病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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「私に合わせればいいのよ」
「あれは豊かなお胸のある方だからこそ、美しいの。あなたには無理よ」
「だから!私にあったドレスを作りなさいって言っているの!」
「作らないわ、自分がどんな目で見られているか考えた方がいいわよ」

 クラスメイトはマキュレアリリージュに、好意的ではない視線を向けていた。

「お姉様が嫌われているだけでしょう」

 モリーは二回目のようにしたたかではなく、欲望丸出しのようなマキュレアリリージュに、どうしてこんなにも、違うのかと困惑しかなかった。

「はあ……」
「そうよ!お姉様に聞くことがあったの!婚約者ができたのでしょう?あの人は誰なの?邸に来ていたでしょう?高等部にいるんでしょう?」
「何を言っているの?」
「邸に来ていた人よ、背の高い男性よ」

 マキュレアリリージュはレオーラの婚約者・ジーアのことを、モリーの婚約者だと思っており、迎えに来た際も、この前レオーラの手紙を預かるためにやって来た際も見掛けていた。

 クラスメイトもモリーの婚約者が決まったのかと、興味津々であった。

「何を言っているのか分からないけど、私に婚約者はいないわ」

 モリーはドキリなんてすることもなく、嘘くらい流れるように付ける上に、まだ仮のような形であるために嘘でもない。

「じゃあ、誰なのよ!どこを探してもいないし」

 ジーアは喜怒哀楽が分かり易い質ではないが、端正な顔立ちをしている。

 マキュレアリリージュはモリーにも優しいのならば、自分にも優しいはずだと考え、接触しようと考えていた。

「誰のことを言っているのか分からないけど、誰だったとしても失礼にあたるから止めなさい」

 モリーはジーアのことだとは分かっていなかったが、平民でしかないマキュレアリリージュには、弁えなければならない相手だろう。

「はあ?どうして失礼なのよ!でも、本当に婚約者はいないのね……まあ、そうよね、いるはずないわよね」

 マキュレアリリージュは自分の置かれた立場は分かっているが、自分より先にモリーに婚約者ができるはずがないと、本気で思っている。

「もう戻りなさい」
「ドレスは作りなさいよ」
「断るわ、有名なデザイナーにでも作ってもらいなさい」

 モリーは教室からマキュレアリリージュを締め出して、お騒がせして申し訳ありませんとクラスメイトに向かって謝罪をした。

 皆もモリーが迷惑を掛けられているという認識しかなかったために、首を振ったり、頭を下げたりしていた。

「モリー様」

 見守っていたロスナーが、再び声を掛けた。

「久しぶりに会ったのだけど、嵐のように……相変わらずなのね」
「はい、そのようでございます」
「あの様子だと、他にも迷惑を掛けているとしか思えないわ」

 おそらく今がマキュレアリリージュの本質なのだろうが、どうして二回目のように大人しくして、被害者のように振舞えないのか。

 何が違うのかと言えば、周りに人がないことだろうか。

 二回目は突っ掛かって来る時も、誰かを連れて来ていた。女子生徒も男子生徒もいたが、なぜいないのだろうか。

 モリーとマキュレアリリージュの関係性は二回目と変わっていない、後はモリーに表向きは婚約者がいないことだろうか。

「これはお耳に入れるか迷ったのですけど、王子殿下に話し掛けていたようです」
「え、オルト王子殿下に?」
「はい、ですが注意を受けて、次があったら退学にすると言われているそうですから……さすがにもうやめていると思いますけど」

 二回目でグラスと一緒にいることを見たことはあったが、オルトと一緒にいるところは見たことがない。だが、モリーは教会にいたことで外のことは分からないため、接触していた可能性はある。

 今回はモリーの婚約者ではないが、同じ年に王子殿下がいるということだけで接触したのだろう。
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