理由を先に聞きたいのだが?」

 ジーアのことは伝えてはいたが、なぜ一緒に来るのか分からず、ケリーとレルスはレオーラ王女の婚約者とは聞いていたが、まさかモリーの婚約者にと言い出すのではないかと疑っていた。

「それについては、説明が必要になりますので、先にモリーに話をさせていただいてもよろしいですか」
「モリー嬢に?」
「はい、本人が話すと思うしておりますので」

 ケリーとレルスはまだ疑っており、顔を見合わせた。

「分かった、ではモリー嬢、説明を頼む」
「はい、私は魔術が使えます。水魔法と治癒術でございます。黙っており、申し訳ございませんでした」
「は?」
「え?」
「モリー嬢……」

 レルスはなぜ急に明かす気になったのだと驚いた。

 そして、まだジーアのことが気になって仕方がなく、ジーアもレルスを気にしており、視線が合って、気まずく目を逸らした。

「ブレフォス、知っていたのか?」
「お父様にも数日前に話したので、知りません。そもそも、つい最近まで誰も知りませんでした」
「なぜ、黙っていたのだ?」
「恐れながら、大変失礼な話になりますが、静かな生活を望んでいたからです」
「静かな……」

 モリーがあまり目立つようなことを望んでいないことは、ファリスも何となくは分かっていたが、静かな生活とは何だろうかと思わず復唱していた。

「オブレオサジュール公爵家は色眼鏡で見られる存在です。そこへ私が治癒術が使えるとなっても、矢面に立つには私でしょう。治癒術では持ち上げられることでしょう、でも家のことではでもねということになる。それは避けたかったのです。私の我儘でございました、申し訳ございません」

 ブレフォスはモリーの淡々とした説明に、目を伏せるしかなかった。

「父上!私も存じておりました」
「っな?」
「王子殿下は知ることになりましたが、私が今のような説明で、黙っていて欲しいと頼みました」
「いえ、私の意思で黙っておりました」
「おま、いや、黙っていたことについては罰するようなことはない」

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